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舞台『千と千尋の神隠し』製作会見レポート!「日本の方にも世界の方にも楽しんでいただけたら」

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宮﨑駿監督による不朽の名作『千と千尋の神隠し』を原作に、2022 年ジョン・ケアード翻案・演出によって世界で初めて舞台化し大評判となった本作。

再演となる今回は3 月11日から東京・帝国劇場でスタートし、名古屋・御園座、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru での上演が決定。さらに、4月から8月にかけて英国・ウェストエンドにてロンドン・コロシアムでの初の海外公演も実現する。

まもなく迎える初日を控え、2月29日に製作会見が行われた。千尋役の橋本環奈、上白石萌音、川栄李奈、福地桃子、ハク役の醍醐虎汰朗、三浦宏規、増子敦貴、カオナシ役の小尻健太、山野光、中川賢、リン/千尋の母役の妃海風、華優希、実咲凜音、釜爺役の田口トモロヲ、宮崎吐夢、湯婆婆/銭婆役の夏木マリ、羽野晶紀、春風ひとみ、ジョン・ケアード(翻案・演出)、今井麻緒子(共同翻案)、松岡宏泰(東宝・代表取締役社長)、イアン・ギリー(PWプロダクションズ・最高経営責任者)が登壇した。本記事では、その様子をレポートする。

※都合により、カオナシ役・森山開次、釜爺役・橋本さとし、湯婆婆/銭婆役・朴璐美は欠席。

自身の挨拶とともに、作品への愛があふれるキャストとスタッフ

まずは、東宝・代表取締役社長である松岡宏泰が「宮﨑駿監督が手がけられたこの原作は、まさに奇跡のような作品。これを舞台に再現するのは壮大なチャレンジであり、もしかしたら無謀だと思われてしまうかもしれません。最初に舞台化すると聞いたとき、私も大変驚きました」と当時の心境を明かし、コロナ禍という過酷な状況でありながら大成功した初演もまさに“奇跡のような舞台”であったと振り返った。さらに「本作は、我々の姿勢を体現する東宝グループとして最も重要なプロジェクトの一つ。期待していただき、応援していただき、見守っていただき、これから千尋がどんなふうに成長するのか、皆さんで見届けていただけたらと思います」と言葉に力を込めた。

翻案・演出を務めるジョン・ケアードは「宮﨑駿さんは素晴らしい物語の語り部であり、アニメーターであるけれども、それと同時に日本の歴史家でもあると思います。今回、日本の文化をイギリスの観客と分かち合えることがうれしい」と述べた。

共同翻案の今井麻緒子は「ここに立つと2年前の記者会見を思い出します。今回も新たな困難はあると思いますが、みんなで乗り越えられる。そう思わせてくれる宮﨑駿さんの作品だと思います」と語った。

PWプロダクションズ・最高経営責任者のイアン・ギリーは、「2年前にジョンさんにこの作品のことを聞いて、すぐに札幌公演を観に行きました。そのとき、この公演を必ずロンドンに持ってこなければいけないと感じたのを憶えている。今回ロンドンの一番大きい劇場、ロンドン・コロシアムを抑え、すでに売れ行きが記録にないほどのセールスとなっています。ロンドンの劇場関係者でも非常に話題になっている作品です」と、期待感をあらわにした。

続いて、キャスト陣が挨拶とともに、本作への想いをそれぞれ語った。

千尋役

橋本環奈「初演のときから、本作は私にとってかけがえのない作品。今年で25歳になったんですけど、千尋は10歳。年齢を重ねるごとにどう演じようかと思っていましたが、遠ざかるわけではなく、逆に10歳の子の気持ちが分かったり寄り添えたりするのを稽古場で感じて驚いています。とにかくお客さまに早く観ていただきたいし、どれだけ期待をしていただいてもそれを裏切らない作品になっていると思います」

上白石萌音「どの会場でもこの素朴で素晴らしいストーリーを信じ、それを伝えることに徹して大切に千尋を演じていきたいです。キャストも2倍に増え、頼もしいスイングさんも加わって、より本作の世界が豊かに自由になっているのを日々肌で感じています。毎日新鮮な気持ちで柔らかく誠実に千尋として生きていければと思います」

川栄李奈「私は初演のときに萌音ちゃんの千尋を帝国劇場に観に行って、幕が開いた瞬間に『本物の千尋がいる』と、鳥肌が立ったのを今でも憶えています。その作品に自分が参加できるとは全く思ってもいなかったので、今こうしてここに立っていることも本当にうれしく思っています」

福地桃子「現在、稽古期間中ではあるのですが、千尋として自分が参加していることがまだ不思議でたまらない気持ちです。今日はいつもお稽古を一緒に頑張っている皆さんとここに立たせてもらっているということで、不安よりは『楽しみだな』という気持ちです。『千と千尋の神隠し』という作品を舞台として皆さんにお届けできることをとても楽しみにしています」

ハク役

醍醐虎汰朗「前回、そして前々回に引き続き、こうしてハク役を務められること、そして千尋の皆さんの小さくて大きい背中を間近で見られること、とても誇りに思います。今回も胸を張って精一杯務めていきたいと思います」

三浦宏規「前回、名古屋公演で卒業宣言をさせてもらったのですが、いろんな奇跡が重なりまして再び出演できることになりました。日本のオリジナル作品を海外に持っていくことがずっと夢でした。この素晴らしい作品で実現できてうれしいです」

増子敦貴(GENIC)「今年2024年は辰年なんですけど、実は僕は年男でして、それに加えて宮﨑駿さんと全く同じ誕生日という、運命を感じています。ハク役に選んでいただいたのは、そういう運命だったのかなと思うような……いや、思う所存です。龍のように舞い上がって……舞い上がる(笑)? とにかく全力で頑張ります! よろしくお願いします」

カオナシ役

小尻健太「人の心を持ちながらも、人ではないカオナシ。先輩の森山開次さんはじめ、カオナシのチームで話し合いながら工夫して稽古に取り組んでいます。カオナシのいろんな面を見ていただけたらと思います」

中川賢「小さい頃から憧れだったアニメやジブリの世界に今自分がこうして立っているというのが不思議で、まだ信じられないのですが頑張ります」

山野光「全員で作っているという意識がすごく強い作品です。カオナシの思いや、千尋にとってのカオナシというものを誠心誠意、大切にしながら演じていけたらと思います」

リン/千尋の母

妃海風「毎日稽古を重ねていく中で、この作品やここにいる皆さんへの愛、リスペクトが日に日に増していき、家に帰っても興奮が収まらない状態です。その興奮を情熱に変えて、舞台で爆発させたいと思います。この気持ちを日本の皆さま、そしてロンドンにも持っていくぞという気持ちで頑張ります」

華優希「このカンパニーに入るとき『とんでもないところに来てしまった』と感じました。素晴らしいキャストの方々と一緒に、心を込めて皆さまにこの作品をお届けしたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします」

実咲凜音「この作品に参加できること、ここに立たせていただいていること、自分は本当に幸運だなと思っています。もうすぐ初日を迎えるのですが、自分にしか出せない味のあるリン、そして千尋のお母さんを演じられたらと思っています。エネルギッシュに頑張ります」

釜爺役

田口トモロヲ「こういう形で、国際的にロングラン上演になるとは夢にも思っていなかったので本当に光栄に感じています。『千と千尋』メンバーには本当に感謝したいです。あとは楽しみたいと思います」

宮崎吐夢「私は帝国劇場も初めて、ロンドン公演も初めて、ダブルキャストも初めて、東宝さんの制作する舞台に出演させていただくのも初めて。初めてづくしなので初々しい“もぎたて”のかわいい釜爺をお届けできたらと思っています」

湯婆婆/銭婆

羽野晶紀「(銭婆の)『魔法で作ったんじゃ何にもならないからね』という台詞があります。特にこの舞台は夢のようなストーリーではありますが、現場ではみんなが手探りで手作りで作っています。その奇跡を劇場でご覧いただけたらうれしいです」

春風ひとみ「30年ぐらい前に、夏木マリさんと日本で初めて行われたジョン・ケアードさんのワークショップに参加して、まだ私はそのとき若輩者でしたが、その休み時間にマリさんが『あなた、きっとお芝居が必要な人になれる』と言ってくださいました。今日マリさんの顔を見たら、それを思い出してしまって……。従業員をこよなく愛し、ときにはハチャメチャになっちゃう湯婆婆を全力でお届けしたいと思います」

夏木マリ「映画、初演を通じて、20数年も一つの役をやらせていただけるということが、とても幸せだなと思っておりますし、本当に頑張らなければいけないなと思っているところです。“従業員”が増えました。しっかり働きますのでどうぞよろしくお願いいたします」

また、夏木の代読によってスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーのコメントも発表された。以下で紹介する。

初演から早や2年、『千尋』が帰ってきました。
今年、2024 年は『甲辰』(きのえたつ)の年に当たります。
甲辰には、『新しいことに挑戦して成功する』という意味があるそうです。
今回、千尋を演じる川栄李奈さん、福地桃子さんをはじめ新たなキャストを迎え、演劇の本場ロンドンでも公演が予定されているとのこと。
単なる再演ではなく、まさに新しいことにチャレンジし続ける『千尋』。
私も楽しみにしています。皆さまも是非お楽しみください。

まさかの無茶振りに戸惑いながらも即興で対応

舞台化にあたって何を大事にしたか、ロンドンでこの作品のどのような点が愛されると考えているかを聞かれ、ケアードは「一番大事なのはストーリーをどう明確に伝えるかということ。宮﨑駿さんの作品は、良い人と悪い人に分かれているわけではなく、誰もが良い面と悪い面を持っている。これは、人間の世界が複雑でニュアンスに満ちていることの反映だと思います。釜爺が言う『愛だ、愛』。そこに尽きると思います」と作品のもつメッセージ性について語った。

初演から千尋を演じている橋本と上白石には、この作品がキャリアの中でどのような位置付けになっているか問われ、「一言で位置付けを言うのは難しいけれど、役者人生の中で絶対に何十年経っても忘れられない役です」(橋本)、「私にとっても本当に大切な作品で、他のことをしていても千尋がいるという感覚がある。街で10歳ぐらいの子を見かけるとつい目で追ってしまって、未だに千尋のために子供を研究している自分がいます」(上白石)とそれぞれコメント。

また、自身の演じる役についてキャッチフレーズを交えて一言で紹介してほしいというリクエストが入った。キャストらはまさかの展開に驚きつつも即興で答え、会場からは笑いが起こる場面も。コメントは以下の通り。

醍醐「キレキレなハクだと思います」

三浦「自分で言うのもなんですが、幻のハクです」

増子「僕は東北出身なんですけど、色白で消えそうと言われるので、消えそうなハクで」

小尻「先に消えそうと言われちゃったので(笑)、いるかいないか分からないアンニュイなカオナシで」

中川「キュートなカオナシです」

山野「真面目なカオナシをやらせてもらっています」

妃海「リン役はたまたまなのか宝塚娘役出身3人がそろったので、宝塚は『清く高く美しく』ということで、清いリン」

華「正しいリンです」

実咲「美しいリンです」

田口「先ほど、(宮崎が)もぎたての釜爺と言っていたので、僕はその反対で古々しい。もうすでに落ちてしまったオールドな釜爺で行きたいと思います」

宮崎「不安な釜爺です」

羽野「湯婆婆はたくさんの段取りをいただきまして、ふわふわしていて、本番で何が出るかわからないので『何が出るかわからない湯婆婆』でお願いいたします」

春風「忘れられているかもしれませんが、実は私も宝塚出身なので、『清く正しく美しく……迷いある』という感じにしておきましょうか。まだ迷宮の中を歩いている感じの湯婆婆で」

千尋役4人による囲み取材「最高のカンパニーになれた」

その後、千尋役4名による囲み取材が行われた。

オーディションを経て新・千尋となった川栄と福地。役に受かったときの気持ちを聞かれ、川栄は「オーディション会場でジョンさんが優しく迎えてくださった。落ちたとしても、この出会い自体が自分の中で大きなものになったので、ここはもう運に任せようと思っていました。実際に受かったときは、嬉しいと同時に不安が大きかったです。少しでもそれを解消できるように、二人からたくさん教わろうと思っていました」とコメント。福地は「オーディションを受けるときに映像で作品を拝見して、この舞台のエネルギーや熱量、力強さを知れました。結果がどうであれ機会をいただけたなら挑戦するしかないという気持ちでした。実際に千尋に決まったときは驚きました」と話した。

先ほどのキャッチフレーズで自身の演じる役を紹介するくだりについても触れられ、それぞれどんな千尋なのかトークが繰り広げられた。橋本は「直感型の千尋」、上白石は「周りをよく感じている千尋。また、怪我しない転び方とかも上手で技術力がすごい千尋でもある」、川栄は「せっかちな千尋」、福地は「のんびりな千尋」と評されていた。

最後に、上白石が「8月末まで長い旅が待っていて、今までぎゅっと稽古してきたカンパニーが海を越えて散り散りになるので寂しさがあるのですが、何にも代えがたい絆や心強さ、お互いの愛が育った稽古期間だったので、その気持ちがあれば場所は関係なく一緒にやっていける気がして心強いです」とコメントし、橋本が「みんながこの作品に愛を持って作っている。その熱量を生で感じられる舞台は、一日一日そのときにしか出せない情熱やお客さまの反応によっても変わると思うので、何回観ても楽しめるはずです。最高のカンパニーになれていると思うので、良い舞台をお届けできるという自信を持って、日本の方にも世界の方にも楽しんでいただけたらと思っています」と締めくくり、会見は幕を閉じた。

文・撮影:矢内あや

公演概要

舞台『千と千尋の神隠し』

公演日程:
2024 年3月 11 日(月)~30 日(土) 【東京】帝国劇場

2024 年4月 30 日(火)~8月 24 日(土) 【ロンドン】ロンドン・コロシアム

2024 年4月 【名古屋】御園座
2024 年4~5月 【福岡】博多座
2024 年5~6月 【大阪】梅田芸術劇場メインホール
2024 年6月 【北海道】札幌文化芸術劇場 hitaru

キャスト:
千尋 橋本環奈/上白石萌音/川栄李奈/福地桃子
ハク 醍醐虎汰朗/三浦宏規/増子敦貴(GENIC)
カオナシ 森山開次/小㞍健太/山野 光/中川 賢
リン・千尋の母 妃海 風/華 優希/実咲凜音
釜爺 田口トモロヲ/橋本さとし/宮崎吐夢
湯婆婆・銭婆 夏木マリ/朴 璐美/羽野晶紀/春風ひとみ

兄役・千尋の父 大澄賢也/堀部圭亮
父役 吉村 直/伊藤俊彦
青蛙 おばたのお兄さん/元木聖也

頭 五十嵐結也/奥山ばらば
坊 武者真由/坂口杏奈

原作:宮﨑 駿

翻案:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子

オリジナルスコア:久石 譲
音楽スーパーヴァイザー・オーケストレーション・編曲:ブラッド・ハーク
音楽スーパーヴァイザー補・オーケストレーション・Ableton プログラミング:コナー・キーラン
美術:ジョン・ボウサー
パペットデザイン・ディレクション:トビー・オリエ
振付・ステージング:井手茂太
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
映像:栗山聡之
音楽監督・指揮:深澤恵梨香
舞台監督:北條 孝
演出補佐:今井麻緒子
演出補:永井 誠
演出助手:小貫流星
プロデューサー:尾木晴佳
演出:ジョン・ケアード

協力:スタジオジブリ
製作:東宝株式会

日本公演公式ホームページ:https://www.tohostage.com/spirited_away/

ロンドン公演公式ホームページ:https://www.spiritedawayuk.com/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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