西川大貴インタビュー ミュージカル『雨が止まない世界なら』 「クロネコチャンネルがみんなの交流の場所になれたら」
――「クロネコチャンネル」についても伺いたいのですが、開設から一年が経ったということでチャンネルを開設された理由について、改めて聞かせていただけますか。
このコロナ禍が大きなきっかけになったのは間違いないです。でも、「ミュージカル俳優が、普段感じていることを等身大に発信できるチャンネルがあったらいいのに」とコロナ禍になる前から感じてはいて。作品の宣伝という形ではなく、一人の人間として思っていることを発信するチャンネルがないことがずっと疑問だったので、それなら自分がやってみようと。
まず、実際に舞台を観に行って、その感想動画を上げたいなと思っていたんです。今チャンネルにはミュージカル『ビューティフル』やミュージカル『パレード』などの感想動画が上がっています。「僕はこう思った」と発信していくことで俳優目線を共有できたり、実際に観劇した方からもコメントをもらうことで、「観客の人はこう思ってるんだ」ということがわかるし、そういった交流ができることってすごく今っぽいなと感じたんです。
それと、特にミュージカルの業界において、俳優が等身大の意見を発信するのが自然とタブーになっているなと思ったんです。何かをバンッと言うときに告発みたいになっちゃうのが気持ち悪く感じて。
例えば、今はできないですけど、出待ちのお客さんへの対応についてとか。俳優自身、それぞれに思うことがあるんですよね。出待ち対応はしないと決めている人もいれば、それも含め俳優の仕事だと思ってる人もいる。作品や体調に合わせて対応を変える人もいるし。それぞれ色々なスタンスがあるので、個人で発信していけばいいんだけど、どうしても告発みたいになってしまいがちというか。そうではなくて、もっと普通に俳優が一人の人間として気軽に、「僕はこういう風に思っています」とYouTubeで発信するべきだと思ったのも大きいです。
――コロナ禍がきっかけではあるけど、その前からずっと構想はお持ちだったんですね。
そうですね。顔が見えて言葉で伝えられるというのは情報量としては一番多いし、Twitterの文字情報だけだとどうしても伝わらないことってあるじゃないですか。なにかお願いをするにしても、意見を言うにしても、必要以上に棘のある書き方になってしまったりとか。
――チャンネルとしてやられていると、たしかにフラットに発信しやすいですよね。
そうなんですよ。ミュ―ジカルについてのニュース番組も文字だけだと難しく感じる情報でも、動画だと少し見やすいのかな、とか。ニュース番組としてやっていくことによって僕も勉強になるし、視聴者の方と一緒に学んでいけたらな、って。それで、また違う視点から演劇を観る人が少しずつ増えていくかもしれないし。それもあってニュースの企画も、ずっとやりたいなと思っていたんです。
――海外の情報なども発信していただけているので、すごく勉強になっています。その他にもいろいろな企画がありますが、どのようにコンテンツ内容は決められているのでしょうか?
やりたい企画がいろいろとあるんですよね。最初は、作品を観た感想を喋ることをメインにしようと思っていたんですけど、コロナ禍というのもあって、俳優が率直に、今何を思っているかを発信するのが大事だなと思って、まずは対談という形でスタートしました。
それを皆さんに受け入れてもらえて、今は対談がメインコンテンツになっているのは予想していなかったですね。でも、ずっと続けていきたいと思っているし、それとは別にニュースや舞台の感想や、さっきもお話ししたような、俳優が等身大の自分の意見を話せるようなものにしたいなと。
チャンネルとしては何かに絞った方が見やすいなとは思うんです。ずっと歌っていたり、対談していたり。でも、全部必要なことだと思っているので。対談だけ観たい人や歌だけを聴きたい人にとっては、ちょっとノイジーなのかもしれないですけど、今はいろんなコーナーをやっていくのが自然なんじゃないかと思っています。
あとは、 “バズらせるには”みたいなことも考えないわけではないんですけど、狙いに行き過ぎると僕らがやろうとしているクロネコチャンネル的には違うのかなって。まあニュースで突然バズるとは思っていないんですけど(笑)。だけど、それを必要だと思ってくれている人もいるし、色んな意味でエネルギーが続く限り、バラエティーに富んだコンテンツを出していけたらなと思っています。
――ちなみに対談相手は、西川さんがお話を聞きたい方にオファーされていらっしゃるのでしょうか?
基本的にはそうですね。もちろん、スタッフから提案がある場合もありますけど。舞台の制作会社や運営側にもプロモーションの場としてクロネコチャンネルを使っていただけたらなと思うので、何かあったらオファーどしどしよろしくお願いします(笑)。
今は俳優の方との対談が多いんですけど、本当はクリエイターやプロデューサーのようなスタッフ側との対談もやってみたいと思っているんです。スタッフ側と俳優って現場によってはすごく隔たりがあったりするので、込み入ったところまでは話さないというか。だから、お互いどう思っているんだろうと思っている方も多いと思うし、少し話したらもっと簡単に事が進むのでは?と思うことが、現場でも多々あるので。
なので、プロデューサーやクリエイターと俳優が交流できる場になったらすごくいいなと思っています。対談という形がいいのかはわからないんですけど、例えばプロデューサーの方がクロネコチャンネルに出演してくださったら、俳優はそれを観るじゃないですか。それで結果的に、クロネコチャンネルが交流の場所になっていくのが一番理想的というか。そういう意味でのバズり方はしてほしいなと思います(笑)。