• HOME
  • topic
  • REPORT
  • ミュージカル『キンキーブーツ』開幕!「この作品が愛される理由は、「我々の物語」だから」

ミュージカル『キンキーブーツ』開幕!「この作品が愛される理由は、「我々の物語」だから」

REPORT

ミュージカル『キンキーブーツ』が4月27日(日)に東急シアターオーブにて開幕した。

2013年、トニー賞で最多となる13部門にノミネートされ、「作品賞」「主演男優賞」「オリジナル楽曲賞」「振付賞」「編曲賞」「衣装デザイン賞」の6部門を受賞した大ヒットブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』。

経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子チャーリーがドラァグクイーンのローラに出会い、差別や偏見を捨て、ドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生する過程が描かれた同名イギリス映画(2005年公開)をミュージカル化した本作は、シンディ・ローパーのパワフルで最高に魅力的な書き下ろし楽曲の数々が大きな話題を集め、今なお人気を集める大ヒット作となっている。

日本では2016年に初演、2019年、2022年に再演され、チケットは全公演即日SOLD OUTの大盛況!

4回目の上演となる今回は、メインキャストがほぼ一新され、オーディションで選ばれた次代の日本ミュージカルシーンを担う実力派俳優が集結した‼

開幕前日の4月26日(土)にはチャーリー・プライス役の東啓介/有澤樟太郎、ローラ役の甲斐翔真/松下優也と演出・振付:ジェリー・ミッチェル氏が登壇する囲み会見が行われた。

初日を前に心境を聞かれ、ジェリー・ミッチェル氏は「最高の気分です! とてもワクワクしておりますし、自信に満ち溢れています。キャストの皆さん、それぞれ素敵です」と満面の笑顔を見せる。

チャーリー役の東は「通し稽古をたくさんさせていただいて、ようやく皆さんの前でこの新しいメンバーの『キンキーブーツ』をお見せできることをすごく楽しみにしております」と自信を覗かせる。

同じくチャーリーを演じる有澤は「クリエイター&スタッフの皆さんに『キンキーブーツ』という作品の生き方、チャーリー・プライスとしての生き方というもののノウハウをたくさん教えていただき、最後にジェリーに魔法をかけてもらった気分です。今、カンパニーとして士気が最上級に上がっている状態ですし、本番までにやり残したことは全くないです。早くお客様に観ていただいて、2025年の『キンキーブーツ』を完成させたいという気持ちでいっぱいです!」と、はやる気持ちを抑えきれない様子。

ローラ役の甲斐は「この作品は最後のピースでお客様が劇場に入った瞬間に出来上がるものだとつくづく思いますので、明日の初日が楽しみでしかたないです。こうやって(ローラの登場ポーズ)ステージに出てくるのが楽しみです(笑)。皆様にも楽しんでいただけるように、精一杯頑張りたいと思います」とコメント。

やや緊張の面持ちのキャスト陣の中、松下は「みなさまごきげんよう♡ 松下優也役のローラです」と、いきなりの大暴走!?

これには共演者から「逆! 逆(笑)!」と一斉にツッコミが入り、会見場は爆笑の渦に包まれたのだった。

「『キンキーブーツ』へのリスペクトを持って稽古初日から挑ませてもらいました。そして今の気分としては、いつも松下優也さんは舞台初日の時は緊張がどちらかというと多いらしいのですが、私ローラはライブ直前かのように高揚感がすごい状態です。初日を迎えるのがすごく楽しみです♪」と、取材カメラに向かってセクシーにウインクを決める。

その後も、「ローラ役のお二人は今の自分の姿を鏡で見てどう思いましたか?」との質問に、

甲斐「120点です。プロの方々の手によって、甲斐翔真がちゃんとローラ役になれているんだなと鏡を見て思いました」と真摯に応える甲斐。対照的に「今、ここの渋谷が明るいのは私がいるから」と、ローラが乗り移った状態で答える松下。

これには「マジか(笑)!」「どうりで明るいなと思ったんだ(笑)」と笑いが止まらない東と有澤。ジェリー・ミッチェル氏も「Beautiful!」と叫ぶなど、リラックスした雰囲気がキャストの間に漂う。

それにしても高身長の男性5人が一同に並ぶ姿は圧巻のひと言。
190cmの東、184cmの有澤は言わずもがなだが、185cmの甲斐と180cmの松下に至ってはヒールをプラスすると190cm超えという大迫力!

「普段、お芝居をする時は相手に合わせて少し前かがみになっちゃうんですけど、今回はめっちゃ見上げながらやる芝居がすごく多くて新鮮です(笑)。同じ目線でお芝居が出来るので稽古中もやりやすかったし、新しい感覚でしたね」と東。

有澤も「このメンバーに挟まれちゃうと僕、小柄に見えますね(苦笑)。異次元ですね(笑)」と思わず照れ笑いを浮かべていた。

オーディションで選ばれた今回の新キャストについて、ジェリー・ミッチェル氏は、「この『キンキーブーツ』という作品は、若い男性が“本当の自分”“自分に誠実であること”がどういうことかを発見していく物語。今、ここにいる4人それぞれに渡されているマテリアル(=素材)は同じですが、日本チームの導きによって“自分たちの役”を形作り、輪郭をはっきりと作っていると感じています。若い人たちの物語の中で、若い彼ら自身がそれぞれの方向性で役を見つけ、しっかりと自信を持ってパフォーマンスを作りあげているのがすごいと感じています」と一人一人の目を見ながら熱くコメントしていたのが印象的だった。

そんなキャストの皆さんに「実際に演じてみて大変な部分は?」との質問が――。

「セリフがけっこうな量なんですよ。『キンキーブーツ』は時間が必ず決まっていて、そのなかでセリフをどんどんしゃべって、どんどん物語を動かしていかなきゃいけない。見る側と実際にやる側では全然違うなって思いましたし、ローラなんて何回もメイクが変わって、何回も衣装が変わるので、そういう大変さもあるんじゃないかなっていうのは通し稽古を経て思いました」と東。

一方、有澤は「僕はもう楽しくて仕方ないです。ずっと自分が夢に見ていた『キンキーブーツ』という作品に携わってから、お客さんが熱狂する姿を想像しながらずっと稽古してきたし、お客さんの期待を越える作品になったと思っています。とはいえ、こんなにもエネルギーが必要なんだということは実際にやってみて感じたし、稽古ではいろんな形の『キンキーブーツ』を試せたんじゃないかなと思うので、そこは本当に貴重な経験でした」と、ワクワクした表情で楽しかった稽古を振り返る。

日本公演を初演から見続け「『キンキーブーツ』のファン」を自称する甲斐は「見ていた時はそこまで感じなかったけど、実際に自分がやってみたら「こんなにもローラって休憩ないんだ」と思いました(苦笑)。舞台袖に引っ込む度に衣装を変えて、化粧も落として……。すごくスピード感のある役で、それはそれですごくやりがいがあって楽しいし、考える間もなく「ただローラを生きる」というすごく貴重な体験をさせていただいています。あと稽古が始まったころと比べて足が細くなりました。ふくらはぎがキュって上がって「ヒール筋ってコレか!」っていうのを実感しました(笑)」と、松下と顔を見合わせる。

それを受けて松下は「家に帰るとふくらはぎの疲れが来るので、ローラーでゴリゴリとほぐしてます」とニッコリ。さらに「私は単純に、チャーリーとローラだとローラの方がヒールをはいてダンスもあるので大変なのかなと思いきや、チャーリーはソロ曲も多いし、台詞量もすごく多いですから、意外とチャーリーの方が大変なのかもしれないって稽古時に思いました。でも劇場に入ってからは私たち(ローラ)の方が大変(苦笑)! 翔真くんも言ってましたが、休憩する暇が驚くほどにないんです。すべてがギリギリの中でやっていますが、私たちはそこに体ひとつあればやっていただける。本当に素晴らしいのはスタッフさんたちです」とカンパニーの絆が垣間見えるエピソードも語られた。

最後に「本作が世界中で愛されている理由は?」との質問があり、ジェリー・ミッチェル氏は「この作品が愛される理由は、「我々の物語」だから。お客様は舞台上に自分自身を見出すことができると思います。それはローラであったり、チャーリーであったり、ローレンであったり、ドンであったり……。もしくは工場員の中のひとりや、エンジェルの中に居るかもしれない。『キンキーブーツ』はコミュニティの物語。コミュニティの皆がお互いを受け入れ合うことで最高の自分でいられる……それが『キンキーブーツ』の成功につながるところであり、多くの人に愛される理由だと考えています」と熱く語った。

「僕らが何も言うことがないくらい言ってくれちゃった」と苦笑いの東だが、「ミュージカルなので、音楽の素晴らしさも魅力のひとつ。そしてジェリーが言ったように観客の皆さんが投影できる魅力的な登場人物たちや、チャーリーの成長物語に感銘を受けたり、ローラのひとつひとつの言葉が胸に響いたり、今まで気づけなかったことに気づけたり、そういうものが散りばめられている作品なのかなと思います。あと少しセクシャルな内容も含まれていて、今の時代で言う「多様性」にもつながるものがあるのかなと思うので。いろんなことにおいて「受け入れる」というのが、この『キンキーブーツ』が愛されるひとつの魅力なんじゃないかなと思っています」とコメント。

有澤も「ジェリーをはじめ、この作品を作って来た方たちの『キンキーブーツ』への愛が本当に素晴らしいなって思っています。その愛を僕たちはお客さんに受け継いでいかないといけない。稽古を通じて、作っている方たちが“思いの強さ”と“愛”で作品と向き合い作り上げたと実感したし、そこに愛される理由あるんじゃないかなって思います」と噛みしめるように言葉を続け、甲斐は「とてもハッピーで楽しいミュージカルですが、現代社会に生きる僕らとしては「大事なものを忘れていたな」と思わされる作品でもあります。作品のテーマでもある“自分が変われば世界が変わる”って、みんな実は分かっているようで分かっていない。気づかない間に何かに固められて「自分じゃどうにもならない」と思っているひとが多いと思いますが、ローラはそれを超越して「一人の人間として自由に生きる」「自分の居場所を探す」「本当の自分になる、それこそが人間の美しい瞬間」と教えてくれる。性的趣向とか関係なく、僕はただローラを“一人の人間”として演じさせていただいてます。そういう魅力があるからこそ、この作品が世界中で愛されているのだと思います」と華やかな笑顔を見せた。

コメントの締めを任された松下は、「愛される理由……それは私たちが最高だからです!」と最後までローラになりきって場を盛り上げる(笑)。

「すごくゴージャスで、とてもファビュラスな作品。照明やLEDライトが煌々と輝く華やかなステージだけど、とてもちっちゃなすごく繊細な部分とダイナミックなパフォーマンスの部分との差が、僕が『キンキーブーツ』の好きなところ。ローラもこうやって見るとすごく派手な存在ですし派手なパフォーマンスをするけど、自分の過去にとらわれている部分もあって……。そういうところが見ている皆さんに寄り添うような作品になっています。こっちから一方通行に「皆さんに作品をお届けする」というものではないところが、『キンキーブーツ』が多くの人に愛される理由かなと思います。“本当の自分を探し求めるアナタ”に寄り添う作品を観に、ぜひ劇場にお越しください」とコメントし、作品へのたくさんの愛と熱量&笑いに包まれた会見が終了した。

さらに、4月27日(日)の初日カーテンコールには音楽・作詞のシンディ・ローパーが登壇した。

撮影:岡千里 キセキミチコ

ミュージカル『キンキーブーツ』は、4月27日(日)~5月18日(日)まで東急シアターオーブにて東京公演を上演。その後、5月26日(月)~6月8日(日)までオリックス劇場にて大阪公演が行われる。

取材・文:近藤明子
撮影:THEATER GIRL編集部

東 啓介さん×有澤樟太郎さん×甲斐翔真さん×松下優也さんのインタビューはこちら

公演概要

ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』

【CAST】
CHARLIE PRICE(チャーリー・プライス) :東 啓介 ・ 有澤樟太郎
LOLA (ローラ) :甲斐翔真 ・ 松下優也

LAUREN(ローレン) :田村芽実 ・ 清水くるみ
NICOLA(ニコラ) :熊谷彩春
DON(ドン) :大山真志
GEORGE(ジョージ) :ひのあらた

PAT(パット) :飯野めぐみ
TRISH(トリッシュ) :多岐川装子
HARRY(ハリー) :中谷優心

ANGELS(エンジェルス) :穴沢裕介、佐久間雄生、シュート・チェン、大音智海、工藤広夢、轟 晃遙
ANGELS/SWING(エンジェルス/スウィング) :本田大河、長澤仙明

SIMON.SR(サイモンシニア) :藤浦功一
MR.PRICE(ミスタープライス) :石川 剛
RICHARD BAILEY(リチャード・ベイリー) :聖司朗
MARGE(マージ) :舩山智香子
MAGGIE(マギー) :伊藤かの子
GEMMA LOUISE(ジェンマ・ルイーズ) :熊澤沙穂
HOOCH(フーチ) :竹廣隼人
MUTT(マット) :趙 京來

YOUNG CHARLIE(ヤングチャーリー):奥田奏太、星 駿成、村山董絃
YOUNG LOLA(ヤングローラ):古澤利音、見﨑歩誠、髙橋維束

SWING:上條 駿、加藤文華

【Creative Staff】
脚本 :ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞 :シンディ・ローパー
演出・振付 :ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力・上演台本 :岸谷五朗
訳詞 :森 雪之丞

【公演期間・会場】
東京公演:2025年4月27日(日)~5月18日(日) 東急シアターオーブ
大阪公演:2025年5月26日(月)~6月8日(日) オリックス劇場

【オフィシャルサイト】
http://www.kinkyboots.jp/
【オフィシャルX/オフィシャルInstagram】
@Kinkybootsjp

【東京公演主催】
アミューズクリエイティブスタジオ・フジテレビジョン・サンライズプロモーション東京

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

プロフィール

PICK UP

関連記事一覧