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ミュージカル『ヒーロー』観劇レポート!「“ザ・ヒーロー”を描いた物語ではないからこそ、前向きになれる作品」

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ミュージカル『ヒーロー』は、脚本/アーロン・ティーレンと、作詞・作曲/マイケル・マーラーのコンビによるハートウォーミングなオリジナルミュージカル。過去にトラウマを持ちながらアメコミ漫画家を目指す主人公・ヒーローが、周囲の人々との交流や別れを通して奇跡に気づいていく物語だ。

ヒーローを演じるのは、シアタークリエでの単独主演は初となる有澤樟太郎。ヒーローの高校時代のガールフレンド・ジェーンを山下リオと青山なぎさが、ヒーローの従兄弟で親友・カークを寺西拓人と小野塚勇人がWキャストで。ヒーローとジェーンの高校時代の同級生・スーザンを宮澤佐江が、ヒーローの父・アル(佐藤正宏)の営むコミックショップに入り浸るコミックオタク・ネイトを吉田日向と木村来士がWキャストで演じる。今回は、ジェーン役青山なぎさ、カーク役小野塚勇人、ネイト役吉田日向出演回のレポートをお届けする。

※公演内容に一部触れています。

舞台は2008年、ウィスコンシン州ミルウォーキー。10年前に交通事故で母を亡くして以来、自責の念に駆られ、前に進むことができなくなっているヒーローに、アルが小言を並べて口論となり、ヒーローが『MY SUPERHERO LIFE』を歌う場面から始まる。この後も何度か歌われる楽曲だが、シーンごとにヒーローの心情が歌詞に表れていて味わい深い。ここでは、一度はアメコミ漫画家の夢をあきらめたものの、他愛のない日常を過ごしながら、どこかでその夢を捨てきれないでいるヒーローのくすぶった現状が伺い知れる。

そんなある日、ジェーンが街に戻ってくる。気持ちのすれ違いから別れてしまったが、10年ぶりに再会した二人。そこでナイスアシストをするのが、女性経験豊富なカーク。彼のアドバイスによりヒーローは勇気を出してジェーンに電話をかけるのだが、緊張でガチガチのヒーローの受け答えのおかしさと、それに対するカークのコミカルなリアクションに客席から笑いが。

結果的にその電話がきっかけとなり、ヒーローとジェーンの間にあったわだかまりがとけていく。気持ちがふたたび通じ合った二人。さらには、出版社に送った自作のマンガが認められるなど、順風満帆な日々を送るヒーロー。しかし、彼が幸せをつかもうとした途端、不幸な出来事が起きてしまい、ふたたび“スーパーヒーローライフ”をあきらめることを決意する。

ヒーロー役の有澤は、冴えない風貌ではありつつも、その長身と抜群のスタイルからどことなくHERO感が漂ってしまう。だが、実際はアメコミに登場するような並外れたパワーを持っているわけではなく、必死に日常を生きている。不幸な出来事にふたたび挫折しそうになるも戦い続け、「誰もが自分のなかにスーパーパワーを持っているのだ」と、説得力のある歌声で勇気を与えてくれる。

そんなヒーローの支えとなるジェーン。演じる青山は、小柄ながらパワフルさのある芝居でグイグイ惹きつけていく。また、聞き惚れる美声とたしかな歌唱力を惜しみなく披露し、有澤との二重奏で客席をうっとりさせた。

本作を語るうえで外せないのが、カーク&スーザンカップルの突き抜けた存在感だ。口を開けば下ネタだらけ、“握手よりハグ”派で、「ヴァンパイア・キッス・フォーエバー」という自作のラブソング(!)をギターで弾き語りしたりと、チャラさ全開のカーク。そんな彼を、品を損なわず、時にはかわいらしささえ感じさせる芝居で魅せていく小野塚。その芸の細かさに、ヒーローのみならず観客も救われたはずだ。

そんなカークに大きな影響を与えるのがスーザン。マジメを絵に描いたような出で立ちで登場した際の衝撃は大きく、何度もその姿が宮澤であることを確認してしまうほど、スーザンそのものだった。カークとともにハンドマイクを手に熱唱するシーンは、ぜひ見どころの一つとして推したい。

また、自身もツラい過去を持ち、その呪縛に苦しむネイトも、劇中で大事な役割を担うキャラクター。愛されキャラでもあるネイトを、このうえなく繊細に演じる吉田。特に後半の、ヒーローに感情を爆発させる場面では、自然と共鳴している自分がいた。

本作のなかで、ヒーローは何度となく「人生がコミックなら~」と歌い、その答えを模索しながら自分の人生を見つけていく。それと同様に、我々にもそれぞれの“コミック”があり、目の前の幸せに気づけていないだけかもしれない。“ザ・ヒーロー”を描いた物語ではないからこそ、じわじわと沁みてきて、素直に前向きになれる作品だった。

文:林桃
撮影:THEATER GIRL編集部

ミュージカル『ヒーロー』開幕レポートはこちら

カーク役 小野塚勇人さんのインタビューはこちら

公演概要

ミュージカル『ヒーロー』

【公演日程】2025 年 2 月 6 日(木)~3 月 2 日(日)
【劇場】日比谷・シアタークリエ
【チケット代金】13,000 円(全席指定・税込)

【スタッフ】
脚本 アーロン・ティーレン
作曲・作詞 マイケル・マーラー
翻訳・訳詞・演出 上田一豪

ヒーロー・バトウスキー
有澤樟太郎

ジェーン・フォスター
山下リオ/青山なぎさ(W キャスト)

カーク
寺西拓人/小野塚勇人(W キャスト)

スーザン・シュミッティ
宮澤佐江

ネイト
吉田日向/木村来士(W キャスト)

アル・バトウスキー
佐藤正宏

テッド 田村良太 カイル 西郷 豊

木暮真⼀郎 高倉理子 髙橋莉湖

製作 東宝

【公式 HP】https://www.tohostage.com/hero/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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