藤ヶ谷太輔主演。舞台『野鴨-Vildanden-』フォトコール&取材会レポート
藤ヶ谷太輔主演の舞台『野鴨-Vildanden-』が、9月3日(土)より東京・世田谷パブリックシアターにて、9月21日(水)より兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演される。
本作は、シェイクスピア以後、世界で最も盛んに上演されてきた劇作家とも言われるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが1884年に発表した珠玉の名作。
イプセンは、<納屋>を”嘘”、<外の世界>を”真実”、そして<野鴨>を我々”人間”に例えることで、自己欺勝によって自らを守ろうとする人間の弱さや、独りよがりの正義を振りかざす愚かしさを見事に描き出した。
演出には上村聡史、主役のグレーゲルスにはKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔、妻と娘に恵まれ幸せに暮らしているグレーゲルスの幼馴染・ヤルマールを忍成修吾、豪商ヴェルレと関係のあった過去を持つヤルマールの妻・ギーナを前田亜季、ヤルマールの父・エクダル老人を浅野和之が演じる。
今回は、プレスコールと藤ヶ谷太輔・忍成修吾・前田亜季・浅野和之が登壇した取材会の様子をレポート!
初日を迎えるにあたり、心境を聞かれると藤ヶ谷は「ここの劇場も、イプセンの作品も、上村さんの演出も、全てが初めてなので自分の中で挑戦しているなという気持ちですし、挑戦させていただける環境があることは本当にありがたいなっていう想いです。この作品は難しく思われるかもしれませんけども、今のこの現代に通ずるものがたくさん入っていますので、観て感じていただければなと。そのためには、我々はしっかりとこの繊細なお芝居をお届けしなきゃいけないんだなという、ドキドキと興奮とちょっとの怖さと、いろいろ入り混じってるところでございます」と正直に述べた。
さらには昨夜セリフを飛ばす夢を見たと付け加え、「最悪な状態ではございますけど、皆さんを信じて、皆様からエネルギーをもらって、与えて、このカンパニーで最後まで走り抜けられればなと思います。初めてのミュージカルの時も同じような夢を見ましたね。夢の中では、自分でどうしようとあたふたするというよりは、キャリアが豊富な先輩方にどうにかしていただこうという感じで、スッと立ってる感じがあったので……もしそうなった際には、フォローをお願いします(笑)」と隣に並ぶキャストたちに視線を向けた。
忍成は「今日が初日で、初めてお客さんに観てもらえるってすごく楽しいです。お話をいただいて本当に面白い作品だなと思っていて、共演者の皆さんは本当に素晴らしい方たちばかりで。どうしようと思いながらドキドキして、稽古中もずっと不安な中やってきたんです。作品自体はとても素晴らしいものが出来上がって、僕もお客さんとして観てみたかったなって(笑)。それくらいとても素敵な舞台になっています。……あれ、台詞飛んじゃった(笑)。でも、僕もみんなを信じて、先秋楽まで走り抜けられたらいいなと思ってます。よろしくお願いいたします」と述べた。
前田は「初日を迎えられることが奇跡みたいだなと思っております。この時期に観に来てくださる方もいろいろ不安ななか来られると思うので。一生懸命いいものを観せたいなと思います。140年前に書かれた物語なんですけど、今に通ずる普遍的なもので、ハッとさせられるような台詞・物語なので、観てくださる方もなにか感じていただけたらなと思います」と述べた。
浅野は「上村さんは非常にきめ細かい演出をされる方で、今回は時間をとっていただいて、テーブル稽古からしっかりやっていきました。通し稽古でこんなにたくさんできないだろうっていうくらいやってきたので、本当に質の高いお芝居になってると思っています。若い方に囲まれて、僕に何かあったら助けてください。あと、ただ一つ、季節を間違えましたね。この作品は暑い時にやる芝居じゃないです(笑)」と自身の衣装や髭を触りながら話す。
正義感の強い役を演じる藤ヶ谷は、役と自身の共通点や役作りにおいて参考にした人がいるのかを聞かれると「正義感を振りかざすタイプは苦手なんですけど(笑)。でも、きっと自分も無意識に正義感を振りかざしているとこもあるだろうなとか、考えました。やっていてすごく難しいですけど、楽しいです。参考にした人は……ノーコメントで(笑)。いやいや、いないですよ! テーブル稽古を1週間くらいやらせていただいて、自分の役以外とか書かれていないシーンとか、1冊の台本をみんなでとにかく話し合いました。年齢差はどうか、久しぶりに会うまではどこにいたのか、歴史のことも上村さんに教えていただきながら。自分の役を自分で作ったというよりは、皆様の意見を聞きながら、皆様と一緒に1人1人のキャラクターを作れていけたのかなっていう新しい体験でした。深く深く台詞を理解しなきゃいけなくて、改めて台本の大切さを学びました。
僕は”表現する”っていうことをやり続けたいので、いろんな作品・演出家の方に出会って自分を変えていただきたいですし、自分の新たな一面を見てみたいなっていう思いがずっとあるので。すごくおこがましいかもしれませんが、例えば、キスマイのファンの皆さんが僕が出ているから観るというだけじゃなくて、”演劇って面白いな”とか”次はこの演出家の方の作品を観てみようかな”とか。逆に、観終わってから”藤ヶ谷って人はキスマイの人なんだ”と思っていただくこともあるかもしれませんし、いろんな広がりの可能性があるので。怖がらずに挑戦し続けたいなと思ってます」と率直に語った。
藤ヶ谷への印象について、忍成は「さすがだないうか、すごいなというか。僕は稽古は自分のことでいっぱいいっぱいで、台本を見てるか怒られてるかで、あまり喋る余裕がなくて。稽古を見てる時の印象としては、とても美しくて、色気が……。雑談している時は笑顔が素敵で可愛らしいんです。でも、舞台になったらオーラが違って、すごく色っぽいですね。稽古を重ねていくうちにコミュニケーションをとるようになって、勘が鋭い方だなと思いました」と話した。
前田は「稽古場では真面目で、すごく真剣に取り組まれていて。あと、ダメ出しで”色気が漏れすぎているからちょっと抑えて”って言われていました(笑)」とエピソードを暴露。
すると、藤ヶ谷は「すごく嬉しいことですけど、色気を出してる意識は全くないですし、そういう作品じゃないので(笑)。自分でコントロールできるようなものでもないですし。でも、僕の役はある意味、美しさみたいなのも必要なキャラクターでもあるので、そういうところに活かせていければなと。まあ、普段の色気よりもちょっと落とした状態で、皆さんにお届けできれば(笑)。普段がすごい高いんで、20%くらいで……。」と笑いを誘った。
ダメ出しを台本に書き込みながらおにぎりを食べ、次のシーンの確認をしているうちに10分休憩が終わってしまう日々の繰り返しで、休みの日に1人で車で海を見に行ったという藤ヶ谷は「稽古でもグループでの仕事もずっと室内にいるので、ちょっと解放されたいなって。少し前の夏休み期間だったので、海の家で若者たちがキャッキャしていて、俺も入りたいなと思いましたけどこらえて。でも、移動中の車でも稽古の時の音声を聞いていたので結局はリフレッシュはできていないんですよね(笑)」とストイックな性格が垣間見えた。
忍成は「気分転換というか、子どもが生まれたばかりで、お芝居のことを考えてるか家のことを考えてるか。全く違うこと考えているんで、それが切り替えになったかな、と。いつスーパーに行って何をストックするかとか、終わったらすぐ帰って風呂に入れなきゃいけないし、家にないものリストが妻から送られてきてどこの店で買えばポイントが高いかなとか。稽古中にも子どもの写真や動画を見ていましたね」とパパになった一面が垣間見られた。
最後に楽しみにしているファンに向けてのメッセージを求められると、浅野は「しっかりした稽古をやって、いい座組で舞台に立てると思うので、楽しみにしていてください」と、前田は「今日までたくさん稽古をしてきました。舞台美術であったりとか照明の光だったり、本当に繊細に作っておりますので、劇場でぜひ体感していただけたらなと思います」と、忍成は「それぞれのキャラクター1人1人が面白くて、いろんな視点から楽しめる舞台になっていると思います。ぜひ劇場で楽しんでいただけたらと思います」と、藤ヶ谷は「全てにおいて、細かいところまでこだわって作りましたので、皆様に届くと信じて我々は表現し続けます。今に通ずるものがたくさん入っていますので、しっかり観ていただけたらな、と。劇場でお待ちしてます」と述べ、取材会は終了した。
文・撮影:水谷かな子
公演概要
『野鴨-Vildanden-』
作:ヘンリック・イプセン
訳:原 千代海
演出:上村聡史
出演:
藤ヶ谷太輔 忍成修吾 前田亜季 八幡みゆき
伊達 暁 吉野実紗 山森大輔 齋藤明里 村上 佳
大鷹明良 浅野和之
スタッフ:
美術:長田佳代子 照明:沢田祐二 音響:加藤 温 衣装:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹 演出助手:渡邊千穂 舞台監督:大友仁義
企画・制作:TBS/サンライズプロモーション東京
【東京公演】
公演期間:2022年9月3日(土)~18日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】
公演期間:2022年9月21日(水)~25日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式HP:https://nogamo2022.com/
公式Twitter:@nogamo2022