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『ダブルブッキング2nd!』開幕!「2 劇場同時上演演劇”がふたたび」

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観劇中にキャストが“別の劇場”へと⾛り去っていく――。前代未聞の演劇『ダブルブッキング』の完全新作『ダブルブッキング2nd︕』が、2025年4⽉5⽇(⼟)より開幕。本作は紀伊國屋ホールと新宿シアタートップス、2つの劇場を舞台に、同時進⾏で⼀つの物語が紡がれていくという⼤胆な演劇プロジェクト。両⽅を観劇することでより深く物語が浮かび上がる仕掛けは、今回も健在だ。

初⽇を翌⽇に控えた4⽉4⽇(⾦)には、ゲネプロおよび囲み取材が実施され、⾺場良⾺、久保⽥秀敏、杉江⼤志、松本幸⼤、⾼⽥翔、⽔⾕あつしの6名が登壇。本作ならではの臨場感や、稽古を通して感じた⼿応え、そして作品への思いをそれぞれの⾔葉で語った。

ジャッカルのリーダー・菊島永輝を演じる⾺場良⾺は、「1分以内の移動を成⽴させるために、シーンの尺を調整して…と、常に全体のバランスとのせめぎ合いだった」と裏側の苦労を明かしながらも、「決して簡単な企画ではないけれど、お客様にとって唯⼀無⼆の“⽬撃体験”になると信じている」と、作品への⼿応えをにじませた。

『藤⾬』を率いる藤崎⻯⼀役の久保⽥秀敏は、前作からの続投。「絶叫劇団“藤⾬”とナチュラル芝居の“ジャッカル”という、まったくカラーの違う芝居を1本の作品で両⽴させる。序盤では声が枯れる⼈も続出した」と笑いながら、「チームワークと瞬発⼒が問われる現場。40 近い我々の⼼肺機能が鍛えられる作品です(笑)」と舞台裏の熱を語った。

松丸 優役の杉江⼤志は、「この企画を最初に聞いたとき、“プロデューサー頭おかしいな”と思いました(笑)」と冗談を交えながらも、「普通ならやらないことに挑戦できる場をいただけて嬉しい。演劇として届けたい“中⾝”も、しっかり伝えていきたい」と⼒を込めた。また、「袖じゃなく、劇場の外に出ることで、お芝居を“つなぐ⼒”が鍛えられている」と新たな演劇感覚への挑戦を語った。

興梠浩正役の松本幸⼤は、「本番⾒てください、かなり叫んでます(笑)」としながらも、「これまでにない“とんでもない役”を演じられたことで、役の幅が広がった」と語り、「劇場の階段が…マジでしんどい︕ でもそれも含めて全部が楽しい」と充実の表情を浮かべた。

⽇下部浩介役の⾼⽥翔は、「劇中劇の稽古が楽しくて、⾃分の“弾けるポイント”を発⾒できた気がする」と笑顔を⾒せつつ、「芝居中に劇場外に出て、タイムを意識しながら戻ってくる。この作品でしか得られないスキルがある」と、2劇場同時上演ならではの体験について触れた。

そして、シリーズ唯⼀の皆勤キャストである⽔⾕あつし(チャーリー若松役)は、「2008年は真夏、2013年は雪の中、2021年は気温38度。そして今回は春。いちばん⾛りやすい季節です(笑)」とこれまでの変遷を振り返りつつ、「観客が“今ごろ⾛ってるのかな”と想像してくれることで、劇場に⼀体感が⽣まれる。そんな演劇はなかなかない」と語り、60歳を迎える今年も「もちろん、⾛ります︕」と笑顔で締めくくった。

『ダブルブッキング』が最初に上演されたのは2008年。ひとりの男が秘密裏に2つの劇団をブッキングし、同時に舞台に⽴とうとする前代未聞の企てが実⾏された。あれから17年――今作『ダブルブッキング2nd︕』では、当時、渦中にいた男・藤崎⻯⼀(久保⽥秀敏)が、“再び”演劇界に⾵⽳を開けるべく、新たなダブルブッキング公演を仕掛ける。

今作では、最初から“公認のダブルブッキング”という前提で、2つの劇団が合同公演に挑戦。公演の幕が開くわずか2時間前から、ゲネプロで想定外のトラブルが続発し…というスリリングな展開が描かれる。

紀伊國屋ホールを拠点とするのは、スマートな印象の演劇ユニット『ジャッカル -Jackal-』。 菊 島 永 輝 ( ⾺ 場 良⾺)、松丸 優(杉江⼤志)、⽇下部浩介(⾼⽥翔)、秦 邦和(三好⼤貴)といったキャスト陣が中⼼となり、ファンタジーテイストの劇中劇「スープストッカーSAM」を上演する。

⼀⽅、新宿シアタートップスでは、アングラ⾊の濃い劇団『藤⾬ -Fujisame-』が「阿弖流為の秘匿」を上演。

藤崎(久保⽥秀敏)、興梠浩正(松本幸⼤)らが、“絶叫劇団”の名に恥じないテンションで観客を巻き込む。

また、シリーズ唯⼀の皆勤キャストである⽔⾕あつしが、花屋の店主にして劇団『天空旅団』元座⻑代理のチャーリー若松役で登場。2008年初演から継続して出演し、今回も変わらず劇場間を駆け抜ける。

本作では、キャストが劇中でリアルに2つの劇場を⾏き来する。セリフを繋ぎながら劇場の外に出て、数分後には別の劇場の舞台に現れる。観客はその「移動の痕跡」から、もう⼀⽅の劇場で何が起きているのかを想像せずにはいられない。⾒えないものに想像を巡らせる、まさに演劇的な体験だ。

今回、観劇したのは紀伊國屋ホール。ステージ上では、『ジャッカル』による劇中劇「スープストッカーSAM」が上演された。⽴ち上げメンバーである菊島と松丸の確執、菊島を慕う⽇下部、どこかつかみどころのない秦。

それぞれの演劇への熱が交錯し、観客もその熱に巻き込まれていく。演劇が好きだからこそぶつかる菊島と松丸のシーンでは、それを演じる⾺場と杉江の芝居愛が胸に響いた。特に、感情がぶつかる⼀場⾯で杉江が⾒せた鋭さと脆さの揺れ幅は、舞台全体の緊張感を⼀気に引き上げていた。

⼀⽅で、藤⾬サイドは、久保⽥演じる藤崎の芝居にかける情熱的な視線や、松本が会⾒で「こんな役を演じたのは初めて」と語った興梠の濃いキャラクターも必⾒。紀伊国屋ホールではその全貌が⾒えなかっただけに、絶叫劇団という看板を掲げる彼らが、新宿シアタートトップスでどんな“叫び”を放っているのか。その答えを確かめに、もう⼀⽅の劇場へ⾜を運びたくなった。

役者の芝居が熱を帯びていく⼀⽅で、常に“⾛る”という選択肢があるのも本作ならでは。予定通りに進まない、誰かが間に合わない、そこに降りかかる予想外のトラブル…。舞台上で⽬撃できるのは、綿密な計算と即興性が拮抗する、スリリングな“⽣”のやりとりだ。

演劇の“想像⼒”と“ライブ感”をこれでもかと詰め込んだ『ダブルブッキング2nd︕』。2つの劇場をめぐる唯⼀無⼆の演劇体験は、4⽉13⽇(⽇)まで上演中。観劇後、「もうひとつの劇場では、いま何が起きていたのか︖」という問いが残るはず。答え合わせのためにも、ぜひ両劇場に⾜を運んでほしい。

舞台写真

撮影・⽂ 双海しお

ストーリー

2008 年、新宿の⼆つの劇場に同時に出演することを企てた男がいた。
演劇ユニット「デニスホッパーズ」の主宰柏⽊幸太郎は、新宿シアタートップスで⾏われる⾃分たちの公演と、同時刻に紀伊國屋ホールで⾏われるアングラ劇団「天空旅団」の公演の両⽅に出演しようと企てた。ところが秘密裏に⾏おうとした柏⽊の企ては、本番前に両⽅の劇団にバレてしまい失敗に終わった・・
そして現代、2025年、新たにダブルブッキングを企てた男がいた。男の名は藤崎⻯⼀。藤崎は元天空旅団の役者で、テレビや映画で活躍していたのだが、⼈気に翳りが⾒え始めていた。このままではいけない。なんとかもう⼀度這い上がらなければ・・そう決意した藤崎は、「藤⾬」というユニットを作り、⾃ら作・演出をてがけ、シアタートップスで公演を打とうとした。17 年前、客席との距離の近さに⾜がすくんだ新宿シアタートップスに⽴ちたい。そして再び注⽬を集めたい・・そう考えた藤崎の頭に浮かんだのは、「ダブルブッキング」という⾔葉だった。実は藤崎は、2008年の柏⽊のダブルブッキング未遂を⽬撃し、代わりに急遽天空旅団の舞台に⽴ったのだ。早速藤崎は実現に向けて動き出す。「藤⾬」と同時期に紀伊國屋ホールで公演を⾏う団体を調べると・・それは、旧知の友である役者・菊島がリーダーである「ジャッカル」という演劇ユニットだった。
役者とスタッフ、それぞれの思いがぶつかり合い、劇場に渦巻く熱は時間を追うごとにあらゆる⽅向にヒートアップしていく。開演まであと数分。果たしてダブルブッキングは成功するのか・・

公演概要

『ダブルブッキング2nd!』

作・演出:堤 泰之

公演⽇時:2025年4⽉5⽇(⼟)〜4⽉13 ⽇(⽇)
会場:
新宿シアタートップス(東京都新宿区新宿3-20-8 WaMall TOPS HOUSE ビル4階)
紀伊國屋ホール(東京都 新宿区 新宿3-17-7 紀伊國屋書店新宿本店4F)
※2劇場同時上演

出演:
ジャッカル
《キャスト役》
菊島永輝 ⾺場良⾺
松丸 優 杉江⼤志
⽇下部浩介 ⾼⽥ 翔
秦 邦和 三好⼤貴

《スタッフ役》
グエン・ヴァン・ミン 村⽥洋⼆郎
三⽊健太(舞台監督助⼿) ⼯藤⼤夢
野津⽥隆(舞台監督) 海⽼澤英紀
⽣部桐⼦(作・演出) 井川花林
⼩久保⿇耶(⾐裳) 内⽥敦美
⽥村 楓(制作) 森⾼菜⽉

藤⾬-hujisame-
《キャスト役》
藤崎⻯⼀ 久保⽥秀敏
興梠浩正 松本幸⼤
岬エリカ 難波なう
⼀之瀬るみ ⾼橋紗良
河合静代 moca

《スタッフ役》
井出嘉郎(演出助⼿) 佐伯 亮
陣内真琴(制作/藤崎の事務所社⻑) ⽵本かすみ
熊野三千⼦(舞台監督) 堀江あや⼦
⽯沢富之(制作) ⽉⽥悠貴
チャーリー若松(元天空旅団座⻑代理) ⽔⾕あつし

チケット(全席指定・税込): シアタートップス 8,000円/紀伊國屋ホール S席7,000円 A席5,500円
公式サイト:https://no-4.biz/db2nd/

公演に関する問い合わせ︓株式会社エヌオーフォー【NO.4】 no.4.stage@gmail.com

企画・制作︓エヌオーフォー【NO.4】

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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