中村芝翫が孤独な王・リアに挑む――シェイクスピア四大悲劇の最高峰『リア王』稽古場レポート!
2026年9月6日(日)より新橋演舞場にて『リア王』が上演される。
歌舞伎俳優の中村芝翫が、演出家・井上尊晶とタッグを組み挑んできたシェイクスピア劇のシリーズ。
第一弾の『オセロー』(2018 年/新橋演舞場)、第二弾の『夏の夜の夢』(2022 年/日生劇場)は、普遍的な物語に新たな解釈を加え好評を博してきた。
そして、第三弾となる今回、新たに挑むのは、シェイクスピア四大悲劇の中で最高峰と称される『リア王』。老いた王が娘たちの愛を言葉で量ろうとしたことから始まる、人間の根源に迫る作品。親と子、愛と理解――その関係が崩れていく過程を通して、普遍的な問いを静かに、しかし厳しく観客に突きつける。
演出は、蜷川幸雄の助手を長年勤めた井上尊晶。開場 101 年目となる新橋演舞場のスケール感を生かしつつ、シェイクスピアが描くリア王の姿を、「わたしたちの物語」として届ける。
また、今回の翻訳は創業140周年を迎えた河出書房新社より出版の『真訳 シェイクスピア四大悲劇』(2021年)も好評の石井美樹子。イギリス史の研究をベースとした当時のロンドンの社会背景への深い理解を土台に、言葉が生身の人間の感情として立ち上がる翻訳が、シェイクスピア作品の本質を現代に鮮やかによみがえらせる。
孤独な王・リアを演じるのは、歌舞伎俳優の中村芝翫。歌舞伎の立役として時代物、世話物、新歌舞伎など数多くの作品で当り役を持ち、1997年放送のNHK大河ドラマ「毛利元就」(当時 中村橋之助)をはじめとして大河ドラマ「青天を衝け」、日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」など、映像作品でも活躍している。
リア王の長女ゴネリル役には、TV ドラマ「ナースのお仕事」シリーズ、「大奥~第一章~」や舞台『ブロードウェイ・バウンド』、『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる⁉~』など確かな演技力で幅広い役柄を演じる俳優・松下由樹。
弟の策略に翻弄されるエドガー役を、映画「るろうに剣心」シリーズや、舞台『呪術廻戦』『サド侯爵夫人』などに出演し鋭さと躍動感あふれる演技で鮮烈な印象を残す三浦涼介が務める。次女リーガン役には、元宝塚歌劇団雪組トップ娘役でミュージカル『ライムライト』、ルネサンス音楽劇『ハムレット』など豊かな感受性と丁寧な演技に定評のある朝月希和。末娘コーディリア役には、乃木坂 46 出身でミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』や『シェルブールの雨傘』に出演し、繊細さと力強さを兼ね備えた演技で魅了する井上小百合、兄を陥れるエドマンド役には、大河ドラマ「西郷どん」、連続テレビ小説「わろてんか」、ミュージカル『Pacific Overtures』など、テレビや舞台で幅広く活躍し海外進出もしながら着実に評価を築いてきた大野拓朗。
そして、ケント伯爵役に蜷川幸雄演出の『ロミオとジュリエット』『リチャード三世』など多数のシェイクスピア作品に出演し、確かな実績を重ねてきた二反田雅澄、道化役には大河ドラマをはじめとした数々の映像作品に出演し、劇団スーパー・エキセントリック・シアターの看板俳優として、『熱海五郎一座』シリーズなど豊富な芝居経験に裏打ちされた表現力で物語を支える小倉久寛、グロスター伯爵役には数々の映画、ドラマや舞台『放浪記』『喜劇 有頂天』 シリーズ、『エドモン~シラノ・ド・ベルジュラックを書いた男~』などに出演し名バイプレイヤーとして確かな存在感を示し安定した演技に定評がある村田雄浩と、実力派の豪華キャストが集結。
さらに、オールバニー公爵役には中村松江、コーンウォール公爵役に駒井健介、オズワルド役に大堀こういちが名を連ねる。
今回は、公開稽古の様子とリア王役 中村芝翫の取材会でのコメントをお届けする。
この日は、公開稽古で2つの場面が公開された。まず公開されたのは、長女ゴネリル(松下由樹)、次女リーガン(朝月希和)、末娘コーディリア(井上小百合)の3人の娘のうち、自分を最も愛する者に国土を多く分け与え、退位して静かな余生を送ろうとする場面。






さらに、リアの家臣グロスター伯爵(村田雄浩)の庶子エドマンド(大野拓朗)が、私生児であるがゆえの不当な扱いへの不満から、父親の領地と権力を手に入れるため、長男エドガー(三浦涼介)を陥れようと陰謀を企てるシーンも披露。






2つめに公開されたのは、失意のリアが娘たちのもとを離れ、道化(小倉久寛)や、変装して再びリアに仕えているケント伯爵とともに、嵐の中の荒野をさまよう場面。




登場人物の感情や関係性を丁寧に表現する姿から、本番さながらの臨場感が感じられた。
その後は、リア王役 中村芝翫の取材会が実施された。今回は、取材会での中村芝翫のコメントをお届けする。
リア王役 中村芝翫 取材会コメント
稽古での手応えについて

歌舞伎の場合は気心の知れた中で一つの演目に向かっていくので、チームとしての一体感が生まれやすいのですが、構成劇団ではそれがなかなか難しい。ただ、皆仲が良いですし、今回は早い段階から読み合わせをさせていただいたのもあって、良いチームができているのではないかと感じています。ただ、せっかく負ったいい傷を皆で舐め合って治してしまわないこと。しっかりそれを受け止めて前に進むことが大事だと思っています。
演出の井上尊晶との三度目のタッグについて

『オセロー』の時は僕自身、シェイクスピアが初めてだったので無我夢中でやらせていただきましたが、『夏の夜の夢』の時は比較的気楽にできました。今回は尊晶さんがより細かく演出されるのではないかと思っています。いろいろなリクエストをさせていただいて、翻訳の石井(美樹子)先生もずっと稽古場にいらっしゃってくださっています。
シェイクスピアはト書きがないので、本を読んだだけでは、当時の言葉や表現が私の脳ではなかなか理解しきれない部分があります。そこを尊晶さんが噛み砕いてくださり、石井先生が丁寧に教えてくださいます。難しい言葉でも内面をしっかり噛みしめて、自分の肉体から出てくる言葉に置き換えていく作業は苦しいですが、とても楽しいです。これは歌舞伎にも通じるところがあると感じています。
それと同時に、こういうお仕事をさせていただくことで、自分の中で開けなかった新しいページをめくれる感覚があります。この歳になるとどうしても保守的になって、役者としての自分のテリトリーの中に留まりがちになるものですが、尊晶さんとご一緒すると、また新しい自分の一面を引き出していただける気がします。
現時点での『リア王』への取り組みについて

1605年に書かれた作品が2026年の今もこれほど上演され続けているのは、やはりすごいことだと思います。親子関係や家督の問題、老害、娘との関係といったテーマが現代にも通じるからこそ、これだけ長く愛されているんでしょう。
本自体がとてもしっかりしているので、「ここが足りない」「もう少しこうすれば」という言い訳が利かないのが少し辛いところでもあります(笑)。それだけ素晴らしい作品だということではありますが。僕には3人の息子がいますので、リア王のような扱いを受けないよう気をつけなければと思いながら毎日稽古しています——これは冗談ですけどね(笑)。
新橋演舞場で『リア王』を上演することについて

昨今、素晴らしい方々が『リア王』を上演されている中で、新橋演舞場ならではの『リア王』をお見せしたいと思っています。尊晶さんもおっしゃっていますが、花道があって、廻り舞台があって、客席に提灯がぶら下がっている演舞場でシェイクスピアを観ていただく——それが新橋演舞場で上演する醍醐味だと感じています。
文・撮影:THEATER GIRL編集部
井上小百合インタビュー 『リア王』 「誰かに勇気や元気を与えられる存在になりたい」
公演概要

『リア王』
日程:2026年9月6日(日)~22日(火・祝)
会場:新橋演舞場
作:W.シェイクスピア
訳:石井美樹子(河出書房新社『真訳 シェイクスピア四大悲劇』収録)
演出:井上尊晶
製作:松竹株式会社
≪出演≫
リア王:中村芝翫
ゴネリル:松下由樹
エドガー:三浦涼介
リーガン:朝月希和
コーディリア:井上小百合
エドマンド:大野拓朗
オズワルド:大堀こういち
コーンウォール公爵:駒井健介
オールバニー公爵:中村松江
ケント伯爵:二反田雅澄
道化:小倉久寛
グロスター伯爵:村田雄浩
≪チケット情報≫
好評発売中
チケットホン松竹 (10:00~17:00) 0570-000-489または03-6745-0888
チケットWeb松竹(24時間受付/発売初日の受付は10:00~)
[グループ観劇(15名様以上)に関するお問い合わせ]
新橋演舞場販売営業 03-3541-2111(10:00~17:00)
≪料金≫
1等席14,000円/2等席9,000円/3階A席5,000円/3階B席3,000円/桟敷席 15,000円
公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202609_enbujo/
