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綺咲愛里インタビュー『わが街、道頓堀~OSAKA1970~』「大阪松竹座開場100周年という大事な公演に、身の引き締まる思い」(後編)

INTERVIEW

今年開場100周年を迎える大阪松竹座にて、舞台『わが街、道頓堀~OSAKA1970~』が12月16日から25日まで上演されます。

今年1月から同劇場では、歌舞伎や現代劇、喜劇、名作映画など、開場100周年を祝う記念公演が行われていました。本作は、その最後を締めくくります。

物語の舞台は、1970年の道頓堀。大阪万博に沸き立つ人々のエネルギーあふれる生きざまを描く、わかぎゑふさん書き下ろしのハートフルコメディーです。

主演は、浜中文一さん、室龍太さん。これまでに幾度も同劇場の舞台に立ってきた二人が、息の合った軽快なやりとりで客席を魅了します。

THEATER GIRLでは、ヒロインの波多野葉子を演じる綺咲愛里さんにインタビュー。後編では、自分を「関西人だな」と思う瞬間、健康的なマインドを保つコツ、作品の意気込みなどをお伺いしてきました。

落ち着きのある低めの声色で、一つ一つの質問にご自身の言葉選びで真摯に答えられている様子がとても印象的でした。綺咲さんの母国語(?)でもある関西弁でのお芝居、さらに関西人の本領発揮でもあるコメディー、ぜひ本作で存分にご堪能ください。

インタビュー前編はこちら

綺咲さんが自分を「関西人」だと実感した瞬間とは?

――今回の舞台は大阪がテーマなので、綺咲さんが自分のことを「関西人だな」と思う瞬間をお聞きしたいです。

自分で思っているより、人から言われることのほうが多かったりしません? たとえば、洋服を褒められたときに「これ、安かってん」とすぐ値段のことを言っちゃうとか、そういうところでしょうか(笑)。

あとは「知らんけど」も! 関西人ってよく「知らんけど」って言うじゃないですか。言葉関係でいえば、タクシーに乗っているときも、「ちょうどそこ右行ったところを、ちょうど左曲がって……」とか。なぜか“ちょうど”って言うんですよ、関西人は。

――“ちょうど”って、関西の方特有なんですね。

らしくって。言われるまで気付かなかったシリーズはそのあたりです(笑)。自然と身に付いているし、染み込んでいるんだなと思います。

――関西にいるときは周りもそうだから、分からないんですよね。

そうなんですよ。自分が関西人以外と触れ合ったタイミングで、そういうカルチャーショック的な、ギャップを感じたことが多々あります。

――綺咲さんがメディアでお話ししているとき、綺麗な標準語を話しているイメージがあったのですが、今は少し訛りというか……。

実は、そうなんです! さっきからね、ちょっとおかしくなってきちゃって(笑)。いつも気を付けているんですけれど、今日は……。

――関西の方に囲まれているからこそ?

その影響は、かなり受けていますね(笑)。先ほど、浜中さんと室さんが喋っているのを聞いていたら、脳内が関西弁でいっぱいになっちゃって。その流れで今もちょっと出ているかもしれません。

――宝塚に入ったばかりの頃も、標準語に苦労していたそうですね。

いや、今も苦労していますよ。役を演じるときは、基本的に標準語が多いじゃないですか。等身大の日本人女性を演じるときが、私は特に歯がゆくって……。

まだ作り込まれている役柄のほうが、言葉も作りやすかったりするんです。現代の人が言う「何とかじゃん!」とかは、やっぱり自分にしっくり来なくて今でも大変ではありますね。

台本を読んで役の心情を考えるときも、頭の中で自然と関西弁になっちゃうので、そういう意味ではまだ言葉の壁があります。いや、まだというか、一生あるんだろうな……。外国語を喋っている感じです(笑)。

「知らなかった」が、功を奏したことも

――綺咲さんのインタビューを拝見していると、地に足がついていらっしゃる方という印象を抱きました。また、宝塚のことをあまり知らずに宝塚音楽学校に入ったというエピソードも、慣れない環境で適応していくのが上手な方なんだろうな、と。そんな綺咲さんが、マインドを健康的に保つために心がけていることはありますか?

いやいや、そんなそんな……(首を横に振りながら)。でも、ありがとうございます。

宝塚の話でいえば、知らずに入ったからこそ何とかできた経験はたくさんあったと思います。(宝塚音楽学校に入学する人は、宝塚が好きで憧れて入学される方が比較的多いそう)

――それが逆に綺咲さんには合っていたのかもしれませんね。

まっさらな状態で入れたのが、私に合っていたのかなという気はします。数年早く宝塚のことを知っていれば、「みんなとスタートラインが一緒だったのに」と思ったこともありましたが、“たられば”を言っていてもしょうがない。そんな暇もないくらい、目の前にある壁を越えていくのに必死という感覚でした。私の場合は、難しいことを一切考えずに、とにかくやるしかなかったので、当時は勢いだけで突っ走っていたと思います。

あと、私は長女なので、今になって長女気質なところがあるのかなと思っていて。「私がしっかりしないと!」と、いいますか。

――かっこいいですね。

そういうかっこいい女性でありたい、とはなんとなく思っています。

――綺咲さんはとてもかわいらしいルックスなので、いい意味でギャップがあるといいますか。

「喋ったら意外だった」とか、「黙っていれば、東京出身に見えるのにね」とか、よく言われます(笑)。自分でも「童顔なんだから、中身くらいしっかりしないとね」みたいな気持ちはあるかも。

だから、一時期は大人の女性になりたくて、メイクで“かっこよく”を意識した時代もあるんですよ。でも、結局メイクは作られるものなので、実際は舞台でもプライベートでも内面が滲み出ると思うんです。なので、それを追い求めて今に至るのかな、と。ごめんなさい、あまり上手い答えじゃないかも(笑)。

――内面においても、理想像を置くのは大事ですよね。ちなみに、綺咲さんが考える内面のかっこいい女性ってどんなイメージでしょうか?

筋が通っている人は、かっこいいなと思います。話し方が上手だったり、頭の回転が早かったり、そういう人にずっと憧れがあって。もともと自分は語彙力がなくて、のんびりした性格なので、それを突破したいというのが、その考え方に繋がっているのかもしれません。それこそ、地に足のついた女性はかっこいいなと思いますよ。

――先ほどの「中身くらいしっかりしないとね」というのは、周りから「かわいい」と言われたり、外見のイメージが影響していたことも、もしかして少なからずありましたか?

でも、それはそれでとてもありがたいことですし、ある意味、短所でもあるけど長所でもあると私は思っているので、あえて引っ張られなくてもいいのかなと思うんです。褒めていただいたことは素直に受け入れられる人でありたい。けれど、顔がどうであれ、こうなっていたんじゃないかなというのはあります(笑)。

――もともと綺咲さんの内面が、そういう素質だったんですね。

だと思います。頭の切れるしっかりした女性に対して、たまたま私が憧れを持っていた。なので、それに少しでも近付けたらと思いながら過ごしてきたから、今こうなったのかなと思います。

松竹座100周年の締めくくりに、「身の引き締まる思い」

――綺咲さんの内面を少し知れるような、素敵なお話をありがとうございました! 最後に本作への意気込みをお願いできますでしょうか。

松竹座100周年の締めくくりということで、私は初めての出演になりますが、そんな大事な公演に携われることが光栄ですし、身の引き締まる思いです。

みんな大阪にゆかりのある方なので、その一員になれたことも嬉しいですし、大阪の地や大阪人にしか分からない“あうんの呼吸”や絆みたいなものがきっとあるんだろうなと思っています。演出家のG2さんをはじめ、共演者の皆さまと素敵な作品を作っていけるようにがんばります!

大阪の道頓堀で、道頓堀を舞台にした作品を公演する。そこでやることにとても意味がある作品になると思うので、ぜひ全国どこからでも観に来ていただけたらうれしいです。

取材・文:矢内あや

インタビュー前編はこちら

公演概要

大阪松竹座開場100周年記念『わが街、道頓堀〜OSAKA1970〜』

作:わかぎゑふ 演出:G2

主演:浜中文一 室龍太
出演:綺咲愛里 ほか

2023年12月16日(土)~25日(月)
大阪松竹座

ご観劇料(税込):1等席11,000円 2等席6,000円 3等席4,000円

公式サイト https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/shochikuza202312/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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