田代万里生インタビュー ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』「どのように演じようかワクワク感でいっぱい」(後編)
――田代さんが役者のお仕事をしていて、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
何度も公演を重ねていると、体調やメンタルの変化、慣れなどによってもそれぞれお芝居しているときの体感が異なってきます。ですが、やはりランナーズハイになる瞬間というものがあります。毎回ではないのですが、役に入りきっていて演技をしていることを忘れる時間があるんです。演じている感覚はないのに、でもそれを客観視している自分はいて。いわゆる自分ではない、その役として生きていると実感できると、とてもやりがいを感じます。
そういうときは自分では「物足りなかったかな?」と思う公演でも、お客様にはきちんと届いているんです。もうその人物になりきっているから、全てが正解になるのだと思います。演じよう、歌おうと意識しすぎると、かえってデフォルメした感じになってしまうことがあるので。
特に先日のミュージカル『スリル・ミー』では、演じようと意識せず、役の「私」という人物として存在することだけを目的としていたので、役者としてとてもやりがいを感じた公演でした。
――それは作品ごとにまったく異なったタイミングで、そのような状態になるのでしょうか?
バラバラですね。でもやはり劇場のパワーは大きいので、稽古場でなることはほとんどないです。努力はしていますけど(笑)。
それだけお客様が実際にいらっしゃることはもちろん、衣裳やメイク、照明、音響、オーケストラの力は強いです。自分だけでは完璧にその役にはなりきるのは難しいのですが、やはり衣裳やウィッグを着用させてもらったり、ライティングをもらったり、音響で拡声されたり、そういったことを含めてどんどんその人物になっていく感じがあります。その全てのスタンス込みで役が出来上がっていくのは、やはり最終的に幕が開いた舞台の上ですね。