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新木宏典×崎山つばさインタビュー『赤ひげ』「明治座150周年にふさわしく。まるでドキュメンタリーを届けているような作品になれば」(前編)

INTERVIEW

2023年10月28日(土)から東京・明治座にて、12月14日(木)から大阪・新歌舞伎座にて、明治座創業150周年記念『赤ひげ』が開幕します。

山本周五郎の傑作小説『赤ひげ診療譚』が原作となる本作。江戸時代後期の小石川養生所を舞台に、名医ではあるが武骨で変わり者な医長・赤ひげ(新出去定)と若い医師たちが日々格闘しながら、医療、命、そして生きることに向き合う姿を描きます。

貧しい者たちを救うため身を粉にして働き、ときには経費削減を命じる公儀に逆らうことも厭わないーー。そんな赤ひげを演じるのは、テレビドラマ版『赤ひげ』でも、新出去定役を務めた船越英一郎さん。今回が舞台初出演となります。

今回THEATER GIRLでは、医員見習として新しく小石川養生所にやってくる保本登を演じる新木宏典さん、同僚の津川玄三を演じる崎山つばささんにインタビュー。前編では、お二人のご関係性から、本作に出演が決まったときの心境やストーリーの印象をおうかがいしてきました。

インタビュー後編はこちら

先輩と後輩でありながら、芸歴とは逆の関係性に

――これまでにもご共演歴が多いお二人。特にミュージカル『刀剣乱舞』では長い期間ご一緒されたかと思いますが、あらためてどんな関係性ですか?

新木:先輩です。

崎山:後輩です。

新木:つばさは、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズに2015年から出演していましたが、僕は2017年からで、そのときはつばさ以外新人として現場に入りました。

崎山:あ、僕が先輩ということだったんですね(笑)。

新木:そう。役を演じるうえでの取り組み方を知っていたじゃない? その姿を見て、真似していく。盗みながら学んでいくスタンスで、現場に臨んでいました。

芸歴的にも年齢的にも自分が先輩かもしれないけど、そのときは崎山つばさが先輩だった。稽古に入る前から思っていたのは、やっぱりつばさに説得力があったんですよ。

初めて参加した僕たちは役を演じるうえで、どうすればいいのか掴みきれていなかったので、すでに掴んでいる人がそばにいるというのは、どういうアプローチをしていけばいいのか、具体的な例として存在してくれたのが大きかったですね。

――新木さんから、とても重みのある言葉がありましたね。崎山さんにとって、新木さんはどんな存在ですか?

崎山:今も僕はそう思っていますけれど、やっぱりお兄ちゃんですよね。兄貴です。人としても男としても役者としても相談したくなるし、背中を見ていたい人でもある。僕が勝手に兄貴と思っているだけかもしれないですけど(笑)。

今までいろんな方々と共演してきましたが、宏くん(新木さん)が兄貴なのはいつまで経っても変わらない。共演しているときもそうだし、共演していないときも情報は入ってくるじゃないですか。そのたびに気になるんですよ。「あ、さすがだな」と常に思わせてくれる、とても貴重な存在です。

以前共演したときも、役へのアプローチがさすがなだと思っていました。「そういうアプローチの方法があるのか!」と、常に学ばせてくれる人でもあります。それら全部ひっくるめて、やっぱりお兄さん。いつまでも自分を弟にしてくれる人なのは、今でもずっと変わらないですね。

――それでも以前共演された時は、新木さんが逆に崎山さんをお兄さんのように見ていたというのが素敵だなと思いました。

崎山:あ、服とかもくれるんですよ。それもうれしい。お兄さんからもらった服。

僕が勝手に慕っているだけかもしれないけど、個人的に(笑)。

新木:多分、僕は相手から言ってくれないと人と会ったりしないので。(崎山さんから)言ってくれるから、助かるというのはありますね。

――新木さんから誘うことは、あまりないんですね。

新木:ないんですよ。現場の流れで「ご飯行こうか」とか、そういうのは行きやすいとは思うんですけど、休みの日に一緒にいない状態で「今、何してる?」という誘い方は、ハードルが高い。きっかけをくれると、行きやすかったりはするんですけど。

つばさって、そういうことをちゃんとできる人ではあるかもしれないですね。だからプライベートでも交流を持つことができる後輩。

――それも新木さんのお人柄があるからという感じがしますね。

崎山:そうだと思います。

――今回の共演も、うれしいお気持ちはありましたか? また一緒にできるという。 

崎山:めちゃくちゃあります。

新木:うれしいですし、楽しみです。

――共演してから少し空いたことで、お互いの成長を見られる機会でもあると思います。

新木:今、SNSで情報が簡単に入ってくるじゃないですか。「こういう仕事するんだ」「そういう役やるんだ」というのは知っているけれど、つばさは常にしっかりと目的を持って仕事をしているから「どういう狙いでこの仕事やったんだろう?」といつも気になっています。

そこで何を得て、今はどうなっているのか。お芝居を通して、この数年分を見ることができるのはとても楽しみですよ。

――会えない期間も、ずっとお互い気になる存在なんですね。

崎山:気にして見ていますね。

新木:それこそ、今年の僕のバースデーイベントのときに、出版社の方がつばさに「今から新木さんのバースデーイベント行くんです」という話をしていたらしくて。

崎山:「いいな〜! 俺も行きたい」って(笑)。

新木:「どうやったら行けるのかな?」なんて言っていたらしいです(笑)。

――お客さん側の気持ちなんですね(笑)。

崎山:羨ましくて! チケット取れないから。

――もはやゲストで出られてもよさそうなところを、あえて……。

崎山:ゲストで出るのは、ちょっと違うんです。ズッキーさんがいるので、司会としてね。

新木:鈴木裕樹がMCをやってくれていたんです。ズキアラヤマ(鈴木裕樹さん、新木宏典さん、崎山つばささんの3人の総称)っていうのもあるんですけれどね。

崎山:申し訳ないですね、ゲストは。客席にいて「ちょっと来なよ」という感じだったら「じゃあ……」とはなるけど、「どうぞ!」みたいな感じで出るのはちょっと申し訳ない。

――一緒にお誕生日をお祝いするお客さま側ですね。

崎山:そうですね。宏くんのファンの方と一緒に過ごすという。

現代にも通ずる「命、生きる、繋げていくこと」の大切さを説く

――ここからは、『赤ひげ』のお話を伺わせてください。今回、出演が決まってからの心境はいかがでしたか?

新木:明治座で『大逆転!大江戸桜誉賑(おおえどかーにばる)』という作品に出ているときに、本作のお話をいただきました。初めて明治座に立って、その現場の姿を知っているうえで呼んでくださったので、役者としてとてもうれしかったです。

また、『赤ひげ』は原作小説があって、すでに映画化やドラマ化がされている。特に、映画で加山雄三さんがやっていた役を自分が演じるというのは、ピンと来なさすぎるくらい、すごいことだと思いました。

――ストーリーについては、どんなことを感じましたか?

新木:(赤ひげは)現代でも面白いと思える、先進的な考えを持っていたといいますか。江戸時代からしたら、かなり異端だったかもしれない。そんな人たちのカリスマ性や新しい試み、価値観が、現代人にも共感を得られるように作られているので、本当にすごいことだと思います。

医学の話なので、命の大切さや生きていくうえでの苦労、どう生きるかを見直す、そして振り返る。生きる活力になるテーマがたくさん乗っているからこそ、このタイミングでやる意味があると個人的には思いますね。

――ちなみに、このタイミングというのは具体的に感じているところでいうと?

新木:不景気、少子化……。次に繋げるということですよね。そこが軽んじられているわけではないですが、難しくなっている。そこまで気を回せなくなっているのが、現代だと思うんです。

僕自身は、親になってからの人生は、子を育てるための人生だと思うから、自分の将来だけではなく、子孫たちの将来を最優先に考えなければいけないのではないかと思っています。そういう意味でも、命や、生きるということ、繋げていくことを見直してもらうには、とても重要な作品になるのではないでしょうか。

景気が悪くなることによって、すでに家庭を持っている人たちが、どう子どもを育てていけばいいのか分からない、子どもを育てることが苦になっている。そんな状況に置かれたときに、口減らしや自分のために子どもを働かせる……。そういった場面を、この物語で客観的に観ることによって、「いや、そうじゃないだろう」と思ってもらえたら、この作品をやる意味があるのではないかな、と思っています。

現代にも通ずるさまざまな問題。「津川を通して何を伝えたいか?」を考えた

――崎山さんは、出演が決まったときの心境はいかがでしたか。

崎山:『赤ひげ』は、黒澤明監督の映画から始まり、船越さん主演でテレビドラマとしてシリーズ化して長く続いている作品であって。そんな作品に関われること、そして明治座でできることがとてもありがたいと思いました。

何を伝えるべきか。それがとても大事になってくると思います。作品が伝えたいこと、僕が原作を読んだり、テレビや映画を見たりして感じたことで「津川を通して伝えたいことは何なのだろう?」と考えました。

それは別に、津川を使って僕が伝えたいということではなく、お客さまにとって解釈はそれぞれですけれど、生きることについて、フィクションではあるけれど、「江戸時代で実際にこういうことがあったよ」ということであったり。あるいは、貧困の問題は日本だけでなく、他の国々で今もなおありますし、そういうことも含めて、何かを考える瞬間があってくれたらいいなと思います。それを伝える使命があるのではないかなという意味で、「津川を通して、僕は何を伝えたい?」というのを最初に考えました。

取材・文:矢内あや
Photo:野村雄治

インタビュー後編はこちら

公演概要

明治座創業 150 周年記念 『赤ひげ』

原作:山本周五郎『赤ひげ診療譚』より
脚本:堤泰之
演出:石丸さち子

出演:船越英一郎 新木宏典 崎山つばさ 猪野広樹(W キャスト)高橋健介(W キャスト)/菅井友香/山村紅葉

【東京公演】
期間:2023 年 10 月 28 日(土)~11 月 12 日(日)
会場:明治座

料金(税込):S 席(1・2 階席)12,500 円 / A 席(3 階席)6,000 円

チケット発売中: 明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
インターネット予約「席とりくん」 https://web.meijiza.com

【大阪公演】
期間:2023 年 12 月 14 日(木)~12 月 16 日(土)
会場:新歌舞伎座

料金(税込):S 席(1・2 階)12,500 円 / A 席(3 階)6,000 円

○チケット発売:一般発売 <インターネット・電話予約>10 月 7 日(土)10:00~
新歌舞伎座テレホン予約センター:06-7730-2222

公式サイト:
https://www.meijiza.co.jp/info/2023/2023_10/(東京公演)
https://www.shinkabukiza.co.jp/perf_info/20231214.html(大阪公演)

公式 Twitter:@akahige_stage

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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