鞘師里保インタビュー 舞台『スルメが丘は花の匂い』「不安なところに飛び込むことが、私にとっては楽しみ」(前編)
2022年7月22日 (金)から、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAを皮切りに、舞台パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』が開幕します。
作・演出を手掛けるのは、お笑い界のみならず演劇界でも注目を集める、かもめんたるの岩崎う大さん。実力派コント師でありながら、主宰する『劇団かもめんたる』の作品「GOOD PETS FOR THE GOD」「君とならどんな夕暮れも怖くない」が、岸田國士戯曲賞候補作にノミネートされるなど、劇作家・演出家としても活躍が目覚ましい岩崎さんの初プロデュース公演となります。
主人公の会社員・縁緑(えにしみどり)を演じるのは、吉岡里帆さん。童話の登場人物が生まれる不思議な世界に迷い込んでしまった緑は「スルメ姫」という物語の主人公として生きることを運命づけられた少女・クロエと出会います。
幸せとは何か、価値観の違う者同士が共存するにはどうすればよいか。そんな普遍的テーマに触れた、唯一無二の「岩崎う大流」ファンタジー・コメディー作品です。
THEATRE GIRLでは、スルメ姫・クロエを演じる鞘師里保さんにインタビューを敢行。インタビュー前編では、本番を前にした率直な気持ち、役づくりのポイントなどについてお伺いしてきました。
インタビュー後編はこちら
ディテールまでこだわった演出、濃密な時間を味わっている
――本番まであと約一週間ということで、お稽古も佳境に入っているころかと思います。率直に、現在どんなお気持ちですか?(取材時)
ここまで来るのが、本当にあっという間でした。稽古期間は一ヶ月近くありましたが、気づいたら、「あれ? もう一週間経ってる……!」みたいな感覚でしたね。一日の中でも稽古の時間がしっかりある分、一日が終わって、またすぐ次の日、という感じです。まさに、駆け抜けてきたなと思います。
本日はこのあと通し稽古をやる予定なので、本番目前という実感はありながらも、でも……あと一週間で開幕するのか……。(感慨深げに)ちょっと、まだ信じられない気持ちも大きいですね。
――鞘師さんが一瞬一瞬に向き合っているからこそ、時間が経つのが早いと感じられるのかもしれないですね。
とても濃い時間を過ごしているなと感じます。演出のう大さんが、細かいディテールにまでこだわった演出を付けてくださるんですよね。台詞一つとっても、言い方のトーンや、音程までとことん詰めていく。だからこそ、無駄な時間を過ごしている感覚が全くないんだと思います。かなり凝縮された一ヶ月を過ごしていると思います。
不安なところに飛び込むことが、「私にとっては楽しみ」
――本作『スルメが丘は花の匂い』への出演が決まったとき、どんな状況だったか覚えていらっしゃいますか?
マネージャーさんから「舞台の出演依頼をいただきました。面白そうなので前向きに検討してください」と台本を渡されました。
――そのとき、どう感じられましたか?
まずは、う大さんが作・演出で、吉岡里帆さんが主演だと聞きまして。私の中で、う大さんはやっぱりコントのイメージが強かったので、どんな世界観の脚本になるのか、未知へのワクワク感が大きかったです。
今回の舞台はコメディということで、「自分がこの世界にちゃんと入り込めていけるのかな?」と、ちょっとした不安もあったりしました。でも、私自身も自分の新しい一面が見られそうで、そういう世界に飛び込める喜びも同時に持っていた気がします。
――ワクワクもあり、ちょっと不安もあり……感情が入り混じっていたのですね。
そうですね。でも、不安なところに飛び込むことこそが、私にとっては楽しみでもあって。その気持ちが率直にやっぱり大きかったです。