菅井友香インタビュー『赤ひげ』　「“その役になれた”と思えた瞬間に、一番感情がこみ上げてくる」（後編）

2023.11.03

INTERVIEW

2023年10月28日（土）～11月12日（日）に、明治座にて『赤ひげ』が上演されます。

明治座創業150周年を記念した公演の本作は、山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」を原作とし、江戸・小石川養生所が舞台となって物語が展開していきます。

演出は、故・蜷川幸雄作品を中心に演出助手を務め、近年は『鋼の錬金術師』、『オイディプス王』などミュージカルからストレートプレイ作品までさまざまな作品を手掛けている石丸さち子さんが務めます。

小石川養生所の医長・新出去定（通称・赤ひげ）役を演じる船越英一郎さんを主演に、新木宏典さん、崎山つばささん、猪野広樹さん、高橋健介さん、河相我聞さん、菅井友香さん、山村紅葉さんらが脇を固めます。

THEATER GIRLは、女中・お杉を演じる菅井友香さんにインタビュー。後編では、櫻坂46を卒業して一年経過した現在の心境や、今感じているお芝居の楽しさなどを伺いました。

インタビュー前編はこちら

ひとりで強く生きて歩いていかなきゃいけないと、より感じる

――櫻坂46を卒業してから約一年が経ちます。役者としての心構えや決意などが変化した部分はありますか？

グループを卒業して１人になってからは、舞台やバラエティー番組に出演させていただいたり、お仕事以外では、海外留学をしたり…。この一年はいろいろな経験をしながら、自分の人生やお仕事の方向性について考える時間が多くありました。私はグループ時代、チームみんなで作品をどうやったらよくなるかを考えながら作っていくことが好きだったんだとか、その作品を見た方に「救われました」「力をもらっています」と言っていただけたりすることがすごくうれしかったんだなということを、改めて感じています。今はひとりにはなったけど、舞台などでみなさんと作品づくりをできる時間がもっと増えるように、そういった挑戦ができるように、今後もがんばっていきたいなと思いました。

――この一年で、自分と向き合う時間が増えた？

そうですね。ひとりの時間を持つとか、行ってみたかったところに行くとか、そういう時間ができたので、感情豊かな人になれるように、いろんなものを見て感性を磨くということを意識してやるようになりました。

――グループ卒業後は、作品のクレジットなどに“（櫻坂46）”が付かなくなりましたよね。そういうところでの心境の変化もありますか？

グループに助けられていたところもたくさんあったので、そういう肩書がなくなると、ひとりで強く生きて歩いていかなきゃいけないんだと、より感じます。卒業を決めてスッキリしたところもありつつ、寂しさもありつつ……いろんな思いが込み上げてきますね。

――先ほどご自身でもおっしゃっていたように、ひとつの作品をみんなで作り上げるというのは、舞台などにも共通する部分ですよね。

そうですね。モノづくりはすごく大変だけど、みんなで一丸となって向かっていくところにやりがいを感じます。表に出る役者陣以外にも、演出の方をはじめ、音響さん、美術さん、照明さんなど、たくさんの方々が携わってひとつの作品ができているんだと、こうやって舞台に出させていただくようになり改めて理解できましたし、みなさんのパワーが集結したときのスゴさを感じるんですね。

役を突き詰めるために様々なことを考えるのが楽しい

――今、感じているお芝居の楽しさは？

今はお杉という役と向き合っていますけど、役を突き詰めるために様々なことを考えるのが楽しいです。ひとりで作り上げるのではなく、いろんな方とお話ししながら生み出されていくものもたくさんありますし。“あっ、こういうやり方もあるのか！”って、みなさんのお芝居を見ながら発見することもすごく多いので、そんな時間も楽しくて、たくさん刺激を受けています。でも一番うれしいのは、見てくださった方に「役や物語を通して力をもらった」と言っていただけることなので。今はそれを目指してがんばっています。

――逆に、お芝居の難しさはどんなところに感じますか？

自分とは違うものを持った人になるということは、やっぱりいろんな力が求められるんですよね。だからこそ豊かな感性が必要で、そのためには人間観察も大事ですし、“自分が経験していない人生で、自分の経験していないことをその人（役）になってやる”という難しさを、すごく感じます。

――そういった難しさを打破するために、努力していることはありますか？

自分のなかから過去の記憶を引っ張り出して、“このときのこういう気持ちは……”と照らし合わせたりとか、いろいろと試したりもしているんですが、やっぱり“その役になれた”と思えた瞬間に、一番感情がこみ上げてくるんですよ。だから、稽古期間にいろいろなことを考えて準備万端にして、本番では物語のなかでの心の動きに委ねてしまうことも大事なのかなと。役として生きるってすごく難しいけど、それができたときに楽しさを感じられるのかなと思います。あと、私は自分の声や滑舌とも向き合っているので、そういう技術的な難しさを感じることも多いですね。

――ボイトレに通ったりもされているんですか？

ボイトレの先生にも見ていただいてます。今はお杉の声を探りながら、自分のなかの低い声を開発中です。それと、私はしゃべるときに語尾がしぼんでしまうクセがあるので、ちゃんと自分の言葉に責任を持って、最後まで息を太く吐くというしゃべり方も練習しています。