坂井真紀×福地桃子インタビュー　舞台『橋からの眺め』「今までに見たことがない本作のカタチ、熱い人間模様を届けたい」（後編）

2023.09.01

INTERVIEW

2023年9月2日（土）から、東京芸術劇場プレイハウスを皮切りに、北九州、広島、京都にて、舞台『橋からの眺め』が上演されます。

本作は、ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞に輝いた巨匠アーサー・ミラーが描く骨太な社会派作品。ニューヨークの貧民街を舞台に、最愛の姪をひきとり暮らす夫婦が違法移民の従兄弟を受け入れたことで、一家に巻き起こる悲劇が、ストーリーテラーである弁護士アルフィエーリによって語られていく物語です。

演出を手がけるのは、演劇とオペラの演出家として定評があり、コンセプチュアルな演出で評価も高い英国内外で活躍するジョー・ヒル=ギビンズ氏。初演出となる日本でどのような作品を誕生させるのか、期待が高まります。

主演のエディを務めるのは、13年ぶりの舞台出演となる伊藤英明さん。エディの妻ビアトリス役で坂井真紀さん、エディの姪キャサリン役で福地桃子さん、ビアトリスの従弟ロドルフォ役で松島庄汰さん、ビアトリスの従兄マルコ役で和田正人さん、弁護士アルフィエーリ役で高橋克実さんが出演。豪華キャスト6名によって描かれる社会派ドラマに注目です。

THEATER GIRLでは、坂井真紀さん、福地桃子さんにインタビュー。後編では、お稽古場の様子、本作への意気込みを中心に、お二人が思わず自分の気持ちを抑えられなくなってしまった出来事についてうかがってきました。インタビュー中は、お互いの発言に反応したり、笑顔で顔を見合わせたりする場面が多く、舞台上で一緒に暮らす二人の役柄が反映されたような関係性がうかがえ、坂井さんが温かく福地さんに話しかけている様子も印象的でした。

インタビュー前編はこちら

ジョー・ヒル=ギビンズさんの演出は、新しいカタチの舞台になりそう

――主演の伊藤さんをはじめ、お稽古場の様子はいかがでしょうか？

福地：とても楽しいですね、毎日。

坂井：一番アメリカ人っぽいかもね、伊藤くん（笑）。素直に心をオープンにされる素敵な方。

福地：伊藤さんが演じるエディだけの魅力があると感じます。過去にやっていた本作とも印象が変わってくるような気がしていて。まさに演じる人によって、感情の受け取り方や愛情の大きさが変化する作品だな、と。

坂井：どこの言葉に引っかかるか、きっとそれぞれで、そこがまた面白いんですよね。今はまだお稽古が序盤のほうなので（取材時）、今後、伊藤くんがどんなエディになっていくのか、どう作り上げていくのか楽しみです。

――ちなみに、ジョーさんの演出を受けてみていかがでしょうか？

坂井：「あなたはどう思うの？」と対話を大事にしながら、お稽古が進んでいきます。フィードバックの一言目は、英語という言語の特徴なのか、必ず褒めてくれるのがとても嬉しいですし、役作りの角度、フォーカスの仕方、積み上げ方もとても新鮮です。お稽古ではありながらジョーさんのワークショップに参加させていただいているみたいで、毎日とても楽しい時間を過ごしています。

福地：私もジョーさんのお人柄にとても救われていて。事前にお会いしたときも、「今回が初めての舞台なので緊張している」という話を聞いてくださっている中で、今後の稽古の流れや準備しなければいけないことをお話しするのかなと想像していたのですが、ジョーさんは過去に演出された舞台で起きた楽しかったことを話してくださったんです。それがとても素敵な時間で、お稽古初日に向けて前向きな気持ちになれました。

坂井：ジョーさんのお稽古の中でとても印象的だったことの一つは、台本の内容をセクションごとに分けてタイトルをつける作業。そうするとシーンの中で最も大切な要素やテーマが見つかるんです。

あと、舞台装置についてもジョーさんが考えられているアイデアがとても素敵だと思います。本番まで変わらなかったら、ぜひ楽しみにしていてほしいよね？

福地：はい、とても素敵です。

坂井：おそらく今まで見たことがない『橋からの眺め』になるのではないかなと思います。もう私自身、この舞台を客席から観たいですよ。

――新しい試みが詰まっているのですね。とても楽しみです。

坂井：ハードル上げちゃったかな（笑）。頑張ろうね！

（坂井さんが笑顔で福地さんの肩をぎゅっと寄せ、福地さんも嬉しそうにはにかんでいらっしゃいました）

福地：セット含め、スタッフの皆さんも「こんな舞台見たことない！」とおっしゃっているので、いろんな仕掛けがあると思います。

坂井：さまざまな舞台装置を見てきたスタッフさんがおっしゃるということは、本当にそうなんだろうね。

福地：実際に本番が近づいてみないと、私たちもまだ想像できないくらい。まさに初めての試みのようです。

坂井：この戯曲にとっても合っているよね。狭い空間の中で閉じ込められている移民の家族というシチュエーションが、とても斬新なんですけれどもそこと深く繋がっているんです。

福地：最初は3人の家族だったところから、5人の家族に繋がっていく。空間を含めて、自分たちの感情にも影響してくるのが想像しながら楽しいです。

ウォーミングアップ中に気づいた坂井さんの意外な一面に驚き

――今のお話をうかがって、カンパニーの素敵な様子も垣間見られたような気がしました。ここからは、作品のストーリーにちなんだ質問をさせてください。物語が進むにつれ、エディは自分の気持ちを抑えきれなくなっていきますが、最近お二人が思わず、自分の気持ちを抑えられなくなってしまった出来事はありますか？

坂井：自分の気持ちが抑えられなくなった、なんだろう……。大谷選手関係では毎日「ウォー！」となっていますね（笑）。

福地：私は、坂井さんの運動神経の良さに驚きましたよ。

坂井：えええ、本当に？

福地：お稽古が始まる前、皆さんと円になってボールをパスしていくウォーミングアップで体を温めているんですけど、そのときに坂井さんが発揮される力がすごくて（笑）。それがチーム力を上げている一つでもある気がします。

最初はおっとりしている方という印象があったので、スポーツしている姿があまり結びつかなかったのですが、坂井さんがパスするボールは鋭いんですよ。

坂井：まさか体育会系だとは思わなかったのね（笑）？　そこに「ウォー！」となったそうです（笑）。

福地：皆さんも坂井さんの軽やかな動きを見たとき、「バレーボールやっていたんですか？」とおっしゃっていて。私も心の中で「同じこと思ってた！」って（笑）。

坂井：私も桃子ちゃんとこんなにたくさんの時間を過ごすのは初めてなので、毎日発見があり楽しいです。

――以前お二人はドラマで共演経験がありましたが、そのときより密にコミュニケーションを取られているのですね。

坂井：そのときはワンシーンだけだったんですよ。今回、桃子ちゃんは初舞台なのに、まったくそうは思えないくらい、とてもしっかりやられていて本当に感心しています。自分の初舞台を思い出すと恥ずかしくなっちゃうので、余計に。役でも本当にキャサリンに助けられていて、そのおかげで自分のビアトリスを作り上げられています。

福地：そんな……！　私もビアトリスの言葉に毎回とても説得力を感じています。

坂井さんはとても尊敬している先輩であると同時に、先ほど言ったようにギャップがたくさんある方なんですよ。その一つ一つに私はいつもギャップ萌えしています（笑）。今回、女性の役が私たちしかいないこともあって、坂井さんがいてくださると私はとても心強いですし、お稽古の中で会話することも多いので、一緒にシーンを作り上げられるこの時間を大事にしたい。そんな思いが今とても強いですね。

坂井：わー、ありがとう。桃子ちゃんとの会話のキャッチボール、私もとても楽しいんですよ。

福地：嬉しいです。