大貫勇輔×小野田龍之介インタビュー ミュージカル『メリー・ポピンズ』 「観ているだけで幸せすぎて泣ける時間に」（後編）
2018年に日本人キャストで初演が行われ、大好評を博したミュージカル『メリー・ポピンズ』が、2022年3月に再演されます。
今回メリー・ポピンズを演じるのは、濱田めぐみさんと笹本玲奈さん。バート役を、大貫勇輔さんと小野田龍之介さんがそれぞれWキャストで演じます。
原作はウォルト・ディズニーが映画化し、アカデミー賞５部門を受賞した名作。さらに、本作をプロデュースするのは『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』などを生み出したキャメロン・マッキントッシュ。
たくさんの魔法が仕掛けられた舞台セットに、つい口ずさみたくなる「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」などの名曲、そして圧巻のダンスシーンが詰まっています。
今回THEATER GIRLがお話をうかがったのは、バート役の大貫勇輔さんと小野田龍之介さん。後編では、本作の楽曲やお2人の関係性について語っていただきました。
自分と役をより見つめて、愛しさが増した
――改めて、本作の楽曲の印象はいかがでしょうか。
小野田：『メリー・ポピンズ』の曲は、ディズニーランドでもずっと流れていますし、子供の時から映画も観ていました。自分が歌っていない曲も含めて、どれも、常にそばにある曲で細胞に入っているイメージです。
シャーマン兄弟の生い立ちも踏まえて楽譜や歌詞を見ると、心があたたまりますし、大切に歌わなければと思いますね。2役やると基本的に全曲歌っていますし。次の再再演がある時は、ミス・アンドリューとバードウーマン役で。鳩の役でも（笑)。
大貫：ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター～北斗の拳～』の時も楽曲がすごく素晴らしかったのですが、楽譜通りに歌うとなにかが足りなくて。そこに俳優としてなにかを足していくのが一番大変だったんです。
でも、今回は楽譜通りに歌うだけでも表現できるし、その上でバートとしての歌詞に感情を込めて変化させることでいろんな形になっていくんです。なので、遊べるというか、俳優の腕が試される懐のある楽曲で、やりがいがあります。
初演は歌うことに必死だったのですが、身体に入ってきた今となっては俳優としてどのように言葉を伝えるか、味付けができるかということも意識しています。
龍ちゃんは言葉を大事にする俳優さんなので、同じ役をやっていて「そんな歌い方もあるのか！」という気付きがたくさんあります。そういったいいところを盗みつつ、新しいバート像を作り上げられたらなと思っています。
――コロナ禍での稽古は大変とのことですが、お2人がコロナ禍だからこそ演じ方や意識が変わった部分はありますでしょうか。
大貫：カンパニーにはカンパニー力というものがあるので、今までだと日常から仲良くなろうと思っていたんです。みんなでご飯を食べて、飲んで、作品について語るのが大好きで……。
でも、それができなくなった今は真逆になったというか、自分のやるべきことだけをやるという姿勢です。そうなると稽古中や舞台上で役として人のことを感じるようになって、それが今は面白くもありますし、一番大きく変わった部分だと思います。
小野田：僕も、自分を見つめる時間が増えましたね。自分が俳優としても、なにをすべきかを考えるようになりました。
作品をやっている上で思うことは、マスクで稽古をしているのですが、マスクを外して芝居をするのは本番が始まる前日くらいからなんです。そうなると、やはり生のリアルな力強さを、より楽しめるようになりました。表情や息遣いをより大切にキャッチしようと、人に対する愛しさが増しましたね。
あとは、エンターテインメントファンとしては、コロナ禍でクローズしたいろんな劇場に久しぶりに足を運んだときに、お客様・スタッフ・俳優・オーケストラなど関係者全員が劇場に集まって、1つの作品を共有する時間の尊さも改めて感じました。
改めて僕たちはすごい仕事をしているんだなと、この仕事を誇りにも思いましたし。気合いを入れてやっていきたいなと。不便なことも多いですが、良いものを見つめなおすことが出来たとも思いますね。
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