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岸谷五朗×寺脇康文インタビュー『儚き光のラプソディ』「一人でも多くのお客様に地球ゴージャスに参加してほしい」(後編)

INTERVIEW

2024年4月28日(日)、明治座にて『儚き光のラプソディ』が開幕します。

本作は、岸谷五朗さんと寺脇康文さんにより結成された演劇ユニット「地球ゴージャス」の結成30周年を記念して上演される6年ぶりの新作。物語の舞台は“謎の白い部屋”。時空を超え、“逃げ出したい”という強い感情から集まってきた7人の男女たち。部屋のなかで繰り広げられる会話により、互いの関係が変化していきます。今回、風間俊介さんと保坂知寿さんを除く主要キャストが地球ゴージャス初参加となり、中川大志さん、鈴木福さん、三浦涼介さん、佐奈宏紀さんといった新鮮な顔ぶれが並びます。

今回、THEATER GIRLは、地球ゴージャスのお二人、毎公演、作・演出も手掛ける岸谷五朗さんと寺脇康文さんにインタビュー。後編では、お二人の出会いから地球ゴージャスとしての夢まで、40年分の思い出と共に語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

映像作品の撮影前は、毎回逃げたくなります

――本作は、「逃げたい」という強い感情が溢れそうになった瞬間に“扉”が現れるというストーリー。それにちなみまして……お二人が最近、「逃げたい」と思ったことはありますか?

岸谷:映像作品の撮影前は、毎回逃げたくなります。“このシーン、できるかな”と不安になるんです。そういうときは“今までやってこれたんだからできる!”と自分に言い聞かせるんですが、それに疲れてしまうんですよ。

寺脇:そうなの?“俺様の芝居を見ろ”じゃないの(笑)?

岸谷:いやいやいや。まぁ、だからといってNGはほとんど出さないんだけどね。

寺脇:きっとそういう葛藤から、五朗ちゃんの素晴らしい演技が生まれるんだね。

岸谷:で、次の段階は忘れることですね。自分が何のセリフを言うかみたいなことは全部忘れて、純粋に設定だけを頭に置いて。「用意、スタート」がかかったら新鮮に芝居をすることに持っていく……のですが、それまでが本当に不安で。“できないかもしれない。どうしよう!”って。“このシーン、一生終わらないかも”って思えてくるんです。

寺脇:そんなふうに思うんだ!?  俺は、逃げたいことはあるかな?……あっ、僕は寝入りがすごくよくて、布団に入るとすぐ眠りにつけます。

岸谷:うらやましい。

寺脇:でも、夜中に目が覚めてトイレに行ったりすると、そこから眠れなくなったりするんです。次の日しんどいから“あー、早く眠らせて”と思いながら、ずーっと何もせずにベッドにいる時間から逃げ出したいと思うかな。

こんなに合うヤツいないなと思った

――お二人は40年来のお付き合いということですが、お互いの第一印象は覚えていますか?

寺脇:五朗ちゃんは劇団(SET)の1年先輩なのですが、初めて会ったときの印象は「なんてヤンチャな兄ちゃんなの!」ですね。

岸谷:俺、二十歳ぐらいだったよね。

寺脇:そう。俺が22歳だから。

岸谷:でも、その日に劇団のみんな40数人で飲みにいったのに、最後は二人だけで飲んでいたんですよ。今思うと、そこからもう地球ゴージャスが始まっていたよね。

寺脇:そうだね。

岸谷:話している内容も、芝居のことばっかりで。

寺脇:好きな俳優とか映画とかね。それが五朗ちゃんと全部ビタビタビタって合って。こんなに合うヤツいないなと思いました。

岸谷:結局、朝まで飲んだんだよね。やっぱりそこは、何かが一致した瞬間なのかな。

寺脇:まぁ、俗に言う運命の出会いという。

――お互いに、その当時と変わったなと思う部分と、逆にずっと変わらない部分を教えてください。

岸谷:基本的にはまったく変わってないですね。

寺脇:そうだね。

岸谷:小さなことでいうと……あっ、お酒を飲む時間帯が変わったか。

寺脇:昼になったね。14時開始で21時終了(笑)。

岸谷:夕方5時ぐらいに「飲もうか」となっても、「いや、もう遅いよ」ってやめたりとかね(笑)。

寺脇:でも、二人ともちゃんと午前中にウォーキングしたりとか走ったりとか、トレーニングをしているんですよ。で、昼から集まると。

岸谷:そうそう(笑)。

寺脇:まぁでも、五朗ちゃんは目がやさしくなったな。

岸谷:あははは!

寺脇:もう、昔はほんっとにナイフみたいな目をしていましたから。怖いというか、攻撃的な。

岸谷:それはそうね。あっ、あと、二人ともマンガを拾わなくなった! 昔は、駅のゴミ箱から拾っていたよね。

寺脇:「これは、わりと新しい『少年ジャンプ』だ!」とか言いながら(笑)。

岸谷:そうそう。それをみんなで持ち寄って、読み終わると交換するんだよね。

寺脇:「俺、『少年サンデー』持ってるよ!」とか(笑)。

岸谷:それで、最後は一番金のないヤツが、駅で中古のマンガを売っているおっちゃんに売りにいくっていう。

寺脇:といっても、「これは汚れがあるから5円だな」というぐらいの金額なんだけどね(笑)。

――では、お互いに“この人がバディでよかった”と思う瞬間はありますか?

岸谷:それはもう、いっぱいあります。

寺脇:うん。五朗ちゃんといなかったら地球ゴージャスも生まれなかったわけですから。そう考えると、もしかしたら僕は舞台をやっていなかったかもしれないですしね。

岸谷:そうね。僕は、一人ではどうしようもないことがあったときや、すごく弱っているときとかに“あっ、これは寺ちゃんが支えになってくれているんだ!”って気づくんです。具体的に何かを言ってくれるとか、助けてくれるとかってことではなく、寺ちゃんがいてくれることで先に進めるというか。そうやって、気づかないうちに支えられているのが本当の支えなんだなって思うんですよね。

寺脇:そうか。だったら俺は、五朗ちゃんの映像の現場に同行しなきゃいけないな。不安で逃げ出したくなるたびに「全然大丈夫。今のでいこう!」となぐさめるために(笑)。

岸谷:ははは。でも俺、逆に寺ちゃんがいたら、甘えて逃げちゃうかもしれないな。

寺脇:そしたら、俺が代わりにその役をやっておくよ(笑)。

岸谷:わはは!

寺脇:五朗ちゃんは、バラエティー番組に出る前とかも相当イヤがっているんですよ。

岸谷:自分がうまくこなせると思えないのよ。

寺脇:というか、五朗ちゃんの場合は、その番組に出るからにはちゃんと盛り上げたいんだよね。自分が出演することで、どうこの番組がよくなるかを考えているんですよ。

岸谷:そうそう。でも、生放送の本番前とか、僕がドキドキして呼吸が浅くなっているのに、寺ちゃんを見るとあくびとかしているんですよ(笑)。でもきっと、それが自然と支えになっているんですよね。“こんなに余裕があるなら、俺はこの人の横にいれば大丈夫”って。

寺脇:そうよ。

岸谷:寺ちゃんには、ワイプで抜かれたときのコツも教わりましたよ。(ワイプで)抜かれたら……。

岸谷・寺脇:頷け!

寺脇:笑顔で頷くか、ビックリした顔するか、どっちかをすればいいんだよって。

岸谷:「俺も、その二つで乗り切ってるから」って。

寺脇:だって、それを教える前の五朗ちゃんのワイプ、パッて抜かれているのに真顔(笑)。

岸谷:しかも、ストップモーション(笑)。

寺脇:“これは写真ですか?”ってぐらい動かないんですよ(笑)。だから、「五朗ちゃん、動かないとダメだよ」って言いました。

岸谷:あと、もうちょっと高等な技術として、「隣の人に話しかける」というのも教わりました。

寺脇:あっ、そうそう。

岸谷:なるほど! と思って。たしかに“参加している感”が出るんですよ。これは助かりましたね。

一人でも多くのお客様に地球ゴージャスに参加してほしい

――地球ゴージャスを立ち上げる際に、お二人で誓ったことはありますか?

岸谷:まぁ、小さなことはいっぱいあるんだろうね。「成功させようぜ」というのは、もう暗黙の了解であるとしても。

寺脇:そうだね。

岸谷:僕ら、最初の公演は劇場じゃなくて、スフィアMEXという会議室みたいなところに全部道具を作って。それこそビールケースで客席を作ったりっていう、アングラ芝居みたいなところからスタートしたんですよ。

『瓶詰の地獄~いつまでもたえることなくともだちでいよう~』というタイトルの作品でした。当時はエネルギーがあり余っていたし、なんていうんだろう……パンって華やかなミュージカルとかではなく、骨太な内容を追求したいみたいな思いがすごく強かったのかな。

寺脇:そうだね。まぁでも、それをずっとやっていくということではなくて。

岸谷:うん、一発目の作品としてね。

寺脇:それまで僕らが所属していたSETのミュージカル・アクション・コメディーという楽しい芝居を経ての(地球ゴージャスとしての)第1弾としては、それまでとまったく同じようなことはしたくなかったというのもありますし。

岸谷:うん、それが大きかったよね。

寺脇:まずは、もっと泥臭いというか。

岸谷:そう。“芝居芝居している”というか。

寺脇:出だしはまず、そこへ行くべきだ、みたいな思いが僕らのなかにあって。

岸谷:そうそうそう。“汚れたい”みたいな。

寺脇:泥に足を突っ込まなきゃいけない、みたいなね。

岸谷:例えていうなら、華やかなスポットライトではなくピンスポット一つだけで芝居する、みたいなことなんです。初めはそんなニュアンスがすごく強かったかな。でも、自分たちでもわかっているわけです。その後に華やかなエンターテインメントを絶対にやるって。

寺脇:そうそう。踊りで感動させ、歌で感動させ、アクションで感動させ、最後は幸せな気分になってもらえるような作品をね。

岸谷:だから、1本目はあえてそこへ行かないスタートを切ったというか。

寺脇:まぁきっと、当時の俺たちにはそういうことも必要だったんだろうね。

――そうやって公演を続けていたら、いつのまにかここまできていたという感覚でしょうか。

岸谷:本当にそうですね。

寺脇:だから、この先のこともわからないわけですよ。いつ「もうやめようよ」となってもおかしくないですし。

岸谷:二人だけで始めたのも、いつでもやめられるからという理由だったもんね。

寺脇:とにかくフットワークを軽くしたかったんです。

――でも、お二人は「まだまだ大それた夢への追求は続きます」と公式にコメントされていますよね。

岸谷:たぶん“飢え”みたいなものがなくなったら、芝居作りなんかできないんですよね。2カ月の地球ゴージャスの稽古期間中は、僕たちが中心になって役者やスタッフを叱咤激励し、鼓舞しながら作品を作っていく。それって、本当にエネルギーが必要なんですよね。チラシができて、キャスティングが決定する、そこまででもう打ち上げをしたいぐらい大変なんです。さらに、具体的に始まっていくともっと大変で。そうすると、やっぱり本当にやりたいという思いがないと乗り越えられないですよね。芝居作りなんてね。

寺脇:あっ、でも、大それた夢があるとすれば、「地球上に生きている人全員が地球ゴージャスの作品を観る」かもしれないです。例えば、今回の公演で12万人入りましたと。それを「12万人も入れたよ」と言うのではなくて、「12万人の方にしか観てもらっていない」ととらえる。偉そうな意味ではなく、観ていない人のほうがもっともっと多いわけですから。もちろん、100%無理なんですが、そういう気持ちはどこかにあるかもしれないですね。

岸谷:それはそうね。

――では、“10年後にはこうなっていたい”というような目標もないのでしょうか?

寺脇:ないですね。

岸谷:先のことは、あんまり話さないですね。というより、目の前のことに必死なだけなんですけどね。ただ、一人でも多くのお客様に地球ゴージャスに参加してほしいという思いは、ずっとある。それは本当に旗揚げのときから変わらないですね。

――地球ゴージャスならではの稽古場の雰囲気というのはありますか?

岸谷:たぶん、すごくあるんだと思います。「これが地球ゴージャスだよね」って、来てくれるキャストみんなが言うので。「ゴージャスの稽古は特別ですよね」って。

寺脇:まぁ、僕も客演でほかの稽古場に行くことがありますが、ゴージャスの稽古場は“極限の同好会”だなと感じます。プロフェッショナルな同好会。

岸谷:稽古も長いし。

寺脇:まず、芝居の稽古が始まるまでに2時間ぐらいかかりますからね。体操から発声、マット運動、とかやっていると。

岸谷:ウォーキングとかもありますし。実際、舞台で体を使って演技をするまでにそれぐらいの時間がかかるんですよ。毎回、腹式呼吸にいくまで一つずつやるので。

――外部から参加した役者さんは、相当鍛えられますね。

岸谷:だから、舞台が初めての人でも、本番ではちゃんと舞台俳優になって立っていますよね。大原櫻子とか宮澤佐江ちゃんとか、(三浦)春馬もそうだけど、初舞台とは思えない発声をちゃんとできるようになって舞台に立つんですよね。それはやっぱり、その稽古頭のメソッドがあるからですよね。

寺脇:僕らは柔軟やストレッチも全部一緒にやっていく。だから、どんどん家族みたいになっていくというか。“あいつ、どこか痛そうにしてるな”とか“顔が曇っているな”とか、その日の調子がなんとなくわかるようになるんです。

岸谷:そうそう。

寺脇:悩んでいそうな人がいたら、少人数で飲みにいって話を聞いたりとか。

岸谷:3人ぐらいずつね。だから、必然的に俺たちは毎日飲んでいるという(笑)。

寺脇:今回はまだ状況的にわからないけど、少しずつまた飲みにいけるようになったらいいですね。

――最後に、本作の公演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

寺脇:コロナに苦しめられたここ数年、芝居をしたいのにできないというもどかしさがありました。もちろんまだ気をつけながらではありますが、溜め込んだエネルギーを爆発させようと思っているので、ぜひ僕らとエネルギーの交換をしましょう。幸せ時間を一緒に作りに、劇場へ来ていただけたらうれしいです。

岸谷:本当に今、芝居をできなかった悔しさがギューッと溜まっている感じがしています。当日に公演が中止になるなんてこと、一生ないと思っていましたから。衣装を着てスタンバイしたのに「今日も中止です」という状況が続き、これは悪夢かと本当に思いました。そういう溜まった悔しさの爆発を見にきてほしいかな。コロナ禍明けとなる今回は、特別な公演になるかもしれないですね。

寺脇:幕が開いたら、もう全員泣いていたりして(笑)。

岸谷:早い早い(笑)!

取材・文:林桃

インタビュー前編はこちら

公演概要

Daiwa House Special 
地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』

作・演出:岸谷五朗

出演:
中川大志 風間俊介 鈴木福 三浦涼介 佐奈宏紀 保坂知寿 

原田治 小林由佳 井出恵理子 杉山真梨佳 内木克洋 高木勇次朗 水原ゆき 精進一輝 高島洋樹 
輝生かなで 東川歩未 尾関晃輔 栁原華奈 伊藤彩夏 千葉悠生 権田菜々子 清水錬

岸谷五朗 寺脇康文

【東京公演】
公演日程:2024年4月28日(日)~5月26日(日)
会場:明治座

チケット発売日 2024年1月20日(土)
チケット料金 S席(1・2階席)13,500円 A席(3階席)7,500円(全席指定・税込・未就学児入場不可)
お問合せ [公演に関して]地球ゴージャスFC https://fc.dps.amuse.co.jp/chikyu/qa/faq
[チケットに関して]チケットスペース 03-3234-9999(平日10:00-12:00/13:00-15:00)
※電話対応時間は変更になることがございます。
主催 株式会社アミューズ 株式会社明治座

【大阪公演】
公演日程:2024年5月31日(金)~6月9日(日)
会場:SkyシアターMBS

チケット発売日 2024年3月23日(土)
主催 株式会社キョードーグループ

特別協賛: 大和ハウス工業株式会社
企画・製作:  株式会社アミューズ

公式サイト:https://www.chikyu-gorgeous.jp/30th
公式X: https://twitter.com/chikyu_gorgeous

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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