作・演出:藤田貴大×丸山隆平(SUPER EIGHT)×持田将史(s**t kingz)――『water』開幕! 京都を歩き、記憶を辿って生まれた半自伝的作品。
9月27日(日)より10月25日(日) まで東京・東京グローブ座、11月7日(土)より10日(火)まで京都・京都劇場にて、舞台『water』が上演される。
『water』は、丸山隆平の記憶の断片を散りばめながら、藤田の視点で見つけた京都という土地、そして虚構の世界を織り交ぜて描いた半自伝的作品。
本作は、丸山が演劇団体マームとジプシーの舞台を観劇したことをきっかけに藤田の作品に興味を持ち、その後2人が出会ったことに加え、折しも藤田が京都でリサーチを進めていたこと、そして丸山自身が京都出身であることなど、いくつもの偶然が重なり動き始めた。
創作にあたって2人は対話を重ねるだけでなく、実際に京都を訪れ、丸山が幼少期から親しんできたゆかりのある場所をともに巡った。当時の風景や記憶を辿りながら語られたのは、特別な出来事ではなく、誰もが持っているような幼少期の記憶や地元での日常だった。そこから生まれた『water』は、観客それぞれの記憶や原風景にも重なっていく作品。
主演:丸山隆平が演じるのは、「わたし=丸山隆平」。藤田が創り出す虚構の世界の中で、丸山自身が“丸山隆平”として舞台に立つという、新たな表現に挑む。
共演には、青柳いづみ、伊藤万理華、植木祥平、内田健司、平井まさあき(男性ブランコ)、山本直寛。さらに、持田将史(s**t kingz)と、さまざまなジャンルで活躍する表現者たちが集結。
今回は、作・演出:藤田貴大、主演・丸山隆平、共演の持田将史が登壇した囲み取材の様子と舞台写真をお届けする。
囲み取材レポート

本作は、丸山隆平の故郷・京都を舞台にした半自伝的な作品。タイトルの『water』には、丸山の故郷である京都の土地と「水」をめぐるつながりが込められているという。
「丸山さんの出身地の京都という土地を調べていくと、水ということにどんどんつながっていったので、『water』というタイトルにしたかったんです。それから、丸山さん自身の幼少期からグループになって~という流れも描いているので、『water』というタイトルにしました」と藤田。
京都には数多くの川が流れており、「どこを歩いても川にぶち当たる」土地と語った。そんな京都の街を、藤田と丸山は3日間かけてともに歩いた。
丸山「一応プランは立てていたんですよ。地元にお迎えするときに。でも、行く道の間で、『この話をしよう』と思っていたところではない脇道に、ぽつんぽつんと言うはずではなかったエピソードが散りばめられていたりして。僕にとってはちっちゃなエピソードだったりするんですけど、藤田さんに着目してもらったりもしました。そういう本当に些細なことも、元をたどっていく中で思い起こされたりして」
そう振り返る丸山は、「僕から見た地元と、藤田さんみたいに僕の地元を初めて歩く人と歩くというのは、こんなにいろんな発見があったり、視点の違いがあるんだなと、とても不思議な体験でした」と語る。

いろいろな発見もあったのかという問いに丸山は、「見慣れた景色ではあるんですけど、自分の地元を、これから仕事でご一緒する方を案内するって、なかなかやらないじゃないですか。自分にとっては、そのときの感情とか、『このとき落ち込んでいて』とか、あるけど、藤田さんからしたら何のこっちゃの話だったりする。でも、だからこそ、僕には見えないところが藤田さんの視点には見えたりするんだと思います」と語った。
さらに、本作では藤田の視点から切り取られた京都の街を通して、観客自身が故郷を思い起こすこともできるという。
「藤田さんの視点から見た京都という街の特殊性だったり、独特さだったり、京都という街のいろんなものが入り交じっている部分が切り取られていると思うので。そういう街でもありながら、自分の故郷を思い起こしたりもできるようなお話になっていると思います」と丸山は語った。

また、共演の持田は、稽古期間中に自身で京都へ足を運んだという。
「作品の稽古中にやっぱり京都に行きたいなと思って、稽古終わりに新幹線に乗って京都へ行って、鴨川の辺りを夜中歩き回って。丸山さんの故郷、家の近くの場所もいろいろうろうろして。言葉だけで言うと、ちょっとやばいやつですけど(笑)」と振り返った。
丸山から聞いた店や場所を訪れながら、実際に京都の街を歩いた持田。その経験もまた、『water』という作品を形作る一つの要素となっているようだ。実際に訪れてみることで、改めて京都という土地の魅力を感じたという。

持田「丸山さんから『ここのお店がいいよ』とか、いろんな話を伺って、行ってきました。実際に歩いてみると、本当にいろんな川が流れていて、そこに人がすごく集まっているんだなというのを改めて感じました。鴨川の河川敷に行くと、昼間と夜でいる人たちの雰囲気が少し違ったりするんですけど、いろんな目的でみんなが川沿いに集まって、いろんな話をしている。1日中そこを歩き回ることで、そういうことが見えてきたりして。やっぱり、人が集まりたくなる場所なんだなというのを再認識した旅でした」
藤田「その鴨川で踊ったんだよね?」
持田「はい、踊りました(笑)。すごく水の音がきれいだなと思って。夜中に歩いていたら真っ暗な場所にたどり着いたんですよ。周りに人がいなかったので、『今だったら誰にも怖がられずに踊れる』と思って、川の音を聞きながら一人で踊って。ちょっと川と一体になったような気持ちになって帰ってきました」と照れ笑いを浮かべ、会場を和ませた。

そんな丸山と藤田の出会いは、丸山が藤田の作品を観劇したことがきっかけだった。
丸山「コロナが落ち着いてきて、1席ずつ空けていれば演劇をやってもいい、という状態のときに友人に誘っていただいて。それで観させてもらったのが藤田さんの作品でした。こんな現象を巻き起こせる方々がいるんだ、ということで感動しまして」
藤田の作品に衝撃を受けた丸山だったが、自ら「一緒にやりたい」と伝えたわけではなかったという。
「実は僕は『やりたい』とは言っていないんですよ。『やりたい』なんて口が裂けても言えないほど、本当に美しくも肉体的な世界観を作られているので、まさか自分がそこに立つなんて思っていなかったんです。ただ、事務所の舞台班の方に『すごくいい演劇を観たんだよ』と話したら、『そうなんですね』というのが、どうやら『やりたい』と取られてしまったみたいで(笑)」

さらに、藤田の作品では外部の俳優と一緒に作品を作る機会が決して多くないことも知っていたため、「それ、藤田さんいいって言ったの?」という、ちょっとした驚きもあったという。
その後、丸山が京都の劇場で再び藤田の作品を観劇した際、二人は初めて顔を合わせることになった。
藤田「コロナ禍のときはロビーで面会とかもできなかったんですけど、京都で僕が公演しているときに来てくれて。そこで初めてお会いして。さっきもおっしゃってくれましたけど、同年代だからめちゃくちゃ盛り上がって。わからない話がないんですよね」
丸山と藤田は、世代が近いこともあり、初対面から意気投合。藤田も「今回はキャスト全員そうだよね。結構、世代が近い人たちと作っているので、それで盛り上がった」と振り返る。
そして、初めて顔を合わせてから数カ月後には、藤田と丸山は実際に京都の街を歩いていた。

藤田から見た丸山の印象について尋ねられると、「なんかこの感じですけど、やっぱり不意にちょっと真面目なんですよ。すごく芸に真面目だなと思って」と語る。
「何をしていても、どこかしらで『何か表現に携わりたい』ということを僕に言ってくれる人だから。そういう真面目さも含めて、すごく関わりたいと思わせてくれる人だったので、僕の方から『一緒にやりたいです』と事務所の方にも伝えて、という感じですね」
思いがけない言葉に、丸山は「ありがたいです。もったいないお言葉でございます」と恐縮。「恥ずかしいですよ。褒められるのに慣れていないので、どう話していいかわからない」と照れながらも、嬉しそうな表情を見せた。

そんな丸山が今回演じるのは、半自伝的な本作の中に描かれる“丸山隆平”。自身を題材とした作品で自分自身を演じることについて、丸山は「本当に不思議な追体験」と表現する。
丸山「藤田さんが作られる世界観の中で、僕の中に起こったことが戯曲の中で組み上げられていくわけじゃないですか。僕はその組み上げられたものを、一回自分というものを解体して、もう一回再構築していく。不思議な役の構築の仕方でした」
その難しさは、藤田も実感していたようで、「全く違う人、違うものを演じた方がよっぽど楽だったのでは」と振り返る。
「やっぱり僕が描く丸山隆平と、本当の丸山隆平がもちろんあるから、そこのズレを埋める方が大変そうだったよね」と。
丸山「最初の方にそれは言ってくださっていたんですけど、僕自身、それがどういうことかわからずに『頑張ります』と言っていて。でも、いざ潜っていけば潜っていくほど、藤田さんの書かれる戯曲って、いろんな角度から読むたび読むたび新鮮で、いろんな解釈の仕方がどんどん派生していくんですよ」
その感覚を、丸山は本作のタイトルにも通じる「川」にたとえる。

「それこそもう川みたいに、うわーっと派生していって、『じゃあ、これのチョイスもある、このチョイスもある』となって。毎稽古でそれぞれのキャストだったり、制作の方々が『こういうやり方も、こういう表現もあるよね』と持ち寄って、それを藤田さんが全部吸い上げて、『じゃあ、これは有効にしましょう』と作業していくんです」
約2カ月半にわたって行われたという稽古。「今も楽しいですし、なんか嬉しくて。やっぱり作家って一人で書くので。だから、みんなが楽しんでくれているのが嬉しくて。今日ゲネプロなんですけど、ずっと嬉しい」と藤田。
丸山も「楽しかったです」と応じ、「もちろん、ちゃんとグッと締めるところは締めながらですけど、いい緊張感と集中とともに、みんなで一緒に作るという感じがありました」と稽古場の雰囲気を振り返った。
藤田も「みんなからの提案も今回たくさんあって、それを毎日毎日やっているから、もはや寂しいんですよ」と続ける。さらに、丸山と本作について約4年にわたって考えてきた時間にも触れ、「丸山さんとの時間は4年ぐらいあったから、4年間ずっと考えていたことが、京都公演でぱっと終わっちゃうとなると寂しいなと思って。もう再演してくれと思って」と、作品への名残惜しさをにじませた。

本作の京都公演は11月10日まで。最後の公演を京都で迎えることについて、藤田は「京都劇場というのも、やっぱり丸山さんにとってすごくスペシャルな場所だから、そこをチョイスできてよかったなっていうのは制作とも話しています」と語る。
丸山にとって京都劇場は、現在につながる自身の原点ともいえる場所だという。
丸山「東京グローブ座は僕が初めて一人でストレート芝居(『ギルバート・グレイプ』)をやった場所で、京都劇場は、まだ研修時代のときに初めて板の上に立った場所なんですよ」と懐かしそうに語った。
また、持田と丸山には、今回の共演以前からのつながりもあった。
「番組でご一緒していたりとか、あと振り付けもさせていただいて、グループの曲で『ハリケーンベイベ』という曲がありまして。そのとき振り付けをさせていただいていて。そういうつながりはあったんですけど、お芝居は今回が初めてですね」と持田。
これまでにも仕事を通じた接点はありながら、舞台上で共演するのは今回が初めてとなる二人。そんなカンパニーは、今後京都での公演を迎えることになる。

京都では、丸山がキャストやスタッフを案内するのかと聞かれると、藤田は「案内というよりは、この劇の中で、割といろんな場所が出てくるんですけど、そういうところを巡礼できたらいいなというのは、みんなで話しています」と明かす。
いわば“聖地巡礼”のような京都訪問だが、藤田は「もうこの演劇自体が、聖地巡礼みたいな状態になっている。だから、この稽古場も、いろんな場所にみんなもう行った気になっているからね。丸山さんの頭の中にある場所に、みんな行った気になっているから」と語り、作品を通してすでにカンパニー全員が京都を旅しているような感覚があることを明かした。
さらに、本作では劇中に流れる音やスクリーンに映し出される景色にも、実際の京都で収録した素材が使用されている。
「実際に京都の僕の地元だったり、現場だったりとか、そういうところで音を録って使ったりとか。本当に細やかなところまで、この作品としても大事に大事に、みんなで育てて温めているものなので」と丸山。

最後に、これから劇場を訪れる観客へ向けて、それぞれからメッセージが贈られた。
藤田は「楽しみに準備して待っていますので、ぜひ観に来てください。よろしくお願いします」と呼びかけた。
続いて持田は、「本当に素晴らしい作品に参加させていただいて、すごく幸せだなと思っています。皆さんにとっても、故郷のことや、いろんなことに思いを馳せる機会になるんじゃないかなと思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいと思います」と作品への思いを語った。
そして丸山は、「舞台『water』は、僕だけの物語でもないし、きっと皆さんの物語でもあると思います。ぜひ観に来ていただけると、何か持って帰っていただけると思いますので、いろんな視点で楽しんでいただきたいです。ぜひともたくさんつぶやいていただいて、『ああだ、こうだ』と言いながら楽しんでいただければと思います。それが作品というものの楽しみ方、醍醐味だと思いますので、ぜひともこの機会に。もしかしたら再演するかもしれないですが、今の『water』は今の『water』なので、ぜひ、劇場に足を運んでいただけたらと思います」と、本作への思いを述べ、囲み取材は終了した。

それぞれの故郷や記憶、そして今を生きる自身の姿を重ね合わせながら生まれた『water』。一度きりの“今”だからこそ立ち上がる物語を、ぜひ劇場で体感してみてほしい。
囲み取材撮影・文:THEATER GIRL編集部
舞台写真撮影:細野晋司
作・演出:藤田貴大×丸山隆平(SUPER EIGHT)インタビュー 『water』 「観る人自身へ返ってくる物語になれば」
公演概要

『water』
作・演出:藤田貴大(マームとジプシー)
出演:
丸山隆平/
青柳いづみ 伊藤万理華 植木祥平 内田健司 平井まさあき(男性ブランコ) 山本直寛
/持田将史(s**t kingz)
荒木穂香 猿渡遥 波佐谷聡 船津健太 柳瀬瑛美
【東京公演】
2026年9月27日(日)~10月25日(日)
東京グローブ座
【京都公演】
2026年11月7日(土)~10日(火)
京都劇場
公式サイト:https://water-stage.jp
制作協力:マームとジプシー
企画製作 :東京グローブ座
