加藤和樹インタビュー ミュージカル『BARNUM』「今だからこそ、この作品の良さが強く届く」（後編）
19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収めた興行師、P.T.バーナムの半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM（バーナム）』の日本初上演が決定し、3月6日（土）より東京、兵庫、神奈川で公演が行われます。本作はブロードウェイでの上演後、ロンドンでも上演された人気作で、この度の公演では劇場内に映像でサーカスの光景を展開する空間演出もみどころとなっています。
主演のフィニアス・テイラー・バーナム役を務めるのは、ミュージカル『ローマの休日』のジョー・ブラッドレー役やミュージカル『ファントム』のファントム（エリック）役など数々の作品に出演するほか、声優やアーティストとしても幅広く活躍中の「加藤 和樹（かとう・かずき）」さん。
今回のインタビューでは加藤さんに、チャイリー役・朝夏まなとさんと挑むバーナム夫妻の役作りや、舞台に立ち続ける上での原動力などについて、じっくりと語っていただきました。
信頼できる相手とだから描ける、バーナム夫妻の深くて絶妙な関係
――チャイリー役の朝夏さんとは、『ローマの休日』のジョー・ブラッドレーとアン王女に引き続いてのタッグになりますね。今作については、お二人でどんなことを話されていますか？
『ローマの休日』の公演中から「次も一緒だね」と話していました。すごく信頼できる相手ですし、「お互いに遠慮なくやろうね」って。彼女自身が強い女性で、そこに負けないようにしなきゃと感じているので（笑）、そこできっとバーナムとチャイリーの関係性は上手く描けるだろうと僕は思ってます。
――対等に支え合う空気感の二人になりそうですね。
今回が初めましてではないことと、彼女とは年齢も同じで、とても尊敬できるし頼りにもしていること。これが二人の役作りをする上で、かなり大事なことだと感じています。というのも、バーナムとチャイリーが、お互いを異性として好きというよりは、自分とちがう才能を持っているからこそ相手に惚れている、というところに通じるのではないかと思うんです。
朝夏さんは僕にはないものをたくさん持っていて、素晴らしいなと思うところが山ほどあるんです。今回のお芝居を一緒に作って行く上では、そこが重要なポイントになるだろうなと。お互いに口に出しては言っていないですけど、多分、それぞれに感じている部分ではあると思うので。……いや分からないな、僕の一方的な片思いかもしれないです（笑）。でも不安は一切ないですし、とても楽しみですね。
――『ローマの休日』ではアン王女に合わせるジョーだったと思うので、今作では力関係が逆に近いように感じますが、その点の面白さはどうでしょうか？
どうですかね、チャイリーはけっこう強いので……（笑）。現実的な部分もありながら、それでも夫を支えてくれて、グサっと釘を刺すように的確なことを言ってくれる。そういう人がいないと、バーナムはきっと燃えないと思うんですよ。
これがもし「私はあなたを全面的にサポートします」っていう全てイエスな女性だったら、バーナムは多分彼女に惚れていないし、きっと興行も上手く行っていなかったと思う。でも、要所要所で本音を伝えて、ちゃんと道を正してくれるような存在だからこそ、彼女を信頼しているし、愛している。そういう、すごく深くて絶妙な関係なんですよ。
――なるほど……真に信頼しあったパートナー同士なんですね。
すごく言い合いもしますしね。劇中の曲にも「君とはもう何もかもが正反対だ」っていう歌があって、「でも君のその生き方、考え方が僕は好きなんだ」と。それってすごく深くて、ただの愛情ではないところで結ばれている夫婦ですよね。観に来てくださる方にもそれを感じていただけるように、朝夏さんと二人で役の関係性を築き上げたいと思っています。
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