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北山宏光インタビュー 『醉いどれ天使』「“ライブ感”の尊さや儚さも味わってもらえたら」(後編)

INTERVIEW

2025年11月7日(金)より東京・明治座を皮切りに『醉いどれ天使』が上演されます。

日本のみならず世界中に大きな影響を与えた名匠・黒澤明氏と、その多くの作品で主演を務めた三船敏郎氏が初めてタッグを組んだ映画『醉いどれ天使』。この作品は、映画公開から約半年後に舞台版として上演されたという記録が残っています。その当時の上演台本が近年、偶然発見され、2021年に再び舞台化。そしてこのたび、新たに「2025年版」として上演されます。

脚本は前回に続き蓬莱竜太氏、演出は、ジャンルを越えて活躍の場を広げている深作健太氏が務めます。

そして、闇市を支配する若いやくざ・松永に挑むのは6年ぶりの主演舞台となる北山宏光さん。

また、共演には渡辺大さん、横山由依さん・岡田結実さん(Wキャスト)、阪口珠美さん、佐藤仁美さん、大鶴義丹さんと、日本のエンターテインメントシーンを牽引する錚々たる顔ぶれが揃いました。

THEATER GIRLは、主演の北山宏光さんにインタビュー。後編では、北山さんの思う“舞台の魅力”や年齢を重ねるたびに表現方法が変化したこと、今後舞台で挑戦したいことなどをお聞きしました。

インタビュー前編はこちら

“生もの”という点が舞台の本質

やっぱり一番は「生もの」であるということです。同じ公演は一つとしてなく、そこに行かなければ観られないものということ。たとえば「今日は芝居がすごくよかった」と思っていても、実はダメ出しが多かったり、その逆もあったりする。自分では「テンポがよかった」と感じていても、タイムを計ると5分もオーバーしていたりして。

そういう意味でも“生もの”という点が舞台の本質なんだと思いますし、コロナ禍のときに改めて「コンサートや舞台って、本当に尊いものだな」と強く感じました。だからこそ、そこにしかない魅力が必ず存在するのかなと。直接その空気を共有できるというのは、実は当たり前のようでいて、まったく当たり前なことではないと思っています。

どの分野でも、実は共通している部分がすごく多いんです。違うのは“アウトプットの形”だけであって、自分の中でどうコントロールするかが大事だと思っています。たとえば舞台では、この部分の出力を上げて表現する。映像の時は、逆にここを抑えて別の出力を高める。そうしたバランスの使い分けを意識しながら、自分のスキルを磨いていくことを大切にしています。

だから、もし舞台をやらなくなったら舞台の“筋肉”は落ちるし、映像をやらなければ映像の感覚も鈍る。ちょうど、バランスよく食事を摂るような感覚に近いかもしれませんね。

そうですね。バランスよく、というのはもちろんですが、やっぱり“楽しそうだな”と思えることじゃないとやりたくないんです。そこに自分なりの楽しみを見つけられるか、そして終わった時に自分の中に何かスキルアップした感覚や得られるものがあるか、そういうことを大切にしています。

そうですね。今回のお話をいただいた時にも、すごいお話をいただいたな、“これはやってみたい”という素直な気持ちがあったので。

お客様にパスを渡すことを楽しめるようになってきた

“引き算”ですかね。ちょっと言い方が難しいのですが、観る人に“ちゃんとパスを出せるようになった”という感覚に近いです。たとえば芝居を観ていて、「あの人、どうして今ここで間を取ったんだろう?」と思う瞬間があるとして。その間が、セリフを忘れたのか、考えているのか、あるいは演出なのか――観客はその答えを次のシーンで知ることがあると思うんです。そうやってちゃんとお客様に一個、パスを渡すことを楽しめるようになってきたということはあるかもしれません。

昔はもう必死にやっていたので。とにかくその瞬間を生きることで精一杯で、そんなふうに“観ている人へのパス”なんて考える余裕はなかったです。でも、今思えば、その頃に必死にやってきたからこそ、今こういう感覚を持てているのだと思います。上手いとか下手とかではなく、全力でやってきた時間がちゃんと自分の中で糧になっていると思うので。

この仕事って、自分がやりたいだけでは成立しないんですよね。やっぱり“求められないとできない仕事”だと思うので。だからこそ、求めてもらえた時には、その期待に全力で応えていきたいです。その積み重ねが、きっと自分の成長にもつながると思っています。やりたいと言ったからといってできるほど甘い世界じゃないですから。

舞台に関して言うと、立ち回り(殺陣)のある作品にはこれまでも多く出演してきたので、そういう技術をこれから新しい形で表現していくことにも興味がありますね。

「極める」というと少し堅い言い方かもしれませんが、自分の中でまだ“使っていないカード”がある気がするんです。そのカードを、作品や現場に合わせてどう出していくかという挑戦は、今後もしていきたいですね。そうした現場に出会えたら、全力で努力したいですし、その経験がスキルアップにつながると思っています。

北山さんのリフレッシュ方法とは⁉

夜ご飯とサウナですね。基本的にこの二つが僕のリフレッシュ方法です。

一日の中で「今日は何を食べようかな」と考える時間があるだけで、一日を楽しく終えられる気がするんです。少し時間があればサウナに行って、そのあとご飯を食べに行く、という流れが自分の中での定番になっています。

いや、作る時間がもったいなくて(笑)。外に食べに行くことが多いです。誰と食べるかというのも大事で、気の置けない仲間と数時間ご飯を食べて話すだけでも、すごくリラックスできます。

起きる時間は自然と固定されてきますね。たとえば「明日は2公演だからこの時間に寝なきゃ」と、自分で調整していきます。自分の体って結局、自分が一番よくわかっているので。だから「今日は声を出しすぎたな」とか、「あまり調子が良くないからビタミンを多めに取ろう」とか、そういう感覚でバランスを取るようにしています。舞台期間中は、自然とそういうモードになりますね。

原作映画が好きな方も、今回初めてこの物語に触れる方も、どちらの方にも楽しんでいただける作品になっていると思います。戦後が舞台ということもあり、観てくださる方それぞれに“受け取っていただけるお土産”がたくさんあると思うので。どう咀嚼するかは皆さんの自由ですが、その中で何かを感じ取ってもらえたらうれしいです。

また、今回ショーアップされている部分もあるので、そういったところも楽しんでいただきたいですし、舞台はその日その公演一度きりなので。同じものを再現しようとしても、全く同じにはならない。その“ライブ感”の尊さや儚さも、この作品を通して味わってもらえたらと思います。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:梁瀬玉実

ヘアメイク:大島 智恵美
スタイリスト:柴田 圭

・ジャケット \96,800-
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2点ともMAHITO MOTOYOSHI(JOYEUX)
※全て税込価格

問い合わせ先
・JOYEUX
tel:03-4361-4464

インタビュー前編はこちら

公演概要

『醉いどれ天使』 

【東京公演】
2025年11月7日(金)~23日(日)
明治座

【名古屋公演】
2025年11月28日(金)~30日(日)
御園座

【大阪公演】
2025年12月5日(金)~14日(日)
新歌舞伎座

原作: 黒澤明 植草圭之助
脚本: 蓬莱竜太
演出: 深作健太

出演:
北山宏光
渡辺 大 横山由依・岡田結実(Wキャスト) 阪口珠美 / 佐藤仁美 大鶴義丹
堀野内 智 神農直隆 生津 徹 宮地大介 葉山 昴 松井朝海 桑畑亨成 / 荒井洸子 片岡正二郎
西川裕一 八木橋華月 浅倉智尋 奥富夕渚 夕希奈

公式サイト:https://www.yoidoretenshi-stage.jp

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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