鞘師里保インタビュー舞台『スルメが丘は花の匂い』「不安なところに飛び込むことが、私にとっては楽しみ」（後編）

2022.07.23

INTERVIEW

2022年7月22日 (金)から、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAを皮切りに、舞台パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』が開幕します。

作・演出を手掛けるのは、お笑い界のみならず演劇界でも注目を集める、かもめんたるの岩崎う大さん。実力派コント師でありながら、主宰する『劇団かもめんたる』の作品「GOOD PETS FOR THE GOD」「君とならどんな夕暮れも怖くない」が、岸田國士戯曲賞候補作にノミネートされるなど、劇作家・演出家としても活躍が目覚ましい岩崎さんの初プロデュース公演となります。

主人公の会社員・縁緑(えにしみどり)を演じるのは、吉岡里帆さん。童話の登場人物が生まれる不思議な世界に迷い込んでしまった緑は「スルメ姫」という物語の主人公として生きることを運命づけられた少女・クロエと出会います。

幸せとは何か、価値観の違う者同士が共存するにはどうすればよいか。そんな普遍的テーマに触れた、唯一無二の「岩崎う大流」ファンタジー・コメディー作品です。

THEATRE GIRLではスルメ姫・クロエを演じる鞘師里保さんにインタビューを敢行。インタビュー後編では、台本を読んだときの印象、共演する吉岡さんについて伺いました。また、作品のストーリーにちなみ、「もし自分が物語の世界に入り込んでしまうとしたら？」についても伺ってきましたので、ぜひお楽しみに。

インタビュー前編はこちら

ファンタジックでありながら、その場にある大切なことに気づけるリアルなテーマ

――本作は、吉岡さん演じる現実世界から来た緑と、スルメが丘に住む人々のコントラストが印象的ですよね。鞘師さんは台本を読んだとき、どんなふうに感じられましたか？

お話自体はかなり核心を突いているといいますか、その場にある大切なことに気が付けるリアリティのあるテーマだと思いました。それをこんなにファンタジックに描いているところに、いい意味で気持ち悪さみたいなものを感じたりして、とても不思議でしたね。

ファンタジーのこの世界観と、リアリティのあるテーマとのギャップがとても面白くて、最初に台本をいただいてから、あっという間に読んでしまいました。

――確かに、ビジュアルもかなりファンタジーで、独特な世界観ですよね。

そうですね。私もヘッドピースを被って撮影させていただいて。出来上がったビジュアルカットを、実際に見たときはびっくりしました。なるべくしてなった世界観だとは思うのですが、それでもまさかというか。「こんなに振り切るのか！」と驚きましたね。

表現を追求する吉岡里帆さんの姿が、とても勉強になっている

――緑を演じる吉岡さんとは初共演とのことですが、ご一緒してみて印象はいかがですか？

お会いする前から優しそうな方という印象がありました。いざこうやって毎日一緒に稽古する中で、私は人に対して話しかけるのにちょっと勇気がいるタイプだったりするのですが、そういうタイプの私でも吉岡さんには話しかけやすいんです。「私は何でも受け止めるよ」みたいなオーラを出してくださるからかな？

――広い心で接してくださる方なんですね。

そうですね。それがみんなに対して全く変わらない方だな、と。私みたいな年下の人に対しても、もちろん年上の方に対しても、フラットに丁寧に接してくださいます。

基本的にはずっと稽古をしているので、雑談の時間は限られているといいますか、コロナの状況もあって、積極的にみんなでお喋りできる環境ではなくて……。稽古が終わったらすぐ帰らなくてはいけないのですが、そんな状況下でもこの一ヶ月間でコミュニケーションは取ってきたな、と思っています。それが、とても嬉しかったですね。

吉岡さんは演出に関しても、いろんな角度からいろんな可能性を持って、表現を追求されている方だと見ていて感じます。みんなで話し合うときも、ご自身のアイデアがあったり、う大さんとラリーされている姿を見て、私もとても勉強させていただいています。

――学びの多い刺激的な現場なんですね。

「こういうふうに突き詰めていくのか」とか、「この表現で極めていけばいいのか」とか、そういったことが直に学べるので本当に勉強になりますね。