廣野凌大×山口乃々華インタビュー a new musical『ヴァグラント』「ミュージカルの持つ“熱”と彩り豊かな時間を皆さんにお届けします！」（前編）

2023.06.29

INTERVIEW

ロックバンド「ポルノグラフィティ」のギタリスト新藤晴一がプロデュース・原案・作曲・作詞を手がけるオリジナルミュージカル『ヴァグラント』が今年8月19日（土）から東京、9月15日（金）から大阪で上演されます。

脚本と演出は『FACTORY GIRLS ～私が描く物語～』『魍魎の匣』『October Sky-遠い空の向こうに-』といったミュージカル作品で知られる板垣恭一氏が担当。

主演は『RENT』『キングアーサー』など話題作に数多く出演する平間壮一さんと舞台『鋼の錬金術師』エドワード役の熱演も記憶に新しい廣野凌大さん。ヒロインは『レ・ミゼラブル』30周年記念公演でコゼット役を演じNHK連続テレビ小説『エール』でドラマデビューを果たした小南満佑子さんとミュージカル『SPY×FAMILY』で演じたポーカーフェイスな女性諜報員、フィオナ・フロスト役が好評な山口乃々華さんがそれぞれダブルで務め、共演には水田航生さん、上口耕平さん、玉置成実さん、美弥るりかさん、平岡祐太さんら実力派キャスト陣が名を連ねます。

大正時代のとある炭鉱の街を舞台に、“マレビト”と呼ばれる芸能の民・佐之助（平間壮一／廣野凌大）と、街で生まれ育った幼馴染の政則（水田航生）、譲治（上口耕平）、トキ子（小南満佑子／山口乃々華）との出会いをきっかけに過去の事件が暴かれ、多くの坑夫たちを巻き込んだ騒動へと発展していく様を描く本作。

取材の直前には、『日比谷フェスティバル』（NESPRESSO presents Hibiya Festival 2023）のステージに平間、廣野、小南、山口、水田、美弥が登壇し劇中歌を披露。従来のミュージカル楽曲とは趣が異なるロック×和テイストあふれるサウンドに、道を歩く人々も思わず足を止めて興味津々でステージを見つめ、その熱いまなざしにキャストたちも手ごたえを感じていたようでした。

イベント出演直後、まだ興奮冷めやらぬ様子の廣野凌大さんと山口乃々華さんに前編では、『ヴァグラント』出演への意気込みやそれぞれの役柄について話をお聞きしました。

インタビュー後編はこちら

役を理解し、自分なりのキャラクターを追求したい

――最初に、今作に出演が決まった時の気持ちから伺えますか？

廣野　「主演」と聞いて「本当に俺でいいの？」と思いましたね（苦笑）。時間の経過とともにだんだん自覚が芽生えてきましたし、『日比谷フェスティバル』（4月30日）のステージで歌を披露して観客の反応を目の当たりにして稽古が始まるのが楽しみになりました。

山口　私は、ミュージカルの世界に入って今年で３年目になるのですが、ポルノグラフィティの新藤さんが作られる新作ミュージカルに出演させていただけること、歴史ある明治座の舞台に立たせていただけることを光栄に思います。本作に出演することが発表されて、ファンの方や友達、家族も「よかったね」「ニュース見たよ」と喜んでくれています。

廣野　僕は親に「ドッキリだろ？」って言われました。明治座の舞台に立つこともそうですし、芸能に詳しくない親でも知っているような方々と並んで僕の名前があるのが信じられないって言ってましたね（笑）。

――今回、お二人は初共演ですが、初対面の時の印象はどうだったのでしょう？

廣野　絶対に「チャラいヤツが来た」と思ったでしょ？

山口　「激ワルな人が来た」って思いました（笑）。

廣野　あははは（爆笑）！　それは誉め言葉だと思っていいのかな？

山口　もちろん誉め言葉です！　一切キャラブレせず貫き通している人だと、会った瞬間に分かるほどの濃いキャラクターをお持ちの方だなって思いました。私みたいな凡人からすると、すごくうらやましいです。

廣野　逆に僕みたいな人間には山口さんの純粋な感じがうらやましい。その純粋さがまぶしくてしょうがない。今もまっすぐに目を見れないですもん！

山口　ぜんぜん見ているじゃないですか（笑）！

――初共演とは思えないほど息がピッタリですが、同じ年というのも距離感が近くなった理由でしょうか？

廣野　まぁ（学年でいうと）山口さんは一つ上の先輩なんですけどね。

山口　社会に出たら学年は関係ないから同じ年でいいじゃない（苦笑）。

廣野　いやいや、何を言うんですか先輩！　僕、後輩なんで可愛がってください。

――今回、それぞれが演じる役について教えていただけますか？

廣野　僕が演じる「佐之助」は芸能の民“マレビト”です。マレビトはお祝い事や不吉なことがあった場所に赴いて歌や踊りを披露して「ヒト様の人生に区切りをつける」ことを生業としているんですけど、リスペクトされる一方で疎まれたり煙たがられたりする存在でもあるんですね。佐之助は人々との出会いの中で「自分はどう生きていくのか」と揺れ動く思春期の若者。周りの人間に助けられて成長していくTHE主人公という感じの役です。

――原作者の新藤さんから「どんな風に演じてほしい」といった要望はありましたか？

廣野　晴一さんとはビジュアル撮影の時に初めてお会いして、ちょっとお話するタイミングがあったのですが、特に役についてアレコレ言われることはなかったですね。撮影中、踊るようにカメラマンから指示があって、僕は別にダンスがうまくないんですけど「これでいいのかな？」と思いながら踊ったのだけど、衣装をまとって踊っているうちに役が自分の中に入ってくる瞬間があって、その時にすごく“孤独”を感じたんですよ。その様子を見ていた晴一さんは何か思うところがあったようで、撮影終了時に「こんな感じなんだね。逆にありがとう」と言ってくださったんです。それがすごくうれしかったですね。

――一方、山口さんが演じる三葉トキ子は、どんな女性ですか？

山口　トキ子は私設警察の取締隊隊長です。実際、大正時代に女性がこの役割は担えなかったと思うので、そこはファンタジーとしてとらえていただければ……。

――写真を見た感じ、凛々しい感じのイメージですね。

山口　そうなんです。凛とした強さを持っている女性で、感情を出すシーンは少ないのですが、物語の中盤あたりからは村の人との触れ合いの中で少しずつ柔らかい部分が出てきます。幼い頃に両親が殺されるところを目撃してしまうというトラウマを抱えているので、常に“何か”と戦っているような張り詰めたところがあるイメージ。「強くあらねば」と自分を律しているようなキャラクターなので、そんな切羽詰まった感じや緊迫感を持ちながらお芝居ができたらいいなと思っています。

――今、目の前でお話されている山口さんは口調も柔らかくて、トキ子のイメージとはつながらないのですが、ご自身で役と共感できる部分はあるのでしょうか？

山口　最後までやり遂げると決めた時の気持ちの強さは共感できます。あと言い方は悪いですが「傷つけられた心の痛みを根に持つ」みたいなところは、けっこう私も根に持つタイプなので共感できます（笑）。「親を殺した犯人を見つけたいから、なりふり構わず貫く」というところは、共感はちょっと難しいけれど「理解」はできますね。