鈴木拡樹、安井謙太郎、梅津瑞樹ら出演。舞台『死神遣いの事件帖終（ファイナル）』開幕！「たくさんの方に愛していただきファイナルまでたどり着くことができました」

2025.08.08

REPORT

2025年8月7日（木）に舞台『死神遣いの事件帖終（ファイナル）』の東京公演がサンシャイン劇場にて初日を迎えた。

ムービー（映画）とステージ（演劇）の融合を目指すメディアミックスプロジェクト【東映ムビ×ステ】シリーズの第二弾作品として2020年に映画『死神遣いの事件帖‐傀儡夜曲‐』、舞台『死神遣いの事件帖‐鎮魂侠曲‐』の2作が制作された人気シリーズは、今作でフィナーレを迎える。

主役の死神遣い・久坂幻士郎役に鈴木拡樹。幻士郎の相棒の死神・十蘭を演じるのは、5人組ボーイズグループ・7ORDERのリーダー安井謙太郎。

また、舞台に先駆けて6月に公開された映画『死神遣いの事件帖終（ファイナル）』で登場した最恐の死神・無限狼を演じた梅津瑞樹と、同じく映画から登場した新死神・弾正を森崎大祐、呪樹を田淵累生が出演するほか、本作には幻士郎の幼馴染で死神遣いの鉄斎役で鈴木裕樹、十蘭の従兄弟の死神・慧蘭役で田口涼が初登場！

初日を前に行われた囲み取材には、鈴木拡樹、安井謙太郎、梅津瑞樹、鈴木裕樹、過去２作品の舞台シリーズでも脚本・演出を担当してきた毛利亘宏が登壇。

現在の心境や本作の見どころ、稽古場でのエピソードのほか、ファイナルに向けての想いをたっぷりと語ってくれた。

見どころ満載＆“お祭り感”があるシーンが多いので、お客さんと一体になって笑って楽しい時間を過ごせたら――

まず最初に、初日を迎える心境を聞かれた鈴木拡樹が「舞台『死神遣いの事件帖終』が、本当のファイナルを迎えることになりました。このシリーズ自体、１話単体で観て楽しめるというのがコンセプトになっているので、今作は先に公開された映画の流れを汲んではいるものの、1話完結という形で楽しんでもらえるものになっています。結構“お祭り感”があるシーンも多いので、そう意味でもお客さんと一体になって笑って過ごせる時間を提供出来たらなと考えています」と笑顔で挨拶。

十蘭役の安井謙太郎は過去作を振り返り「約５年間続いたシリーズのファイナルで、ついに舞台上で幻士郎と十蘭が並ぶことが出来ました！　実は今作が舞台上での初共演になるんです。初日の幕が開くのを、今ワクワクしながら待っています」と語った後、唐突に「稽古場が駅から遠くて、夏の時期なので行き帰りだけでこんがり焼けてしまったので、初日は死神らしくちょっと白めに塗って迎えたいと思います、よろしくお願いします！」と、茶目っ気たっぷりなコメントで場を和ませた。

先の映画に引き続き出演する梅津瑞樹だが、本作では無限狼に瓜二つの礼儀正しい死神・遊限狼（ゆうげんろう）役を演じる。

「遊限狼は、すごくポップでファニーなやつ。ある意味、こんな”しっかりした姿”を観られるのは、この会見の場が最後かも（笑）」と不敵な笑みでニヤリ。

また幻士郎の幼馴染の死神遣い・鉄斎役の鈴木裕樹は、「先ほど安井さんもおっしゃっていましたけど、猛暑の中を駅から稽古場に行くまでに汗をかき、稽古場でも汗をかき、本当に頑張って稽古してまいりました。この汗と熱量は舞台上でも飛び散るのではないかと思っております。演出の毛利さんから「面白い作品になっている」と言っていただいたので、その自信を胸に本番を迎えたいと思っております！」と、やや緊張した表情を見せる一方で、W「すずきひろき」の初共演については「今回のお話をいただいた時に、本当にうれしくて、「出来るなら、鈴木拡樹さんとたくさん絡める役にしてほしい！」とお伝えしたら、幼馴染の役をいただきました！　劇中での拡樹さんとの関係性も、ぜひ楽しみにしていて欲しいです」と大きな目をさらに見開きキラキラと輝かせていたのが印象的。

「実際、ステージ上での絡みはどうですか？」という司会者のツッコミに、「楽しくてしょうがないですね。他人とは思えない（笑）」と語る（鈴木）拡樹に、（鈴木）裕樹はちょっぴり照れながらも「わははは！」と大爆笑。喜びを爆発させていた。

一方、脚本・演出の毛利はシリーズ最初の頃を振り返り「コロナ禍が始まったばっかりのタイミングで演劇が出来るのか、出来ないのかという不安の中、「それでもやっていくぞ！」と最初に狼煙（のろし）を挙げたのが本作の１作目だったと覚えております。それから５年の時を経て今作がファイナル。コロナ禍のひとつの終わりを告げるような作品であると同時に、次の時代の扉を開く作品に出来たらなと思っております」と穏やかな口調の中にも力強さが込められた言葉に、キャスト一同大きくうなづいていた。

続いて、それぞれが思う見どころ・注目してほしいポイントを質問され、

拡樹「皆さんに楽しんでもらいたいがコンセプトなので、いろんなことをしているんですが、分かりやすいのが、「殺陣」と「ダンス」。みんなが動いて展開していく作品なので、汗をかいていない状態を観られるのは冒頭の登場シーンくらい。そんな臨場感を楽しんでもらえたらなと思います」

安井「見どころが絞れないくらいたくさんあるのが見どころ。まさに”毛利さん節”というか、本当にエンターテインメントな舞台です。休憩無しの2時間弱という、舞台にしては短めのステージの中にいろんな要素が詰め込まれていて、通し稽古をやった時に、「え？　もう終わり？」っていうくらい早く感じたんですよ。今はショートが流行っている時代ですけど、こんなに見どころがギュッと詰まっている魅力的な作品はほかにないんじゃないかな」

梅津「さっきも言いましたが、自分が見ていただきたいのは遊限狼のポップな姿。いい意味で、いろんな方を裏切れたらいいなと思っています。とにかく今は「早く見ていただきたい！」という想いが強いです」

裕樹「本人からは言いずらいと思うので僕が言いますが、この３人（拡樹、安井、梅津）の殺陣が本当にすごいんです‼　多分、皆さん今まで観たことないような殺陣を披露すると思うので、ぜひ注目していただけたらと思います」

毛利「１作目の舞台は十蘭役の安井さんしかいない、２作目の舞台は幻士郎役の鈴木（拡樹）さんしかいない。「バディ（相棒）ものなのになぜ？」と皆さん思っていたでしょうが、ようやく念願かなって３作目で二人が相まみえることになりました（笑）。ようやく舞台上で二人がバチバチやっている姿を見ることになりますが、この５年間でお二人とも役者としていろんな引き出しを増やして本作に臨んでいただいてるというのが実感できました。キャストの皆さんそれぞれの場で己を鍛え、成長し、出会ったこの場所で最高のものを作るという意気込みに溢れた稽古場だったと思っております。皆様にもその姿をぜひ見届けていただけたらと思っております」

拡樹「物語の構成がよくできているのはもちろんですが、役者陣もアグレッシブの毛利さんに果敢に挑み、それぞれのシーンを“生”感のあるものとして膨らませることが出来るのかトライすることが出来る座組でした。僕自身、とても刺激も受けましたし、その気持ちが物づくりのうえですごく大事なことなので、そういう意味でもすごく心強い共演者が揃った座組です。本番中もお客様に向かって様々な「挑戦」を繰り広げるだろうと思うので、ぜひそういう刺激を受け取っていただきたいですね」

安井「笑い声が絶えない稽古場だったなという印象です。拡樹くんとのシーンでは５年間やってきた歴史みたいなものをすごく感じることがあったし、新しく参加するキャストの皆さんの熱量がすごくて圧倒されました。もう初日からギア全開で、本当に笑っちゃうくらい……なんかすごく楽しかったですね。今までの『しにつか』の歴史もありつつ、今作から新たに入って来た方たちのエネルギーやパワーによって、さらに何段階も作品が面白くなっているのが毎日感じられるような稽古場でした。本番中もお客様を前にしてさらに稽古場とは違ったエネルギーが出ると思います。それが今からすごく楽しみです！」

皆さん、作品への熱い想いは尽きない様子だが、そろそろ時間が迫ってきたため最後に幻士郎役の鈴木拡樹から、本作を楽しみにしている皆様に挨拶の言葉が寄せられ会見は幕となった。

「シリーズを通してたくさんの方に愛していただき、『死神遣いの事件帖』シリーズはファイナルまでたどり着くことができました。本作でも誠心誠意しっかりと演じ切って、今まで応援してくださった方や今回初めて観てくださる方が「過去作も振り返って観てみたい」と思っていただけるような作品に仕上げたいと思っております。これからも末永く『死神遣いの事件帖』を愛していただけるように締めくくります！　最後までよろしくお願いいたします‼」

文：近藤明子

ゲネプロオフィシャルレポート

観客の期待が高まる中、いよいよ開演。物語は、冥界の王となった十蘭が、人間と死神が共生できる世界をつくるために奮闘する姿から幕を開ける。十蘭の近習・弾正（森崎大祐）や乳母の鵺灯（ザンヨウコ）は十蘭を応援するが、そのやり方を快く思わない死神もいるようで、冥界に不穏な気配が漂いはじめる。

一方、幻士郎のもとにも新たな事件の予感が。博打三昧の毎日を送る幻士郎の前に時雨（宮原華音）という美女が現れる。時雨は、幻士郎の幼なじみ・鉄斎の妹であり、兄が一人前の死神遣いになれるよう力を貸してほしいと幻士郎に頼み込む。

人間界と冥界。それぞれの世界を邪悪な意志が飲み込まんとするとき、一度は別れた幻士郎と十蘭の運命が、今ふたたび交差する。

本作の魅力は、痛快かつ華やかな“お祭り感”だ。ダンスや殺陣といった視覚的に楽しめる要素がふんだんに盛り込まれているだけでなく、クスッと笑えるギャグも満載で、肩肘張らずに楽しめる。特に序盤に展開される「飛脚レース」は、演劇らしいワクワク感たっぷり。神輿行列を眺めるような感覚で目を輝かせていたら、気づけば「しにつか」ワールドに引き込まれている。

もう一つの魅力が、完璧な人間（死神）は一人もいないというところだ。今回から初登場の鉄斎は口では大きなことを言うが能力は人並み以下のヘタレキャラ。口癖は「明日から本気出す」。ある意味、幻士郎が十蘭に出会わなければ、こうなっていたかもしれないというifのキャラクターだ。そんな鉄斎が、なりたい自分になろうと奮い立つ姿に胸が熱くなる。

鉄斎だけではない。弾正はもちろん、呪樹（田淵累生）や慧蘭（田口涼）にも欠けたところがあって、誰かを羨んだり、必要以上に自分を大きく見せようとして姑息に立ち回ったり、死神のくせに人間以上に人間らしい。その最たる存在が、十蘭だろう。なんでも一人で抱え込んで、意地を張ってばかり。すれ違ったり、空回ったりしながら、でもなりたい自分をあきらめない彼らの姿に観客は共感を覚え、愛着を抱く。多彩な登場人物を通じて描かれる人間臭さこそが、「しにつか」が愛され続けた理由の一つだ。

そして、そんな登場人物たちの中心に立つ久坂幻士郎のカラッとした明るさが、「しにつか」のカラーを決定づけている。今回も、歌舞伎風に見得を切ったり、遊び心いっぱいに舞台上を躍動。幻士郎がいるだけで、元気になれる。幻士郎を見ていると、優しい気持ちになれる。幻士郎のおバカだけど情に厚いところに惹かれて、十蘭も、観客もここまで来たのだという感慨が胸に広がる。

そんな幻士郎と十蘭の最後の晴れ舞台。最恐の敵・無限狼に二人が立ち向かう姿が、本作最大の見どころだ。3作目にして舞台では初共演となる鈴木拡樹と安井謙太郎の、舞台ならではの共闘シーンに、きっと多くのファンが「これが見たかった！」と喝采をあげるはず。

強大な力を誇る無限狼に追いつめられる幻士郎と十蘭。勝算は薄いかもしれない。でも、勝ち目のない大勝負に挑んでこそ、博打好きの幻士郎。日の本の安寧を賭けた大博打の行方をぜひ劇場で見届けてほしい。

舞台『死神遣いの事件帖終（ファイナル）』東京公演は、8月17日(日)まで東京・サンシャイン劇場で上演。

その後は、福岡公演が8月21日(木) 福岡・福岡サンパレス、大阪公演が8月30日(土)・8月31日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、石川公演が9月5日(金)・9月6日(土) 石川・石川県小松市團十郎芸術劇場うらら大ホールを巡り、9月13日(土)～9月15日(月・祝) 京都・京都劇場で上演される京都公演で大千秋楽を迎える。