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有澤樟太郎・東啓介ら出演。「TOHO MUSICAL LAB.」開幕! 有澤「役者としての原点に帰れるお芝居です」、東「二つの作品をセットで観る相乗効果を受け取ってもらえたら」

REPORT

2023年11月22日(水)、シアタークリエにて「TOHO MUSICAL LAB.」が開幕した。

この企画は、俳優と注目のクリエイターが新作ミュージカルをゼロから創り上げるという実験的なプロジェクト。2020年7月に第1弾が配信で上演されたが、今回第2弾として、高羽 彩脚本・演出による『わたしを、褒めて』と、池田 亮作詞・脚本・演出による『DESK』のオリジナルミュージカル2本が同時上演となった。

舞台作品のバックステージで巻き起こるトラブルを描いた『わたしを、褒めて』は、主人公・星奈 和を演じる有澤樟太郎をはじめ、美弥るりか、エリアンナ、屋比久知奈。アニメーション制作現場の切実な裏側を描いた『DESK』は、主人公・和田晋吾役の東啓介ほか、豊原江理佳、山崎大輝、壮 一帆ら豪華キャスト陣が集結した。

開幕記念会見にはキャスト8人と、演出の二人が登壇し、開幕に向けての意気込みを語った。

ど派手な衣装で登場した有澤は、「僕だけ衣装のテイストが違うので、どんな作品なんだと思われる方がいらっしゃると思うんですけど」と前置きすると、「僕自身、役柄とリンクしているところがあって。周りの支えがないと舞台に立てないという(役者としての)原点に帰れるお芝居です」と作品を紹介。「乾燥の季節ですけれども、みなさんの心を潤すような人間ドラマになっていると思います」と締め、ほかのキャストたちから「おー!」と感嘆の声が上がる。

『わたしを、褒めて』舞台写真

星奈に振り回される演出家・朝日を演じる美弥は、「今まで出会った女性演出家さんの個性を少しずつ取り入れながら演じております」と今回の役作りに触れると、「短い公演期間ではありますが、精一杯、全力で駆け抜けたいと思っております」と力強く語った。

『わたしを、褒めて』舞台写真

クセの強いプロデューサー・水川を演じるエリアンナは、「(水川は)朝日と各々の正義をもってゴジラ対メカゴジラのようなバトルシーンがあるんですけれど」とユニークな例えで場を沸かせると、「笑いの絶えない稽古場だったので、チーム一丸となった感じが舞台上で表現できるかなと思っています。笑って、そしてちょっとほっこりしてもらえればうれしいです」とにっこり。

『わたしを、褒めて』舞台写真

それを受け、星奈のマネージャー・田之倉役の屋比久も「短い時間だったけれど、“LAB.”という名にふさわしく、みんながアイデアを持ち寄って試して、高羽さんが役者を導いてくれました。楽しくて濃密な稽古の日々でした」とコメント。「それぞれのキャラクターにどこかしら共感できるところがある作品なので、ぜひ笑って楽しんでいただけたらと思います」と結んだ。

『わたしを、褒めて』舞台写真

『わたしを、褒めて』キャスト陣の言葉を受け、東は「先ほど通し稽古をやったときに、褒めてほしいなってすごく思いました。和田はがんばっているんだけど、誰もほめてくれないから。そういうときに見るとほろりと涙が出てしまう」と、冗談交じりに自身の役の悲哀をアピール。「そうやって(二つの作品を)セットで見ることによって、相乗効果というか膨らむ何かがありますので、それを(お客様に)受け取ってもらえたらと思います」と座長らしい言葉で締めた。

『DESK』舞台写真

和田の勤めるアニメ会社の同僚・上野香里を演じる豊原は、「池田さんをはじめ、みなさんと一から作っていくのが本当に楽しくて。自分の経験とか今まで感じてきたことも全部作品のなかで生きるようで、とても幸せな稽古期間でした」と振り返り、「見終わった後、自分にやさしくなれるような作品で、私自身も救われました。お客様にも温かい気持ちになっていただけたらいいなと思います」とまっすぐに語った。

『DESK』舞台写真

同じく和田の同僚・中原秀司役の山崎は、自己紹介を終えたところで、東から「汚れてるよ」とパンツをはたかれるなど、イジられキャラ全開。笑顔で制しつつ、「最初に(脚本を)読ませていただいたときに、“自分の時間って意外にとれていなかったな”とか、そういう“基盤の心”みたいなものを取り戻せる作品だなと感じました」とコメント。

『DESK』舞台写真

同じアニメ会社のプロデューサー・三浦秋子を演じる壮も、「台本のおもしろさを、自分が表現者としてどこまで出せるのかというところが一つ課題でもありました」と脚本について触れると、「いろんな役に挑戦させていただいて、その都度自分の引き出しになっています。少しでもおもしろかった、いいものを見られたとお客様に思っていただけるようにがんばっていきたいと思います」と熱量高く言葉を紡いだ。

『DESK』舞台写真

『わたしを、褒めて』の脚本を担当した高羽は、「ある作品のスタッフワークに感動したのがきっかけ、プロの演劇人になりたいと思って。それから20年ぐらい、私はスタッフさんへのリスペクトと共に演劇活動を続けてきました」と自身の活動経歴を教示。「だから、舞台裏でどういうことが起こっているのか、どういう人たちが働いているのかをお客さんにもわかっていただいたうえで、さらに演劇を楽しんでいただきたいなという気持ちからこういう作品(『わたしを~』)を書きました」と今回の脚本執筆に至った経緯を語り、「働くすべてのみなさんへの応援になる作品になっていると思います」と本作に込めた想いをまっすぐに伝えた。

『わたしを、褒めて』舞台写真

『DESK』の脚本を担当した池田も、アニメ会社で働く知人の話がヒントになったことを話し、「日本におけるアニメーションはすごく力があるから。日本でやるオリジナルミュージカルといったらアニメなんじゃないか、というところから、アニメーション会社を舞台に叫びたいけど叫べなかった人たちに叫んでいただこうと思って執筆しました」と経緯を説明。「仕事とかプライベートとかで頭を抱えることもあると思いますが、明るく元気づけられる作品にできればいいなと思っております」と意気込みを述べた。

『DESK』舞台写真

今回、ゲネプロは有観客で開催されたため、満席の会場は開演前から熱気に包まれていた。

演出の高羽が客席に語りかけるところから始まる『わたしを、褒めて』はまさに演劇的で、一瞬にして作品の世界観へ誘われてしまう。

『わたしを、褒めて』舞台写真

満を持して、星奈が賑々しく登場!「客の視線は俺に釘付け」と自信満々に振る舞いながらも、スタッフからの「顔だけが取り柄のポッと出の素人俳優」という陰口にも実は自覚がある。だからこそ、演出家の朝日の「あなたが誰よりもまっすぐこの作品を愛してくれたから。その愛に見合う仕事がしたいと今日までやってこれた」という言葉に心を揺さぶられ、思い上がりを反省し改心する。

『わたしを、褒めて』舞台写真

開幕記念会見で有澤が「(自分が)役とリンクするところがある」と言っていたように、自身にも刺さるところがあったのだろうか。涙で顔をぐしょぐしょにしながらの熱演が印象的だった。

『わたしを、褒めて』舞台写真

一転、『DESK』は衣装も舞台セットも実にシンプル。そのぶん、キャストの芝居や歌唱が引き立つ。なかでも東は、時にやさしく時にがなり、低音から高音まで豊かに操り、歌い踊りながら物語を引っ張っていく。

『DESK』舞台写真

劇中の言葉遊びも秀逸。和田の「いただけない」というセリフが見事にラストシーンへの振りになっていたときには、「やられた!」と心のなかで叫んでしまった。

『DESK』舞台写真

両作品とも特殊な業界の裏側を描いてはいるが、どの仕事にも通ずるものがあるがゆえに、見ている者の心に沁みるのだろう。お風呂に入れて、ごはんを食べられて、お酒を飲んで眠りにつける幸せを噛みしめつつ、たまにはデスクの呪縛から逃れ、自分を褒めてあげようとぼんやりと思いながら帰途についた。

『DESK』舞台写真

文:林桃

公演概要

TOHO MUSICAL LAB.

【わたしを、褒めて】

出演:
有澤樟太郎
美弥るりか
エリアンナ
屋比久知奈
新井海人 石井千賀 焙煎功一

脚本・演出:高羽 彩(タカハ劇団)
作詞・作曲:ポップしなないで
美術:稲田美智子
衣裳:臼井梨恵
振付:大和

『DESK』

東 啓介
豊原江理佳
山崎大輝
壮 一帆
久住星空/三浦あかり(子役・W キャスト)

作詞・脚本・演出:池田亮(ゆうめい)
作曲:深澤恵梨香
美術・衣裳:山本貴愛
振付:岡本 優

編曲・音楽監督:深澤恵梨香
照明:関口大和
音響:高橋秀雄
ヘアメイク: 伊藤こず恵
稽古ピアノ:岩永知佳
稽古場代役:友部柚里
演出助手:小貫流星
舞台監督:藤崎 遊
アシスタントプロデューサー:橋本薫、小林亜沙美
プロデューサー:尾木晴佳

(2作品同時上演)

会場:シアタークリエ
公演日時:2023 年 11 月 22 日(水)19 時 、11 月 23 日(木祝)12時/16時
料金:8,800 円(全席指定・税込)

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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