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小西成弥×定本楓馬インタビュー 『ヒストリーボーイズ』 「芝居をすればするほどこの作品の良さに引き込まれる」(前編)

INTERVIEW

2024年7月20日(土)よりあうるすぽっとにて、『ヒストリーボーイズ』が上演されます。

英米で高く評価され、映画化もされた本作。イギリスの劇作家であるアラン・ベネットによる戯曲「ヒストリーボーイズ」はオックスフォード大学やケンブリッジ大学を目指す個性豊かな男子高校生たちの葛藤と成長、教師との対立などをユーモアたっぷりに描く中で、現代日本にも通じる、真の教育とはなにか、そして豊かな人間とは……を鋭く浮き彫りにした作品です。

アーウィン役を新木宏典さん、デイキン役を片岡千之助さん、校長役を長谷川初範さん、リントット役を増子倭文江さん、ヘクター役を石川禅さんが演じます。

そして、ユダヤ人で自分がゲイであることに悩んでいるポズナー役にミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ等舞台を中心に活躍する俳優の小西成弥さん、敬虔なクリスチャンで作家志望のスクリップス役にMANKAI STAGE『A3!』ACT2!~WINTER2024~等映画・ドラマ・舞台で幅広く活動する定本楓馬さん。さらに、スポーツは得意だが勉強ではまわりに追いつけないラッジ役に國島直希さん、ユーモアがありヘクターの授業を楽しんでいるティムズ役に白又敦さん、イスラム教徒で建築に興味があるアクタール役に納谷健さん、独自の視点で鋭い意見を言うロックウッド役に前嶋曜さん、趣味で演劇に興味があるクラウザー役に小田龍哉さんと、様々なジャンルで活躍する若手からベテランまで幅広い俳優たちが顔を揃えました。

THEATER GIRLは、ポズナー役の小西成弥さんとスクリップス役の定本楓馬さんにインタビュー。前編では、役作りにおける課題や役柄への取り組み方、共演者の方々の印象など、たっぷりと語っていただきました。

インタビュー後編はこちら

本作は「味わい深い作品」

――本作は、イギリス演劇界の権威のあるローレンスオリヴィエ賞やトニー賞最優秀作品賞を受賞し映画化もされていますが、作品や物語の印象を聞かせてください。

小西:この作品はオックスフォード大学やケンブリッジ大学を目指す男子高校生たちの話なのですが、その中でも宗教やセクシャリティといったいろんな要素が交わっている印象です。一週間くらいテーブル稽古をしているときは、みんなで解釈を深めることをしていたんですが、台本を読んでいるだけでは感じなかったことが出てきて、味わい深い作品だなと体感しました。

定本:最初に読んだ感想としては「わからないことが多すぎるな」って(笑)。オックスフォードやケンブリッジを目指している学生たちは本当に頭が良くて、劇中でも詩や歴史についての会話も出てくるんですけど、みんな日常生活の会話として当たり前にポンポンポンポン出てきて「どうしてこれで会話できているんだ」って。それくらい頭のいい人たちの会話だなと感じました。

演出の松森(望宏)さんも仰っていたのですが、大きな起伏があるお話ではなく、登場人物たちの細かい変化がたくさん散りばめられているんです。結果的にそれらがこの作品にとって一つの大きな波になっていて、すごく繊細な作品だなと感じました。扱っている題材もそうですし、日常生活のなかで悩みながら一歩一歩ゆっくり生きているお話だなと。

――定本さんは、海外の戯曲へのチャレンジが初めてとのことですが、本作に挑むにあたってチャレンジだと感じていることはありますか?

定本:笑いの感性というか、日本のギャグとは違うなと思いました。洋画でも、日本では見られない観点の笑いが多いのと同じなのかなと。それと台本を読んでいて、日本人は端的というか必要最低限の言葉で喋っていることに気づきました。この台本は一人一人のセリフが長くて、すごく丁寧に感情や物語を紡いでいるなという印象です。

小西:僕も海外の翻訳物は多いわけではないので、イギリスの文化や時代背景、宗教観を理解しないと分からない部分もたくさんあります。海外の作品に携わると、いろいろなことを知れて勉強になることがとても多いです。学生時代には全然理解できていなくて文字面だけで暗記していたようなことが、この作品を通して知っていくことで深まって、自分の中でより立体的にすることができるのはいいことだなと思います。

人物の名前にも見慣れないものもあるし、大学名とか詩とか比喩的な表現や難しい部分もあるんですけど。実際にお芝居でやっていると、ただセリフとして言うだけではなく、文字だけではキャッチできない、人と人との間だからこそ生まれるものが見えたりするので、やればやるほど面白いなと思いました。

親近感を持ってもらえるようにやっていかなければ

――現在、絶賛稽古中とのことですが(取材時)、それぞれ演じられる役柄の印象はいかがすか。現在、稽古でどのように役と向き合っているところでしょうか?

定本:スクリップスは作家になるのが夢で、いつも気になることがあったらメモを取っているキリスト教の少年です。スクリップスを演じるにおいての課題は、宗教を信仰している役が初めてだったので、考え方の違いや自分だけのフィルターでは表すことができないものがあるんだなと感じました。宗教のことを勉強した上で出てくるスクリップスの気持ちを考えていかないといけないので、そこは挑戦ですね。とは言え、多感な普通の高校生でもあるので、親近感も持ってもらえるようにやっていきたいです。

小西:ポズナーはユダヤ人でホモセクシャルで背が低くてと、コンプレックスが多くて、自分のアイデンティティに悩みを抱えている人です。そんなポズナーを演じていて、コンプレックスに悩みつつも、必死に前を向こうとする姿がすごく純粋で真っすぐで、人として素敵だなと思いました。稽古中でまだ分からない部分もたくさんあるので、初日に向けてより深めていけたらと思っています。

――出演者の皆さんの印象や稽古場の雰囲気はいかがですか?

小西:稽古では新木(宏典)さん演じるアーウィン先生と(石川)禅さん演じるヘクター先生の授業を交互に受けているのですが、空気感が違っていて面白いです。新木さんと禅さんで出す雰囲気が全く違うんですけど、お二人ともすごく魅力的な先生で、僕たち生徒が惹かれる理由がわかります。生徒役のみんなも年齢が近いので、リアルな教室というか学生感もあって楽しいです。

定本:一体感もあるし、楽しく話して互いにテンションを高めあっていますが、みんなの感性や個性がバラバラなんです。だから僕が想像していなかった考え方がたくさん出てくるし、シーンの話し合いの中でもいろんな意見が飛び交うので、すごく刺激的な現場です。それぞれが考えてきたものをぶつけ合って、作品を研いでいるような感じがしています。

――稽古を重ねて、今の時点でそれぞれ課題に感じていることはありますか?

小西:学生時代と現在の年を重ねてからのシーンがあるんですけど、その間の描かれていない部分をどう過ごして、どんな日々を重ねてきたのか、クライマックスに向けてどのようにアプローチしていこうか悩んでいるところです。そこが埋まっていくと、現代もそうですし、学生時代もポズナーの見え方が変わるのかなと思うので、いろいろ考えて想像しながらやっていきたいと思っています。

定本:この作品は大きな波があるお話ではなく、「オックスフォードやケンブリッジに入る」という目標はありますが、「凶悪な敵を倒す」みたいなこととはまた違って、一人一人の物語なんです。みんなで協力していくというよりは、一人一人がどう頑張って目標の大学に入ろうとするかが大事になってくると思うので。スクリップス個人の物語からも『ヒストリーボーイズ』という作品の中にはいろいろな人生があるということをより濃く見せていければ、もっと素敵なお話になるのではないかと思っています。まずはスクリップスがどんなことに悩んで、どのようにもがいて逃げて手を抜いて楽しんでいくのかを意識しながらやっていければと思っています。

取材・文:THEATER GIRL編集部
Photo:梁瀬玉実

インタビュー後編はこちら

公演概要

『ヒストリーボーイズ』

出演:
アーウィン 新木宏典
デイキン 片岡千之助

ポズナー 小西成弥
スクリップス 定本楓馬
ラッジ 國島直希
ティムズ 白又敦
アクタール 納谷健
ロックウッド 前嶋曜
クラウザー 小田龍哉

校長 長谷川初範
リントット 増子倭文江

ヘクター 石川禅

劇場:
あうるすぽっと【豊島区立舞台芸術交流センター】
〒170-0013 東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2F・3F
◆公演日程
2024年7月20日(土)~28日(日)全13ステージ

アフタートーク:
★7/21(日)17:00 新木×千之助×小西×定本
★7/23(火)18:00 新木×千之助×國島×白又×納谷×前嶋×小田
★7/24(水)18:00 先生day 新木×千之助×長谷川×増子×石川
★7/26(金)18:00 学生オールスター千之助×小西×定本×國島×白又×納谷×前嶋×小田

クロストーク:
※7/23(火)13:00 「イギリスの文化と文学、演劇について」増田珠子(駿河台大学経済経営学部教授)
※7/25(木)13:00 「演劇とことば」常田景子(翻訳家)
※7/27(土)17:00 「時代の変化と共に生きる」堤幸彦(演出家・映画監督)

スタッフ:
作:アラン・ベネット 翻訳:常田景子
演出:松森望宏 音楽・演奏:和仁将平 ステージング:広崎うらん

チケット詳細:
【入場料】
全席指定9,500円(税込)

製作:児玉奈緒子 著作権代理:シアターライツ
主催・企画・製作:CEDAR/MAパブリッシング

公式WEBサイト:https://www.cedar-produce.net/historyboys/
CEDAR公式WEBサイト:https://www.cedar-produce.com/
CEDAR公式Xアカウント:https://twitter.com/cedar_engeki

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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