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真彩希帆インタビュー ミュージカル『ジキル&ハイド』「そのときの自分から出てくるもので自然に表現したい」(後編)

INTERVIEW

2023年4月20日(木)から、梅田芸術劇場メインホールにて、ミュージカル『ジキル&ハイド』大阪公演が開幕します。

2001年の日本初演から幾度となく上演を重ねてきた本作。2012年から10年以上にわたってタイトルロールを務めてきた2代目・石丸幹二さんは今回が最後の出演となり、Wキャストとして本公演から3代目を引き継ぐ柿澤勇人さんとともに、善と悪の二面性を持つジキル/ハイドを演じます。

ジキルとハイドの間で揺れ動きながらも破滅的な運命を辿る娼婦のルーシー役には、笹本玲奈さんと真彩希帆さんがWキャストで出演することが決定しました。

THEATER GIRLでは、ヒロインのルーシーを演じる真彩希帆さんにインタビューを敢行。後編では、舞台や歌に対するアプローチ、役者として大切にしていることなどについてうかがいました。また、本作のストーリーにちなみ、真彩さんの“二面性”にも迫っているのでお楽しみに!

インタビュー前編はこちら

180度違う役柄、どんなふうに演出していただけるのか楽しみ

――真彩さんが個人的に気になっている共演者の方はいらっしゃいますか?

初めましての方々ばかりで気になる方だらけなのですが、石井一孝さんとはミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』でもご一緒していて、「全然違う役柄で、どうなるんだろうね?」みたいな感じでお話ししました。

共演者の方ではないのですが、個人的にとても楽しみにしているのが山田(和也)さんの演出です。というのも、今回ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』でご一緒している制作サイドの方が多いんですよね。山田さんをはじめ、指揮の塩田(明弘)先生もそうですし、歌唱指導のちあきしん先生も。なので、作品が変わることによって皆さんのアプローチがどんなふうに変わるのかな、と。特にメアリー・ロバートとは180度違う役柄なので、どんなふうに山田さんに演出していただけるのかが今から楽しみです。

「しっかりしていると思われがちですが、実はそんなことないんです(笑)」

――ここからは作品にちなんだお話を聞かせていただければと思います。本作はジキルとハイドの二面性を描いたストーリーですが、ファンの方も知らないかもしれない真彩さんの意外な“一面”があったら教えてください。

えー、何だろう! 私って本当に裏表がないんですよ(笑)。「正直者すぎて人生苦労するタイプだね」と言われちゃうくらい、嘘がつけない人間でして。

あ、でも周りからしっかりしていると思われがちですが、実はそんなことないんです(笑)。舞台や仕事に向き合うときはピッチリとしていますけれど、そうでないときはもう本当に何もしない人間です(笑)。

よく周りの方から「私生活もしっかりしてそうだね」と言われるのですが、結構ゆるっと生きていますよ。二面性というほどではないかもしれませんが(笑)。

――そうだったんですね。意外だと感じる方、きっと多いと思います。ちなみに、仕事とプライベートでオンとオフを切り替えていらっしゃるのですか?

オンオフというよりは、自然とですね。自分では全く意識していないのですが、舞台に立っていないときのオーラがないといいますか、街中でも全く気づかれないんですよ(笑)。観劇が大好きなので、宝塚も含めてよく行くのですが、全く気づかれない。

誰かオーラのある方と一緒に行くと「来たんだね」となりますが、一人で行ったときは今まで一度も気づかれていないんです。「私を見ないでください……」という感じで、縮こまっているのかな(笑)?

あとは、おそらく集中しているときとそうでないときのギャップが激しいのだと思います。そこが自分でもよく分かっていない二つの面なのかな? 自然と出ている感じです。

人間であればもちろんオンとオフといいますか、裏表だったりがあると思うのですが、自分で自分のことを認識するのは意外と難しいですよね。真彩希帆の裏表を見つけようと探していただいても「全然変わらないな」と思われちゃう気がします。だからもし見つけたら、「真彩さん、こんな一面あるんじゃないですか?」と、皆さんから教えていただけたら嬉しいです(笑)!

「楽しむのは悪いことではない」、退団後少しずつ自分の価値観が見えてきた

――真彩さんの素敵な歌声は、聴いていて幸せを感じる方がたくさんいらっしゃると思います。宝塚をご卒業されてから、舞台や歌に対するアプローチは変わりましたか?

舞台に対する気持ちは変わっていないのですが、ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』をやっているとき、ふと「楽しいって、悪いことじゃないな」と感じた瞬間がありました。

今まで私は命を削って舞台を作るタイプといいますか、全部を注ぎ込んでしまって、終わる頃にはヘロヘロになってしまう人間だったんです。特に、宝塚在団中はシングルキャストで、ずっと休みがないということもありまして。

ですが、命を削らなくても、楽しいエネルギーが満ちることで、お客さまに見せられるものがあると最近気づいたんですよね。それが自分の中でとても良い発見でした。

海外のことは詳しく分からないですけれど、なんとなく日本は「全力を注いで、一心不乱にがむしゃらに舞台と向き合っています」というほうが、評価が上がりがちな気がしていて……。楽しんでやっていると、「怠けている」と見る人も意外と多いと思うんですよ。

――それはミュージカルや舞台に限らずでしょうか?

そうですね、限らず。日本は苦行を好むというか、苦しんでいる人こそ「頑張ってるね」と言ってもらえる感じがある気がしちゃって。「本当にそうでなければいけないのかな?」と、ずっと感じていました。私自身も苦しんでいる人を見たとき「そんなに命を削らなくてもいいのに」と思うことが増えてきて……。

けれど、そうではない道も必ずあるはず。ここ数年間はそんなことをなんとなく考えていました。せっかくなら思いきって楽しむのもありなのではないかな、と。「こんなアプローチしてみよう!」「こんなふうに歌ってみたらどうかな?」など、エネルギッシュな姿勢で取り組んでいる人を見ると、率直に心地良いと感じたんです。

でも……実際のところは、難しいですよね。自己肯定感が高かったり、楽しみながら取り組んだりしている人を見ると、蹴落としたいと思う人も世の中にはいる。ネット社会にはその感覚が少なからずあると思います。それでも自分自身が楽しむことで、周りの人を幸せにしている人たちがたくさんいらっしゃるんですよね。

ミュージカルの世界でもそれができる気がして。もちろん、真剣なのは変わらない。だけど、苦しみから生まれるものではなくて、喜びであったり、発見であったり、前向きな気持ちから生まれる物で作っていきたいと今は思っています。

――宝塚を退団してから特にそう考えていらっしゃったとのことですが、周りの環境も大きかったのでしょうか?

というよりは、自分自身の変化ですね。周りはいつも素晴らしい人で溢れているので、そこによる変化というよりは、このままでは自分の身が持たない気がしていました。ちょっと自分自身を削りすぎている感覚があったので、そうではないものでやりたいなと思っていたんです。それが最近「こうでもいいのかな?」と、ちょっとずつ見えてきた感じですかね?

「大切なものをいただいているからには、それ以上の価値、愛情を返したい」

――真彩さんは役者として、どういう姿でありたいと考えていらっしゃいますか?

真彩希帆としては、正直どんな自分でもいいと思っています。この仕事は自分がどうありたいかより、舞台に立っているときに求められているものを表現できているか、役にきちんと向き合えているかのほうが大事です。それこそ高いチケット代金にくわえて、限られている大切な時間を費やして観に来てくださる方がいらっしゃる。その方々にとって、エネルギーになれているかが一番重要だと思っています。

やっぱり人さまのお金や時間といった大切なものをいただいているからには、それ以上の価値、愛情を返したい。そんな役者でありたいと思っています。

あとは私自身、子どもの頃に新妻聖子さんを観てミュージカルの世界を目指した人間でして。良い作品を世に送り続けることで、さらにまた新しく良い作品が出来上がる。今後もミュージカル界に素晴らしい技術、精神が集まってほしいので、そんな未来に繋がるよう演じる人が増えたらいいなと思っています。真心を込めてやっている姿を届けて、「この世界に入りたい」と思う若い世代が増えたら嬉しいです。

――素敵なお話をありがとうございます。今回真彩さんとお話しして、与えたいという気持ちが強い方だと感じました。

いえいえ、ありがとうございます。でもそれはもらっているからこそ、なんですよね。人からたくさんの愛情をいただくからこそ返せるものがあるので、与え続けたら枯れちゃう。なので、いただきつつ、また返せていけたらいいなと思っています。

――最後に、本作への意気込みをお願いいたします。

真心と愛情を込めてやるのみ、です! やっぱり作品との出会いは一期一会なので、いつまたできるか分からない。もうやらないかもしれない。

そう考えると、メロディーであったり、セリフの一つであったり、人との関係であったり、そのときに真剣に向き合うからこそ得られるものがあると思うので、しっかりと真摯に向き合って、楽しんでやっていきたいなと思います。

取材・文:矢内あや
Photo:梁瀬玉実

インタビュー前編はこちら

公演概要

ミュージカル『ジキル&ハイド』

【東京公演】
2023年3月11日(土)~3月28日(火)
東京国際フォーラムホールC
※公演終了

【名古屋公演】
2023年4月8日(土)、9日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
※公演終了

【山形公演】
2023年4月15日(土)、16日(日)
やまぎん県民ホール
※公演終了

【大阪公演】
2023年4月20日(木)~23日(日)
梅田芸術劇場メインホール

原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也

キャスト:
ヘンリー・ジキル/エドワード・ ハイド(Wキャスト):石丸幹二、柿澤勇人
ルーシー・ハリス(Wキャスト):笹本玲奈、真彩希帆
エマ・カルー(Wキャスト):Dream Ami、桜井玲香
ジョン・アターソン(Wキャスト)石井一孝、上川一哉
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース ・カルー 卿:栗原英雄

宮川 浩、川口竜也、伊藤俊彦、松之木天辺、塩田朋子

麻田キョウヤ、岡 施孜、上條 駿、川島大典
彩橋みゆ、真記子、町屋美咲、松永トモカ、三木麻衣子、玲実くれあ(五十音順)
スウィング:川口大地、舩山智香子

料金:S席:14,000円/A席:9,000円/B席:5,000円

公式サイト:https://www.tohostage.com/j-h/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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