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“笑う男”は真実の愛を知り笑顔になれるのか――。浦井健治ら日本を代表するミュージカルスターが集結した『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』観劇レポート!

REPORT

新型コロナウイルス感染症の影響で公演中止となっていたミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』が2月10日(木)より東京・帝国劇場にて上演。 3月11日からは、大阪・梅田芸術劇場メインホール にて上演される。

フランス・ロマン主義を代表する詩人で小説家のヴィクトル・ユゴーが自身の最高傑作と評した小説を原作とし、脚本をロバート・ヨハンソン、音楽をフランク・ワイルドホーンが手掛けた本作は、日本では2019年4月に浦井健治主演で日生劇場にて初めて上演され、今回が3年ぶりの再演となる。浦井健治が再びグウィンプレン役で主演を務め、共演には真彩希帆、熊谷彩春、大塚千弘、吉野圭吾、石川禅、山口祐一郎といった日本ミュージカル界を牽引するスターたちが集結! 今回は、2月14日(月)に帝国劇場で上演された昼公演の模様をお届けする。

観劇レポ―ト

1689年、冬のイングランド。“子供買い”のコンプラチコの手により見世物として口を裂かれ、醜悪な笑みを貼り付けられた少年・グウィンプレン(土屋飛鳥、ポピエルマレック健太朗、松浦歩夢のトリプルキャスト)は、一行の船から放り出されて激しい吹雪の中を彷徨い歩いていた。途中、凍え死んだ女性が胸に抱えていた瀕死の赤ん坊を助け“デア”と名付けた彼は、偶然見つけた家に住む興行師ウルシュス(山口祐一郎)に助けを求める。

一度はグウィンプレンを追い返したものの、放っておけずに部屋に招き入れ食事を分け与えるウルシュス。「自分以外は敵だ」「この世は地獄」と、生きることの厳しさを説く彼だが、泣いているデアを「プルルル~」とあやしたり、疲れて肩にもたれ眠ってしまったグウィンプレンを起こさないように声をひそめて歌う姿を観ていると、血のつながりはなくとも“愛情”が生まれるのだと温かい気持ちになる。

やがて時が経ち、成長したグウィンプレン(浦井健治)とデア(真彩希帆と熊谷彩春のWキャスト)は、一座のメンバーとして仲間と共にステージに立っていた。醜い笑顔の“笑う男”として注目を集めるグウィンプレンだったが、盲目のデアに“見えて”いるのは彼の優しい心だけ。互いを思いやり、惹かれあうグウィンプレンとデアの姿に、心がほっこりと温かくなる。そんなふたりを笑顔で見守るウルシュスと一座のメンバーの優しさに包まれていれば、どんな嘲笑や憐みの視線にも耐えることが出来る――。そんな芯の強さが滲み出るグウィンプレンを浦井が熱演!

盲目で体の弱い“妹”デアをWキャストで演じるのは、元宝塚歌劇団雪組トップ娘役の真彩希帆と、2019年上演のミュージカル『レ・ミゼラブル』に史上最年少でコゼット役に選ばれ注目を集めた熊谷彩春(いろは)。

観劇した回は真彩の出演回だったが、「木に宿る天使」の儚げで透明感あふれる美しい歌声が聞こえて来ると観客が思わず息をのむ様子を肌で感じられ、「あなたは私の全て」の浦井とのデュエットでは、愛おしそうに頬に触れるデアを、壊れ物を扱うかのようにそっと包み込むグウィンプレンの歌声とピュアな笑顔が強く印象に残った。

ひと時の幸せを噛みしめる恋人たちだが、「金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって造られる」(ヴィクトル・ユゴー)の言葉そのままに、試練が次々とふたりに襲いかかる。

お忍びで訪れた興行で醜くも魅惑的なグウィンプレンに惹かれ、自身の元へ呼びつけ誘惑する美しく傲慢なジョシアナ公爵を、大塚千弘が圧巻の歌唱力で色気たっぷりに歌い上げる。自身の心の闇に気付き、抑えきれない感情に身もだえする様は実にエロティック。

彼女の婚約者で故クランチャリー卿の後継者デイヴィッド・ディリー・ムーア卿を演じる吉野圭吾も、また女にだらしなく権力に固執する醜い心の貴族を怪演! 物語が進むにつれ、自分の出自に引け目を感じ、劣等感から“罪”を犯した哀れな男へと印象を大きく変えるキャラクターに深みを持たせる芝居や、グウィンプレンとの決闘シーンでも迫力ある剣さばきで観客を魅了した。

石川 禅が演じたジョシアナ公爵に任える使用人・フェドロは、無表情で感情を抑えた芝居が逆に不気味さを感じさせるキャラクター。主人に忠実なふるまいの一方で、私欲のため人々を不幸に陥れていく裏の顔が次第に明らかになり、時折見せる冷酷な表情に思わず背筋がゾクゾク!

イギリス帝国のアン王女や貴族たち、見世物小屋の仲間たちを演じるアンサンブル・キャストたちの熱演はいうまでもなく、映像の効果や回転する盆など、帝国劇場の舞台機構をフルに生かしたセットも見ごたえ満載! 冒頭で巨大な船が嵐の大海原を漂う迫力のシーン、豪華な衣装に身を包んだ貴族たちのガーデンパーティーの様子や、それと対比するような見世物小屋の禍々しくも猥雑な風景、そして元老院の重厚なセットへと目まぐるしく変化する様は驚きの連続だった。

観劇後、一筋のかすかな光が差し込むような儚く尊い愛の物語をエネルギッシュに演じきった浦井と真彩、そして家族や仲間に寄せる無償の愛や自己中心的な哀しい愛など様々な“愛”の形を描き出したキャスト陣に、客席からは何度も大きな拍手が贈られた。

3月11日(金)~3月13日(日)からは梅田芸術劇場メインホールで大阪公演、3月18日(金)~3月28日(月)まで博多座にて福岡公演が上演される。

文:近藤明子
写真提供/東宝演劇部

公演概要

ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』

キャスト:
浦井健治、真彩希帆、熊谷彩春、大塚千弘、吉野圭吾、石川禅、山口祐一郎 他

スタッフ:
脚本:ロバート・ヨハンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
歌詞:ジャック・マーフィー
編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ハウランド
翻訳・訳詞・演出:上田一豪

2022年2月3日~2月19日
帝国劇場
(※2月3日~9日までは公演中止)
※公演終了

2022年3月11日(金)~13日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール

2022年3月18日(金)~28日(月)
福岡県 博多座

公式サイト:https://www.tohostage.com/warauotoko/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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