矢田悠祐×上口耕平インタビュー 舞台「僕はまだ死んでない」「普段考えないことを考える機会になっていたら、すごく嬉しい」(前編)
2022年2月17日から舞台「僕はまだ死んでない」が東京・博品館劇場で上演されます。
本作は、2021年2月から4 月にかけて、自宅にて鑑賞が出来るVR版として配信され、今回もウォーリー木下さんの演出により、劇場公演が実現します。
もしもある日突然、最愛の人が、別れを決意した相手が、子供のころからの友人が、息子が、そして自分自身が倒れてしまったら。 意識はあるのに、会話ができなくなったら。本人の意思を確認できない状況で決断しないといけなくなったら、という終末医療をテーマに、突然脳卒中で倒れ眼球と瞼しか動かせなくなってしまった主人公・直人とその周囲の物語が展開していきます。
今回は、直人とその幼馴染の碧を、回替わりで交互に演じる、矢田悠祐さんと上口耕平さんにインタビューを敢行。前編では、舞台出演が決まった時のお気持ちや”終末医療”というテーマへの印象を語っていただきました。
終末医療について考えられることは、いい機会だと思った
――2021年にVR演劇として配信されていた本作ですが、改めて今回その舞台版への出演が決まった時のお気持ちを聞かせていただけますでしょうか?
矢田:最近はあまりストレートの舞台に出ることがなくて、久しぶりだなと思いました。あとは、題材が終末医療で命に関わること、普段あまり意識しないと触れないようなことだったので、仮にそういう体験が出来るというか、終末医療について考えられるということも、いい機会だと思いましたね。
上口:僕も、ストレートプレイが久しぶりなので単純に挑戦できることが嬉しかったですし、テーマに合わせて具体的に「自分だったらどうするか」と、今まで目をつぶってきたことを考えるきっかけになりました。正面から見る勇気・覚悟みたいなもの、そういうものを持ちましたね。
それから、今回Wキャストという話も最初から聞いていて、役を交互に演じるということも挑戦という気持ちがありました。特に、直人役に関してはVR版を見ていて、ベッドに横になっている状態で舞台上にいるというのが初めてなので、未知の体験でどうなっていくんだろうという気持ちです。
――今回原案・演出のウォーリーさんと、稽古場では演出面とテーマ制について、なにか話したりはされましたか?
矢田:演出は今のところまだそこまで細かく決めているというわけではないですが、今は、自分達の役がどういう状況に置かれているかという細かい背景の部分を話し合っています。
なので、解釈や、役のトライ&エラーのようなことを繰り返しているという感じですね。僕たちは直人と碧を同じ分だけ入れ替わりでやっているので、話すと感覚が一緒というか、感じていることは一緒なんだなって。たしかにリアルだけど、これをお客様の前で見せるとなるとちょっとしんどいかな? と感じるのは一緒だと思ったので、役の感情をどうしたいかを擦り合わせて自分のなかで整理しているところです。難しくもあるけど、それが楽しいというか、役者としてやるべきことなので。今はそこを模索しているという感じです。
上口:この台本自体が後半にいけばいくほどシリアスな内容で。でもそういった話をリアルに病室で家族や先生方と繰り広げる時って静かな時間が流れていると思うんです。それを演劇的にどういう緩急で、どのような波を作っていくかを僕たち演者のアイデアとそれを見たウォーリーさんの判断を組み合わせて「これだとたしかにリアルだけど、これだと静かだし、でもここを誇張するのは違うんじゃないか」と、リアルな会話をリアルなまま、いかに演劇的に見せるかをもがきながら答えを探しているという段階です。
僕は稽古場全体でそういったことを考える時間が好きなので。それはウォーリーさんの言葉だったり、舵の取り方だと思うんですけど、同じ方向を向いているなと思うんですよね。それはすごく幸せな時間というか、いい時間ですね。
こういうテーマ制に関しても、ウォーリーさんや知り合いの方の体験であったりとか、キャストそれぞれが脚本についてどう思うのか、それに近い状況を体験したことがあるかということを、稽古初日にかなり長い時間喋りました。
矢田:結構長い時間をとっていただきましたね。僕はそういう体験がなかなかなかったのですが、ウォーリーさんご自身の体験を話してくださったので、自分の考えが変わって、役に反映できるなと思いました。
上口:全員でそれぞれの思いや考え方をシェアした感じですね。なにか疑問が出たら、どのタイミングでも話を聞いてもらえる稽古場だと思います。