西川貴教×柿澤勇人インタビュー ミュージカル『スクールオブロック』 「誰が観ても何かを持ち帰ってもらえるような作品」（前編）
2023年8月17日(木)～9月18日(月祝)に、東京建物Brillia HALLにてミュージカル『スクールオブロック』が上演されます。
本作は、2003年に公開された映画『スクール・オブ・ロック』を原作にしたミュージカルで、2015年には「キャッツ」や「オペラ座の怪人」などを手掛けたアンドリュー・ロイド＝ウェバーの作曲・プロデュースによってブロードウェイで上演されました。日本では2020年に新型コロナウイルス拡大の影響を受けて全公演が中止となり、3年ぶりに待望の日本初上演を果たします。
日本版の演出を務めるのは、鴻上尚史氏。ロックを愛する破天荒な熱血バンドマンのデューイ・フィン役は、西川貴教さんと柿澤勇人さんがWキャストで演じます。デューイが臨時教師となる名門校の校長ロザリー・マリンズ役には濱田めぐみさん。デューイの親友ネッド・シュニーブリー役には梶 裕貴さんと太田基裕さん(Wキャスト)、ネッドの恋人パティ・ディ・マルコ役に、はいだしょうこさんと宮澤佐江さん(Wキャスト)という個性豊かなキャスト陣が集結しました。バンドメンバーとなる生徒役は、大規模なオーディションを経て選ばれた24名の次世代のスター達が務めます。
THEATER GIRLは、Wキャストでデューイを演じる西川貴教さんと柿澤勇人さんにインタビュー。前編では3年ぶりに上演が決まった今の思いやそれぞれのデューイ像について語っていただきました。
今この作品をできることに意味がある
――新型コロナウイルス感染拡大によって全公演中止となった2020年から3年が経ちましたが、改めて本作へ挑む心境はいかがでしょうか。
西川：お仕事をさせていただいていると、 思いもよらないことが起きることもあります。でも、まさか感染症で色んなことがストップするなんて想像もしていなかったですよね。天変地異が起こったときには、チャリティーをやらせていただく機会もありましたけど、この感染症に至っては、手も足も出せなくて。泣く泣く諦めざるを得なかったんです。それから3年経って、やっとこういう風に、作品に携わることができて本当に良かったなと思っています。
僕はたまたま、ブロードウェイでこの作品を観ているんです。この作品が日本で上演されることになって、誰がデューイをやるんだろうなと思っていたのですが、まさかこの2人で演じることになるとは、僕も含めて誰も思っていなかったんじゃないでしょうか。ただ、色々なことを取り戻しつつある世の中で、この作品ができる意味はすごくあるのかなって。3年延期になったことが、良いことではなかったですけれど、悪いことでもなかったと思えたらいいですよね。
柿澤：僕は2020年に上演を予定していた舞台が2本中止になってしまったんです。この『スクールオブロック』は稽古することもなく終わってしまって。当時一緒にやっていた生徒役の子達の中には、やれたはずのチャンスを失くした子も沢山いると思うんですよね。なので、その思いは引き継いでいかなきゃいけないなと思っています。 その一方で、今回新たに入った才能溢れる子たちと一緒に出来ることも非常に楽しみです。
今回、僕たちが演じるデューイはとんでもなくセリフの分量が多いんだなということに先日改めて気づかされました。2020年のときには台本の製本もされていなかったので、まだ全貌がわかっていなかったのもあって。もちろん映画は見ていますが、舞台でどうやるんだろうと考えると、楽しみでもあり怖さもあります。まずはセリフを覚えないといけないですし、デューイという役はテンションも高くいかないといけません！ 1公演で何キロか落ちるんじゃないかな（笑）。
誰が観ても何かを持ち帰ってもらえるような作品
――生徒役のキャストによる生バンドでの歌唱シーンなど、様々な見どころのある本作ですが、どのような部分に魅力を感じていますか。
西川：誰しも夢を叶えたいと思っていると思います。でも誰かの夢が叶った分、誰かの夢は叶わなかったということでもあると思うんです。もしかしたら僕らは、表舞台に立たせていただいているので、夢が叶った人だと思われやすいかもしれません。でもそんな僕らにも、悔しかったり、できなかったりしたこともたくさんあって。それでも今ここにいられるということは、誰かができなかった夢を、叶えさせてもらえているのかもしれない。
この作品はそんな風に、登場人物を通して、皆さんの中にある気持ちに寄り添ってくれる誰かが見つかるんじゃないかなって。なので、誰が一番自分に近いのか、探してもらうのも面白いんじゃないかなと思います。
柿澤：老若男女、誰が観ても楽しめる作品だと思います。子供たちが観たら、同じ年代の子達が演奏して歌っている姿は刺激になると思いますし。
一方で、かつて夢を追いかけていた大人たちから見て懐かしく思える部分もあるのではないかと。音楽の話で言っても、最近のバンドや楽曲ではなく少し昔の楽曲ばかりなので、懐かしく感じるんじゃないかなと思います。映画を観ていなくても本当にわかりやすいストーリーなので、誰が観ても何かを必ず持ち帰ってもらえる作品になっています。
――お二人はWキャストでデューイ役を演じられますが、それぞれどのようなデューイ像を作っていこうと考えられていますか。
西川：（取材時は）まだそんなところまでたどり着いていないかもしれませんが（笑）。カッキー（柿澤）が少し先に稽古に入り、 僕が追いかけるみたいに入ったんですが、バラバラに進行していて。鴻上さんに「向こうはどんな感じですか」と聞いたら「心配しなくていいよ。全然違うから」と言われました。そこから顔合わせして、僕と同じセリフをカッキーが読んだときに、「なるほど、こういう感じなんだ」と思いましたね。例えると、同じ間取りのはずなのに、 お宅はこういう内装にされているんですねという感じで（笑）。すごく新鮮で面白い感覚でした。
――柿澤さんの、特にここがすごいと感じた部分はありますか。
西川：デューイは良い意味で自分本位な部分があるので、自分が思ったことをそのまま口に出してしまったり、空気が読めなかったりするところがあって。その感覚をどう出していけば良いか悩んでいたんです。カッキーは普段はそういう人じゃないと思うんですけど、そこを振り切ってデューイにリーチしていたので、すごいと感じました。そこは皆さん、ぜひ柿澤くんの出演回でご覧ください（笑）。
柿澤：自分の中のデューイ像は、まだあまり出来上がっていないですね（取材時）。ただ、映画のような感じは100パーセント出せないと思っていて。まず体型が違いますし（笑）。
西川：そう、2人ともね（笑）。
柿澤：でもデューイは別に太っていればいい訳ではなく、食べることが好きで、音楽以外は何もできないからああいう風になったという解釈ができますよね。それよりも、自分の夢をずっと諦めずに持っていて、それが客観的に見るとダサかったりもするんですけど、そこを突っ走っている姿がチャーミングに見えたりもする。そういった感じで観てもらえたらいいなと思います。自分が演じる上では、リミットを外してアクセルを強く踏んで、とにかくがむしゃらにやるしかないなと思っています。
――西川さんが演じるデューイの素敵だなと感じるのはどんなところでしょうか？
柿澤：日本でデューイをそのままできるのは、西川さんしかいないと思っています。
西川：いやいや、そんなことないよ（笑）。
柿澤：僕はこの作品のためにギターを習ったんですけど、西川さんはずっと芸能界のトップを走り続けていて、アーティストとしても引っ張っていらっしゃる方なので。 ギターを持って何フレーズか弾くだけでも、姿形がそのまんま日本のデューイだなと思います。そこを真似して形にできるなら、いくらでもパクりたいんですけど(笑)、そういうのって何十年もやってこられたからこそ出せるものだと思うので、僕はひたすら一生懸命練習するしかないなという感じですね。
取材・文：THEATER GIRL編集部
Photo：梁瀬玉実
公演概要
ミュージカル『スクールオブロック』
2023年8月17日(木)～9月18日(月祝)
東京建物Brillia HALL
音楽：アンドリュー・ロイド＝ウェバー
脚本：ジュリアン・フェロウズ
日本版演出・上演台本：鴻上尚史
デューイ・フィン役：西川貴教／柿澤勇人（Wキャスト）
ロザリー・マリンズ役：濱田めぐみ
ネッド・シュニーブリー役：梶 裕貴／太田基裕（Wキャスト）
パティ・ディ・マルコ役：はいだしょうこ※／宮澤佐江（Wキャスト）
阿部 裕、神田恭兵、栗山絵美、多岐川装子、俵 和也、丹宗立峰、ダンドイ舞莉花、中西勝之、西野 誠、湊 陽奈、安福 毅 (五十音順)
スウィング：AYAKA、森内翔大
※はいだしょうこ：ロザリー・マリンズ役カバー
《チーム・コード*》
小川実之助：ローレンス（キーボード）
桑原広佳：マーシー（コーラス）
飛田理彩子：ケイティ（ベース）
中込佑協：メイソン（技術：ステージエンジニア）
中嶋モモ：フレディ（ドラム）
平岡幹基：ジェイムズ（警備：セキュリティ）
前田武蔵：ビリー（衣裳：スタイリスト）
真木奏音：ソフィー（ローディー：楽器セッティング・運搬）
三上さくら：トミカ（ボーカル）
三宅音太朗：ザック（ギター）
宮﨑南帆：ショネル（コーラス）
山崎 杏：サマー（マネージャー）
《チーム・ビート*》
大久保実生：トミカ（ボーカル）
加藤悠愛：ソフィー（ローディー：楽器セッティング・運搬）
木村律花：ショネル（コーラス）
熊田たまき：ローレンス（キーボード）
後藤日向：ザック（ギター）
佐藤 凌：ビリー（衣裳：スタイリスト）
シーセンきあら：マーシー（コーラス）
中川陽葵：サマー（マネージャー）
三宅音寧：ケイティ（ベース）
宮島伊智：ジェイムズ（警備：セキュリティ）
村井道奏：フレディ（ドラム）
屋鋪琥三郎：メイソン（技術：ステージエンジニア）
*五十音順
チケット：
S席：平日13,500円／土日祝14,500円
A席：平日9,500円／土日祝10,500円
B席：平日4,500円／土日祝5,500円（全席指定・税込）
