瀬戸さおりインタビュー　こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』「勇気をもらえるような作品になれば」（後編）

2022.08.03

INTERVIEW

2022年8月5日から東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて、こまつ座第143回公演『頭痛肩こり樋口一葉』が上演されます。さらに、9月2日～11日には大阪・新歌舞伎座、9月13日には岡山・津山文化センター、9月19日には東京多摩・パルテノン多摩と巡演されます。

本作は、こまつ座の旗揚げ公演となり、井上ひさしさんが書き下ろした作品。1984年の初演以来、上演が重ねられてきた人気作で、樋口一葉の生誕150周年となる今年、こまつ座によって6年ぶりに上演されます。

今回、THEATER GIRLでは貫地谷しほりさんの妹・邦子を演じる瀬戸さおりさんにインタビュー。後編では、瀬戸さんの思う舞台の魅力とご家族との思い出や息抜き方法などを語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

舞台はお客さんと一緒に作っていることを感じられる

――瀬戸さんの思う、舞台ならではの魅力を教えていただけますでしょうか。

私たちのお芝居に対してお客さんが真剣に観てくれたり、笑ってくれたり、一緒に緊張感を作ったり、その場で反応があることはすごく刺激になりますし、舞台ならではだと思います。お客さんと一緒に作っているんだなというのがすごく感じられるところに、すごく影響を受けています。本当に楽しいですね。

――瀬戸さんが舞台に立つにおいて、一番好きな瞬間はどんな時でしょうか。

本番が終わった後ですかね。カーテンコールの時にお客様の顔を見ると「やってよかった」と思います。本番中もお客様のことを感じてはいるのですが、すごく集中して緊張もしているのでなかなか周りを見る余裕がなくて。カーテンコールでお客様の顔を見ると「こんなにも来てくれていたんだ」と素に戻りますね（笑）。

仕事から離れる時間を作る

――普段の生活でなにか息抜きでやられていることはありますか？

本を読んだり、瞑想したりしています。セリフが頭の中をぐるぐる回ってしまうので、なるべく1回リセットする時間を作るようにしていますね。仕事から離れる時間を作って、切り替えるようにはしています。

――リセットする時間があるからこそ、お芝居をする時に切り替えができるんですね。

そうですね。集中力を持たせるために1回切らないと、ずっと集中していられなくて、自分からオンオフができるようにしないとセリフがずっと回って寝られなくなっちゃうので。

お兄ちゃんにたくさん遊んでもらった思い出

――今回は姉妹役ということになりますが、ご自身の家族エピソードがありましたら教えていただけますでしょうか。

両親が共働きだったので、おじいちゃんの家に兄妹3人で預けられることも多かったのですが、兄妹がいるから、両親が頑張って働いている時でも寂しくなかったというのはあったと思います。お兄ちゃんは妹が寂しくないようにいろんなところに連れていってくれたり、遊びを考えてくれたり、すごくよく面倒を見てくれていました。小さい時に両親と遊べないのは、寂しさもありましたが、兄妹がいたからカバーできていたと思います。

お兄ちゃんは中学・高校生になると部活をやっていたのでその頃の思い出があまりなくて、小学生の時の思い出しかないかもしれないです。年子ということもあって恋愛の話も聞きづらかったですし（笑）。ただサッカーをしたり、自転車に乗ってどこかに行ったり、お兄ちゃんの後ろをずっとついて遊んでいたのを思い出します。

――今でも小学生の時を思い出せるのは素敵ですね。それだけたくさん遊んでいらっしゃったんですね。

そうですね。みんなで山に行ったり、田んぼの中で遊んだりしていました（笑）。

歳を重ねるにつれて共感できる部分が変わる作品

――先ほど舞台がお好きとのお話がありましたが、演じてみたいジャンルや役柄はありますでしょうか。

こまつ座さんの『父と暮せば』の娘役は、伊勢佳世さんが演じているのを拝見させていただいて、いつか演じてみたいと思っています。

――こまつ座さんの作品にすごく惹かれていらっしゃるのですね。

惹かれますね。すごく素敵だし、言葉の1つ1つに自分が勇気づけられるんです。同じ作品を見ても「前はこの言葉が刺さったけど、年を重ねるとこっちの言葉の方が刺さるな」とか。その言葉を聞いた時によって感じるものも全然違うんです。

今回の作品でも、それぞれの女性たちが抱えているものは年齢によって共感できるものがあると思うし、年を重ねるにつれて役や台詞の共感できる部分が変わるところがすごく面白いなと思います。

――では、最後に本作を楽しみにしている方にメッセージをいただけますでしょうか。

生きづらい時代の中で明るく・楽しく・たくましく生きている女性たちの姿に勇気づけられると思います。今の時代でもコロナ禍ということもあって死を身近に感じることもあると思いますが、どの時代でも死があるからこそ生きることの大切さを感じられると思うので。残された人たちがどうやって死と向き合って前を向いていけるか、勇気をもらえるような作品になっていると思います。こういう時代だからこそ明るく楽しく前を向いて生きていこうと少しでも思ってもらえるように、私も稽古で皆さんに食らいついて頑張っていきたいと思います。