古川雄大主演、馬場ふみか、浜中文一ら出演。「シラノ・ド・ベルジュラック」ゲネプロ&取材会レポート!
古川雄大主演「シラノ・ド・ベルジュラック」が、2月7日(月)より東京芸術劇場 プレイハウスにて初日を迎える。
本作はエドモン・ロスタンが描いた不朽の名作戯曲で、大きな鼻のコンプレックスに悩みながらも、一人の女性を慕い続けた崇高な魂の物語。
1897年に初演されて以来、日本を含む世界各地で上演が繰り返されてきた。2019年秋から上演されたロンドン公演では、マーティン・クリンプの脚色により、物語の鍵となる”詩”を”ラップ”で表現した前代未聞の新しい「シラノ・ド・ベルジュラック」が誕生し、ローレンス・オリヴィエ賞でリバイバル賞を受賞した。今回は、そのマーティン・クリンプ脚色版が谷賢一による翻訳・演出で日本初の上演となる。
主人公・シラノは、17世紀フランスに実在した詩人にして剣豪。そんなシラノを演じるのは、2007年のミュージカル『テニスの王子様』を皮切りにさまざまな作品に出演し、今やミュージカル界に欠かせない人物となった古川雄大。近年は映像での活躍も見受けられているが、今回は10年ぶりのストレートプレイとなる。
そして、シラノの親友であり思い人であるヒロイン・ロクサーヌ役を馬場ふみかが、ロクサーヌが片思いをする口下手なクリスチャンを浜中文一が演じる。
今回は、公開ゲネプロと古川雄大、馬場ふみか、浜中文一、演出の谷賢一が登壇した取材会の様子をお届けする。
取材会レポート
初日を迎えるにあたって、今の気持ちを聞かれると、古川は「いよいよですね、マーティン・クリンプ脚色版”シラノ・ド・ベルジュラック”が日本初上陸です。演出も、谷さんにしかできない、ここでしか見られないものが出来上がったんじゃないかなと思っております。たくさんの方に見ていただきたい気持ちです。
このタイミングでコロナがまた流行ってしまって、大変な稽古場でしたし、とても緊張感に包まれた状況のなかだったんですけれども、先日開幕した北京オリンピックに向けて選手の皆様が頑張っていることも励みに、僕らも一致団結して頑張れたような気がします。今日という日を迎えられてホッとしておりますが、まだまだ気を抜かずに、気を引き締めて、千秋楽まで頑張っていきたいと思います」と語った。
続けて、馬場は「これだけ大変な状況のなかでこうして開幕を迎えられるということ、こうして舞台上に立ってお客様に見ていただけることが本当に嬉しいです。みんなで稽古を頑張ってきたので、みなさんにしっかり見ていただきたいなと思います」と、浜中は「楽しく見にきてくだされば、こういう状況ということも忘れて楽しんでもらえるように僕らも一生懸命やりたいと思います」と、谷は「今、来てくださるお客様はすごく熱意というか、演劇が必要だと思って来ていただいていると思うので、ここで熱意を返せるのが嬉しいですし、そういった好意に応えられるようなステージを目指して頑張っていこうと思います」とそれぞれ語った。
稽古に関して、古川は「本を読んで、とても大変な稽古になるだろうなと思っていて……実際に大変なところもあったんですけど、谷さんの作り出す柔らかい空気・温かさ、そして時に出る鋭さ。その空気のおかげで、前を向いて稽古をしていけたかなという気持ちです。
谷さんのプランを聞くのがすごく楽しくて、”こういう風に表現するんだ”って。どんどん新しい要素を探している方なので、それにしっかりついて行きたいなという思いで稽古をさせていただいておりました。ピリッとしない空気というか……何をやっても、谷さんがちゃんと笑ってくださるので、そういう一つ一つに僕は助けられました。いろいろと”やってみて!”というフリもあったりするんですけど、へこたれずに挑戦できたと思います」と話した。
馬場は「何回もたくさん本読みをして、こんなに本読みをした稽古は初めてだったんですけど……何回も読んでいくなかでそれぞれの人生や背景を読み解いていったので、言葉一つ一つについてみんなで理解しながらの稽古はすごく新鮮でした」と語った。
浜中は「僕が、最初から出来すぎちゃって……ちょっと完璧すぎやから一回頭冷やしてこいって10日間くらいお休みをいただいてたんですよ(笑)。まあ、それは嘘なんですけど(笑)。コロナに感染しちゃって、10日間ほどお休みをいただいて、復帰後も僕も変な感じになることもなく、温かく迎えてくださって本当にありがたかったです。楽しい稽古場でした」と笑顔で話した。
そういった言葉を受けて、谷は「さっきから”言葉が……”っていう話がありますけど、じゃあ、豊かな言葉ってどうやったら生まれるんだろうって。不安や緊張感があったり、追いつめられたりして出来ることではないと思うんですよ。結果的には、もしかしたら追い詰められるかもしれないけど、そうではなくて、ちゃんと自分のなかで腑に落として耕して発酵させるためには、落ち着いて考えたり、安心してトライしてもらいたいっていう。体と心がほぐれるようにしたいなという思いはありました」と心の内を明かす。
本作の見どころにもなるラップに関して聞かれると、古川は「漠然とラップというものは分かっていたんですけど、知れば知るほど本当に奥深い世界だなと。音楽もそうですし、リズムの取り方・言葉の考え方だったり、何百種類ものジャンルがある。垣根があってないようなもので、それは熟知している人しか分からない奥深い世界だなってものすごく感じました。今回はより分かりやすく音楽を使ったりとか、あえて歌っぽいものを取り入れてみたりとか、いろんなジャンルを取り込んでいると思います。
僕は普段ミュージカルを多めにやらせていただいているので、音を使っていくことに違和感はないんですけど、ただ最初全然音楽がないなかでメロディが生まれる部分がすごく量が多くて、これはどういう風になるんだろうなって、急に歌いだして違和感は生まれないのかなと思っていたんですけど、きちんと仕上がったので、まさにベストな表現の仕方だなと思いました。僕は違和感なく、やらせていただいております」と語った。
谷は「もともとラップは趣味で聞くくらいではいたんですけど、今回でむちゃくちゃ好きになってしまって、この先一生楽しめるもう一つの趣味というか、パートナーが見つかったなという気がするんです。
僕が書いたのを古川さんにラップにしてもらって”こういう風に出来るんだったら、言葉を削ろうか足そうか”とボールを投げ合っているうちに落ち着いてきた。
ラップに音符が乗っているようなところは、もともと僕がやりたかったプランの1つ。さまざまな言葉表現があるけれど、リズムをとって調子よく台詞を言っていくっていうのがあって……気分・感情とか表現欲求とか、愛が深まると音程がついたり。シラノが本当に苦しいなかで切なく好意を語っているのが、一瞬音楽に聞こえるように出来ないか、音楽担当のかみむら周平さんに相談したら”すごくシンプルなメロディーを繰り返している間に気が付くと言葉と合致しているんじゃないか”というアイデアを出してくれて実現した」と裏側を語った。
馬場は「シラノだけではなくて、多分みんなそれぞれコンプレックスを抱いていて、コンプレックスがない人間って世の中にそんなにいないと思うんです。見ていただく皆様にもコンプレックス故に上手く気持ちを伝えられないという瞬間は誰しもあると思うし、私もあるしなと思っています。そういった普遍的なものを描いている部分」が本作の魅力だという。
浜中は「もうないです(笑)。結構ね、いいことを皆さん言いはるから(笑)。なかなか難しいですよね。でもちょっと絞りだしますね……いい話ですよねぇ。いつの時代かわからないですけど、昔の人もいい話書くんやなぁって(笑)」と作品の魅力に加えて「シラノはなんでもできるなと思う一方で、クリスチャンは……いいやつなんですよ、素直やし。僕がこのなかでクリスチャンを演じられてよかったなと思います。あと、今回はクリスチャンはラップをやってないですから。そこは魅力なんじゃないかな、逆にね(笑)。僕自身がラップが苦手ですから、やってないのが魅力、ですわ!(笑)」と自身の役・クリスチャンの魅力を教えてくれた。
主人公シラノは大きな鼻を”コンプレックス”としているが、古川自身も「コンプレックスはいっぱいあります、本当に。人の2~3倍はありますね。ただ、それは本当に言えなくて……言えないから多分コンプレックスですね。言える範囲だと、乾燥肌っていう」と話す。
すると馬場が「心配になるくらい乾燥してますよね。手を握るシーンがあるんですけど、本当に乾燥していて。いつもハンドクリームを塗っているけど乾燥していて、カッサカサで心配です(笑)」と付け加えた。
また、自身のコンプレックスとしては「ロクサーヌは自分の気持ちをすごくストレートに言えるタイプなんですけど、私は大事なことほど言えないタイプなんです。余計なことはいっぱい言えるんですけど」と話す。
一方で浜中は「コンプレックスなぁ……考えてみたんですけど、コンプレックスっていうコンプレックスが……まあ、パーフェクトなところがコンプレックスかなぁ、逆にね。……ちょっと適当に喋りすぎですね、ごめんなさい(笑)。いや、でもコンプレックスって何ですか? コンプレックスも楽しんだらいいんじゃないですか?」と話した。
古川は、ストレートプレイでの主演が10年ぶりとなるが「日々楽しくやらせていただいています。すごく大変な内容だと思うんですけれども、日々楽しく過ごせているのがすごく嬉しくて。このシラノを演じることってかなり大変だと思いますし、誰もがやりたい役だと思うんです。そんななかで自分が選んでいただけたということで、すごくプレッシャーなんですけど、なによりも楽しいということがすごく不思議でもあり、嬉しくもありという気持ちです。帰ってきたというよりは、また初心者の気持ちでやらせていただいています。
座長としては、ちゃんとやりたいなって(笑)。努力で補えるものでなければやりたいなって。技術的な部分はご指導いただいて、見ていただいてやっていくんですけど、その他の部分でちゃんとやりたいなという思いではありました。
なるべくなんでも対応したいなと。言われたことに対して、”NO!無理です”と言わずになるべく”YES!”と答えたいですね」と意気込んだ。
馬場が「稽古場ですごくドーナツを食べていました(笑)。昼から夜までの稽古中にドーナツを7個食べていて、すごいビックリしたんです。稽古中に全部食べ切っていて、それくらい稽古でカロリーを使いますし。あと、いつも最後まで稽古場に残って、みんなが帰った後も一人でずっと本を読んでいる姿を見て、真面目な方だなと」と座長の裏側を明かした。
古川と同い年の浜中は「同い年なんですけど、頼れるお兄さんみたいな。そういう雰囲気で、くそっ!って(笑)。僕はそこまで稽古の時間が得意じゃないので、なるべく早く帰りたい人なんですけど、稽古場に最後までいて本を読んでいて……僕には絶対にできないから、本当に尊敬しています。なんでそんなことが出来るんだ?って」と首をかしげながらも語った。
最後にお客様へのメッセージとして、谷は「目の前の人がたった一言いうだけで想像力が無限に広がっていくもの。シラノやクリスチャンや登場人物が、なにか一言劇場にポンっと言葉を置いて、そこから広がる世界・繋がる空想や連想っていうのを楽しんでいただけたら。観客と言葉を手がかりにして、想像力を共有するようなことが出来たらいいなと思っています。劇場に足をお運びいただけたらと思います」と話した。
続けて浜中が「全員でね、シラノ・ド・ベルジュラックを楽しみたいと思います。はい(笑)!」とパワフルに語り、馬場も「私も楽しんで、みなさんと頑張りますので、たくさんの方に見ていただけたら嬉しいなと思います」と微笑みを見せた。
そして、古川は「シラノ・ド・ベルジュラックの溢れる魅力を皆様に伝えるべく、毎公演楽しんで舞台に立ちたいと思っております。先ほども申し上げたんですけれども、今北京では熱い戦いが繰り広げられていますが、ここ東京芸術劇場でも、言葉の熱い戦いをくりひろげたいと思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらなと思います」と話した。
文・撮影:水谷かな子
公演概要
シラノ・ド・ベルジュラック
作:エドモン・ロスタン
脚色:マーティン・クリンプ
翻訳・演出:谷 賢一
出演:
古川雄大/馬場ふみか 浜中文一 大鶴佐助 章平 堀部圭亮/銀粉蝶
秋葉陽司 植田順平 函波窓 西山聖了 花戸祐介 福原冠 ホリユウキ 村岡哲至
東京公演:
2022年2⽉7⽇(月)〜 2⽉20⽇(日)
東京芸術劇場 プレイハウス
※2⽉7⽇(月)はプレビュー公演
大阪公演:
2022年2月25日(金)~2月27日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホール
公式サイト:https://www.cyrano.jp/
主催:「シラノ・ド・ベルジュラック」製作委員会