ミュージカル『ファントム』会見レポート。三刀流に挑む城田優「自身の集大成になる公演にすべく、誠心誠意取り組みます！」
今夏、大阪と東京で上演されるミュージカル『ファントム』の記者発表が4月5日（水）に行われた。
フランスの小説家ガストン・ルルーのベストセラー小説『オペラ座の怪人』を原作とし、脚本家アーサー・コピットと、作曲家モーリー・イェストンの黄金コンビにより誕生。
怪人ファントムを一人の青年エリックとして描き、その人間像に焦点をあてたストーリーと独創的な楽曲は、今や世界の観客を魅了し、ベストセラーミュージカルとして親しまれている。
日本では2004年に宝塚歌劇団での初演以来、空前の大ヒットを遂げており、2019年に城田優がファントム役を演じ、演出も手掛けるという『ファントム』史上初の挑戦を成し遂げた。
4年ぶりとなる今回、2019年に続き城田優が演出と主演エリック役を担当し、さらにクリスティーヌに思いを寄せるファントム（エリック）と恋敵になる貴公子シャンドン伯爵役のWキャストも務めるという驚きの挑戦！
会見では、本公演の音楽監督・森 亮平のピアノ演奏で劇中歌の「世界のどこに」を城田が、「崩れゆく心」を加藤が披露。
力強くも切なさが漂う城田の歌声は、取材で集まった人々の耳を魅了。
変わってステージに上がった加藤は、憂いを帯びた表情でエリックの哀しみを歌い上げた。
その後、Wキャストでクリスティーヌ・ダーエ役を演じる真彩希帆とsara、シャンドン伯爵役の大野拓朗も登壇し、今作に向けての意気込みを語った。
「ほとんどのキャストが一新される中で、また新しいものを演出・城田優のもとで見つけていきたい。同じことをやるのではなく、また新たに生まれ変わる『ファントム』を目指したい」と加藤がコメント。
元宝塚歌劇団雪組トップ娘役でクリスティーヌを演じた経験のある真彩は「退団して数年経ち、自分の気持ちも違いますので、新しいことにチャレンジするような気持ちで、作品に心が向かっています。演出の城田さんと話し合いながらお稽古をしていきたいと思っています」と笑顔で語る。
もう一人のクリスティーヌ役、saraは「ここに立たせていただいてワクワクとドキドキで胸がいっぱいです。クリスティーヌという役をまっとうできるようにがんばります」と初々しさの中に決意が感じられるコメント。
また、城田から直接出演オファーの連絡が来たという大野は「シャンドンが輝くほど、ファントムの闇が深くなる。だからぜひ拓朗にやってほしいとお声がけをいただき参加を決めました。ちょうど先週、ブロードウェイで『オペラ座の怪人』を観て、勉強してまいりました。精一杯シャンドンを演じたいと思います」と、はやる気持ちを抑えきれない様子。
そして今回、演出とファントム役に加えてシャンドン伯爵役も演じる城田は、「僕の三刀流の挑戦によって、エンタメに携わる方やお客様に『自分にもできるかも』という希望を持っていただけたら。共演の皆さんには迷惑をかけることになると思いますが、稽古でも本番でも頑張りたい」と語ると、「迷惑かけてください。それを支えるのもカンパニーの役目」と頼もしいコメントの加藤。大野は「ぜひ、大谷翔平選手の二刀流を超える三刀流を完遂していただきたい！」といった後に「このコメントは加藤さんが話しているときからずっと言おうと考えていました！」と続けると「それって、俺の話を聞いてなかったってこと？」と加藤がツッコミを入れ、取材陣を笑わせた。
宝塚歌劇団在団中にクリスティーヌ役を演じた真彩は、男性相手に同役を演じる心境を聞かれ「私自身、男性女性とか性別のことをあまり考えない人間なので、身長が大きいなぁぐらいで……（笑）。ただ歌詞が違うので、歌いこみまくった曲だけに歌詞を間違えないか心配です。また私のクリスティーヌを観られると楽しみに思ってくださっているお客様もいるかもしれませんが、たぶん全然違うものになると思います」と答えた。
昨年秋に大学を卒業したsaraは、ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』に続き今作が2本目のミュージカル出演。記者から「（『ドリームガールズ』では）真彩さんとコンビを組んでいた望海風斗さんと共演。コンビを制覇しましたね」と質問されると「兵庫県出身で初めて観た宝塚歌劇団の公演が雪組です。“だいきほ（望海＆真彩）”コンビの退団公演も観に行って、ビデオも繰り返し観ていて……」と、突然のカミングアウト。これには「そうなんだ？ やった！ 仲良くなりたいです（笑）」と真彩のテンションも上がっていた。
また、改めて作品の魅力について聞かれた加藤は「孤独に生きるエリック（＝ファントム）がクリスティーヌという“光”を見つけ愛を知っていく。いろいろなところにちりばめられた“愛”を皆さんにお届けできたら……」とコメントし、城田は演出プランについて「まず、キャストの皆さんがどう演じたいのか1人1人とディスカッションして、道に迷ったときはサポートし、ディレクションができればと思っています」と意気込みを語った。
質疑応答の最後に手を挙げた記者が指名されると、壇上のキャスト陣は一様に「え？」という表情に。
「ミュージカル俳優をたしなんでおります、斎藤です」と名乗ったのは、お笑いコンビ「トレンディエンジェル」の斎藤司。
「作品に関係ない質問なのですが……」と切り出そうとすると、「作品に関係していないならダメです！」と城田がシャットアウト（笑）。
なんとか食い下がり、「共演の方々の心をつかむ差し入れを教えてほしい」と質問をすると、城田から「（加藤）和樹の作ったチャーシュー」という予想外の答えが。
前回の稽古中、演出や芝居に没頭するあまり食事もままならなかった城田のため、加藤が栄養に気を配ったお弁当を作って差し入れていたのだそう。
「稽古中、僕はクリスティーヌ役の女優さんの隣の席だったので、その方が作ってくれたのかと思ったら和樹でした。キュン♡としました（苦笑）。」と笑顔を見せる城田と、照れ笑いの加藤に対し「奥さんですか？」という斎藤のツッコミで会場内は笑いに包まれた。
最後にキャストを代表して城田から「この作品が持つ愛の深さ、哀しみの深さ、そして憎しみの感情を、エリックを通して観てくださる皆さまに伝えたい。大沢たかおさんの代から続いてきた『ファントム』という作品を、次で自分の中で集大成のつもりでベストな演出、ベストな芝居で、ベストなプロダクションになるように精一杯努力したいと思っています。ミュージカルの素晴らしさ、音楽に乗せて感情を表現する素晴らしさ、作品が持つメッセージやエネルギーをモーリー・イェストンの音楽にのせて届けられたら……。2023年、梅田芸術劇場を東京国際フォーラムを一番熱い劇場にしたいので、ぜひ足をお運びください！」とメッセージがあり、会見は終了した。
ミュージカル『ファントム』は、7月22日から8月6日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、8月14日から9月10日まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて上演。
チケットの一般販売は、大阪公演が5月20日、東京公演が6月3日の10:00よりスタートする。詳細は公式サイトを要チェック！
取材・文：近藤明子
公演概要
ミュージカル『ファントム』
脚本：アーサー・コピット
作詞・作曲：モーリー・イェストン原作：ガストン・ルルー
演出：城田 優
出演：加藤和樹/城田 優(W キャスト)、真彩希帆/sara(W キャスト) 、大野拓朗 他
公演日程：
〔大阪〕2023 年 7 月 22 日（土）～8 月 6 日（日）梅田芸術劇場メインホール
〔東京〕2023 年 8 月 14 日（月）～9 月 10 日（日）東京国際フォーラム ホール C
企画・制作：梅田芸術劇場
