渡邊圭祐インタビュー 『Yerma イェルマ』 「シアタートラムの舞台に立つことは念願だった」(前編)
2026年9月21日(月・祝)より東京・シアタートラムを皮切りに、『Yerma イェルマ』が上演されます。
本作は、1930年代スペインの閉塞的な寒村を舞台に、抑圧された女性の苦悩と孤独を鮮烈に描いた詩人・劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる不朽の名作「イェルマ」を起点に、現代社会で自らの居場所や価値を見出そうともがき苦しむ女と男たちの物語として、新たに立ち上げる意欲作です。「家族の在り方」や「自己の存在意義」を問いながら、現代が抱える切実な問題を舞台上に映し出します。
演出を手がけるのは、30代の若さで読売演劇大賞・最優秀演出家賞を受賞し、深い戯曲解釈と現代的でエッジの効いた空間演出で注目を集める稲葉賀恵さん。劇作を担うのは、現代においてマイノリティとなる人々の生活を描くなど、社会課題を扱った作品で注目を集める劇作家・オノマリコさん。二人のタッグにより、ロルカの名作を現代的な視点から再構築します。
自らの存在価値に苦悩する女性・イェルマ役を咲妃みゆさんが演じ、その夫であり、家庭生活に非協力的な一方、自らもある秘密を抱えるフワン役を渡邊圭祐さんが務めます。さらに、イェルマの幼馴染・ビクトル役に小林亮太さん、イェルマの内的な存在として物語に鮮烈なアクセントを刻む老婆役に渡辺いっけいさんが出演。樋之津琳太郎さん、大場みなみさん、青山祥子さん、前東美菜子さんら多彩な俳優陣が物語を彩ります。
THEATER GIRLは、渡邊圭祐さんにインタビュー。3年ぶりとなるストレートプレイへの出演や、念願だったシアタートラムの舞台に立つ喜び、現代的な視点で再構築された本作の魅力についてお聞きしました。さらに、共演する咲妃みゆさんらカンパニーの印象や、演じるフワンの人物像、“幸せの形”について感じていること、家族との関係についても語っていただきました。
シアタートラムの舞台に立つことは念願だった
――3年ぶりのストレートプレイ作品への出演になりますが、オファーを受けた時のお気持ちを聞かせてください。
昨年朗読劇をやっていたので、久しぶりという感覚はそれほどなかったのですが、シアタートラムで公演できることへの喜びがとても大きかったですね。これまで世田谷パブリックシアターには2度立たせて頂きましたが、シアタートラムの舞台に立つことは念願だったので。
さらに、演出の稲葉さんや劇作のオノマさん、共演者に咲妃さんらがいらっしゃると知って、まず楽しそうだなと思いましたし、役者にとって特別な劇場であるシアタートラムで、このメンバーと作品を作れることへの期待感がありました。
――本作では、イェルマの夫・フワンを演じられますが、役柄の印象についてはいかがでしょうか。
思ったより繊細な役柄だと感じています。原作から設定が現代に置き換えられて、さらにロルカ自身のエッセンスも盛り込まれていて。非常にセンシティブな役でもありますし、正直、まだ役の輪郭が見えていない部分もあります。作品としてどういう方向に向かっていくのかも含めて、難しいなというのが今の正直な印象ですね。
稽古はまだ本読みをしたばかりで、あまり作り込まずに臨んでいる段階なので(取材時)、これからどう進んでいくのだろうと思いながら取り組んでいる最中です。
シアタートラムという空間でこれをどう表現するんだろうというト書きもたくさんあって、視覚的な仕掛けも多くなりそうな作品だと感じています。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?
すごくいい空気感だと思います。稲葉さんもオノマさんも、役や作品についてとてもよく話してくださるんですよ。ディスカッションをしながら、一場面一場面の解釈をそれぞれ出し合って、作品を作っていこうとしている段階ですが、あまりに話が盛り上がって、僕らが入る隙がないくらいです(笑)。
和気あいあいとした雰囲気の中で、自分の出演シーンではなくても、みんなで1つのシーンについてイメージを共有したりして。身の上話も織り交ぜたりしながら、とてもいい空気感で進んでいます。
――イェルマ役の咲妃みゆさんとは共演シーンも多いかと思いますが、印象はいかがでしょうか。
とてもお茶目で明るくて、ひまわりみたいな方です。その一方で、どこか儚さや可憐さもある方だなと思います。
役作りについてのディスカッションはこれからですが、フワンという役について、咲妃さんが「議論したい」とまっすぐに言ってきてくださって、それがすごく素敵だなと思いました。こんなに面と向かって「議論したい」と言われることはなかなかないので。ストレートな方ですし、きっとこちらの言ったことに納得できなければ、「それは違うよ」と言ってくれそうな方なのかなと感じています。とても信頼できる方です。
――いい座組になりそうですね。
そうですね。(渡辺)いっけいさんがまとめ役として大きな存在でいてくださるので、すごく安心感がありますし、とてもバランスの取れた座組だと思っています。

「それぞれの登場人物に共感できない」という視点が面白い
――本作は、スペインの詩人・劇作家ロルカの傑作「イェルマ」を現代的な視点で再構築していますが、台本を読んだ印象はいかがでしょうか。
とても難しいと思いました。2回目を読むのが躊躇われるくらい難しくて、「何を伝えようとしているんだろう」という部分が自分の中でとても多かったです。
みんなが口々に言っているのは、「それぞれの登場人物に共感できない」ということです。その視点がすごく面白いなと思って。稲葉さんが「それぞれの登場人物に共感できないからこそ、この作品が作れた」とおっしゃるくらい、それが創作の原動力になっているみたいで。
観に来てくださった方も、登場人物のある部分は理解できるけれど、すべてに共感できるわけではなく、「私はこう思う」というものが生まれる作品なのではないかと思っています。僕らが読んでいる段階でも難しいので、それを咀嚼した上で、観に来てくださった方に優しく受け渡したいと思っています。
――登場人物に共感できないという作品も珍しいですね。
この作品で唯一まともだとみんなが言っているのが、フワンの姉くらいなんです。親のしがらみの中で一緒に暮らしているという環境は、現代でも意外と多いかもしれませんし、共感しやすいと思うのですが、フワンにしても「何をやっているんだろう」と思う場面がたくさんあるので。そのギャップがまた面白いのかなと。
観た後に他の人と「これはどういう意味だったんだろう」と議論したくなるような作品だと思います。

渡邊さんが“幸せ”だと感じる瞬間とは……!?
――本作では“幸せの形”も大きなテーマとなっていますが、渡邊さんが幸せだと感じる瞬間はどんな時ですか。
地方での仕事ですかね。地元はもちろん一番うれしいのですが、カレンダーを見ていて「この県に行くんだな」と気づく瞬間もテンションが上がります。馴染みのない土地に行くのが結構好きで、自分ではなかなか選ばないような地域に行ける機会があると、遊びに行くわけではないのですが、そこでおいしいものが食べられたりするので、そういうのが幸せだなと思いますね。
――今回は、地元の宮城を含む地方公演もありますね。
楽しみですね。その土地のおいしいものが食べられたらいいなと思います。

――地元では共演者の皆さんを案内されたりも?
いや、多賀城周辺のお店はほとんど知らなくて、それこそファミレスくらいしか分からないので、申し訳ないのですが、まったく案内できないですね(笑)。
――本作では、変容する社会の中で、家族とは何か、自分とは何かを問いかける内容となっていますが、家族だからこそ言えないことや、逆に家族だからこそ言えることはありますか?
家族とは仲がいいので、なんでも言えてしまう気がします。兄弟も仲良しですし、自分から積極的には話さないけれど、聞かれたら隠すことは何もないくらい仲が良いです。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:梁瀬玉実
公演概要

『Yerma イェルマ』
【日程】2026年9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)
【会場】シアタートラム
【作】オノマリコ
【構成・演出】稲葉賀恵
【出演】咲妃みゆ 渡邊圭祐 小林亮太
樋之津琳太郎 大場みなみ 青山祥子 前東美菜子
渡辺いっけい
【東京公演】
2026年9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)
シアタートラム
●チケット発売中
料金(全席指定・税込):
一般: 9,000円
高校生以下: 4,500 円(当日要証明書提示)
チケット取扱い:
世田谷パブリックシアターチケットセンター https://setagaya-pt.jp
03-5432-1515(10:00-19:00)
※その他プレイガイドでも取扱いあり
【主催】公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】世田谷パブリックシアター
【後援】世田谷区
【お問い合わせ】世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(10:00-19:00)
https://setagaya-pt.jp
■ツアー公演
【兵庫公演】
10月17日(土)~18日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【宮城公演】
10月31日(土)~11月1日(日)
多賀城市民会館 大ホール
【愛知公演】
11月7日(土)~8日(日)
東海市芸術劇場 大ホール
【公式HP】https://setagaya-pt.jp/stage/32248/
【公式X】@Yerma_sept
【公式Instagram】@yerma_sept
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