萩原みのりインタビュー　舞台『裏切りの街』「この作品を舞台でやることの意味を毎日感じている」（後編）

2022.03.10

INTERVIEW

髙木雄也さんが主演を務める舞台「裏切りの街」が3月12日から東京・新国立劇場中劇場にて、3月31日から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演されます。

本作は、人間のリアルを描いた「愛の渦」や「何者」を手掛けた三浦大輔さんが作・演出を手掛ける作品で、フリーターと平凡な専業主婦による不倫を描いた物語です。昨年5月から6月にかけて上演される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となり、2022年3月待望の上演となります。

本作の主人公であり、人生から逃げて逢瀬に溺れるフリーター・菅原裕一役を髙木雄也さんが演じます。また、菅原の相手役・橋本智子を奥貫薫さん(※当面の間は呉城久美さんが代役を務めます)、智子の夫・浩二役をお笑い芸人“とろサーモン”の村田秀亮さん、浩二の部下・田村を米村亮太朗さんが演じるなど実力派の出演者が揃いました。音楽は、初演に引き続き銀杏BOYZが担当します。

今回THEATER GIRLがお話を伺ったのは、主人公菅原裕一の恋人で会社員・鈴木里美役を演じる萩原みのりさん。後編では、映像作品と舞台の違いや演者としての楽しみなどについてうかがいました。

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成立しているものとして届けるにはどうしたらいいのかということが難しい

――本作の映像作品がもともとお好きだったとのことですが、どういうところに魅力を感じられたのでしょうか。

映画を観た時に、お客さんのなかでも男性と女性とで全然違う場所で笑っていて、それがすごく面白かったんです。人間のすごく細かい部分がたくさん詰まっていて、映画館で観た時に「こんなにも登場人物みんなを愛してしまう映画ってすごいな」と思ったのを覚えています。

映画を一度観ただけのはずなのに覚えている台詞がいくつもあったり、荻窪に行った時に見える景色が少し違って「あの人たちいるのかな」と思ってしまうような、現実と繋がっているように感じてしまう作品だと思います。

それを大きな劇場でやるとなると、細かい人間の気持ちの機微を表現できるのかというのが、現時点で課題に感じているところです。カメラが切り抜いてくれないって、すごく難しいんだなと思っていて……。どれだけ本気で心の中で思っていても、やはり表現が小さく見えてしまう。三浦さんともお話ししているんですけど、こういう作品だからこそ大きくやりすぎたくない、でも伝えなきゃいけないという。この作品を舞台でやることの意味を、演劇で伝えることの難しさを、毎日すごく感じています。

――萩原さんが演者として思う、映像と舞台とで異なる部分と、舞台ならではの魅力などはありますでしょうか。

私は、今回で舞台は2回目ですが、初めての舞台稽古では”自分が演者である”ということをすごく実感しました。演技をする、しかも見せる人なんだと。映像はいつもカメラがあるので、見せ方を考えなくてもどの角度からどう撮るかを考えてくれるプロの方がいて、私は演じるのみだったんですけど。今回はお客さんに届ける、見せるということを意識しなければいけないということが大きな違いだと思います。

映像であれば目の前にいる裕ちゃんにだけ届けばいいけど、舞台だとたくさんの人に届けなければならないというのがすごく難しいです。「成立はしているけど、劇場が大きいからもう少し考えなければいけない」という三浦さんからの言葉も理解はできるんですけど、成立しているものとして届けるにはどうしたらいいのかということが難しい。私は演劇の場数・経験がかなり少ないので、皆さんにいろいろと聞いて勉強しながら、これから舞台というものを経験して学んでいかなきゃいけないなと感じています。