ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』観劇レポート第二弾! 芯の通った力強い歌声の岡宮来夢“ロミオ”とフレッシュで瑞々しい芝居の奥田いろは“ジュリエット”の魅力
2024年5月16日(木)より東京・新国立劇場 中劇場にて上演中のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。
シェイクスピアの名作を原作とするミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒット作品。
日本では小池修一郎の演出により2010年に宝塚歌劇団で初演され、2011年には日本オリジナルの設定を加えたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が誕生。
初演では城田優・山崎育三郎がロミオ役を演じ、2013年には城田優・古川雄大・柿澤勇人のトリプルキャストのロミオが話題に。さらに2017年と2019年には古川雄大・大野拓朗、2021年には黒羽麻璃央・甲斐翔真が演じ、ミュージカル界のプリンスたちに受け継がれてきたロミオ役を、6度目の上演となる今回では小関裕太と岡宮来夢が演じる。
今回は、ロミオ役:岡宮来夢、ジュリエット役:奥田いろは(乃木坂46)、ベンヴォーリオ役:石川凌雅、マーキューシオ役:笹森裕貴、ティボルト:水田航生、死のダンサー:キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)の出演回の観劇レポートをお届けする。
※作品の内容に触れています。
多くの人から愛され、ヴェローナ中の女性たちを夢中にさせるルックスを有するも、孤独を抱え“本当の愛”を探すロミオを岡宮が好演。愛らしい顔立ちからは予想できない芯の通った力強い歌声を響かせると、客席の空気が一瞬にして変化したのが伝わって来た。
ジュリエット役の奥田いろはは本作が初舞台とは思えない堂々とした姿で舞台に立ち、ロミオに向ける一途な眼差しと恋にあこがれる乙女心を真っすぐに歌い上げ、愛らしい表情と瑞々しい芝居で観る者のハートをわしづかみにする。
ベンヴォーリオ役の石川凌雅は、一幕ではお調子者でノリの良い若者を演じて見せるも、二幕では自身に与えられた“役割”を自覚し成長していく様子を芝居と歌で丁寧に表現する姿に好感が持てた。
マーキューシオを演じる笹森裕貴は、中世的な顔立ちもありバッチリとキメたメイクがサディスティックな雰囲気を倍増! 刺すような鋭い視線とぶっ飛んだ芝居で物語をかき回す役割を見事に果たし、新たな扉を開いたように感じた。
ティボルト役の水田航生は、今までは正統派好青年の役が多い印象だったが、本作ではジュリエットへの報われない想いを抱え、運命を呪い失意のうちにこの世を去るという難しい役どころを演じ、暴力という手段で感情を爆発させる芝居で強烈なインパクトを残した。
若手キャストの勢いのあるエネルギッシュな芝居に対し、ベテランキャスト陣の安定感のある歌声や感情があふれ出す芝居には何度も心を揺さぶられる瞬間があった。
キャピュレット夫人役の彩吹真央は、愛のない結婚の末にジュリエットを宿し、呪われた運命を娘にも背負わせようとする哀しい母親を熱演! 甥のティボルトに向ける嫉妬心に女の情念が凝縮されていて思わず背筋がゾッとする瞬間も……。
一方、モンタギュー夫人を演じるユン・フィスは“静の芝居”で家族を愛し支える良き母親役を演じ、二人の母親の描かれ方の対比は実に興味深かった。
キャピュレット卿を演じる岡田浩暉は、ジュリエットが実の娘でないと知りつつ、愛情を注ぎながらも苦悩する父親役を好演。
モンタギュー卿の田村雄一は、短いシーンの中でも家族を守るために立ち向かう頼れる父親を大きな背中とブレない歌声で表現していた。
ジュリエットの乳母役の吉沢梨絵はコミカルな芝居で観客を笑わせる一方で、ジュリエットへの“愛”に満ちた温かな歌声をフロアいっぱいに響かせる感動的なシーンもあり、緩急ある芝居に観客は大きな拍手を送っていた。
ロミオとジュリエットの理解者として二人の恋を応援し、長きに渡る両家の対立に心を痛めているロレンス神父役の津田英佑のふり幅の広い芝居と懐の深い歌声には、何度も感情を揺さぶられる。
パリス役の雷太は、ステージに立っているシーンは少ないながらもクセのあるキャラクターと長い手足を生かしたダイナミックなダンスでシーンを盛り上げる。
また、2017年と2019年にティボルト役を演じた渡辺大輔が本作ではヴェローナ大公役を演じていることも、当時を知る人間には実に感慨深いものがある。憎しみ合う両家の板挟みになりながらも、荒れる若者たちを制し解決策を模索。良く通る太い歌声には民衆を導く大公としての威厳が感じられたのだった。
そして気付くとキャストの背後にひそかに忍び寄っているのが、キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)演じる「死のダンサー」。指先から足先まで神経が通ったしなやかで美しいダンスはもちろん、「一体、関節はどうなってるの?」と不安になるような人間離れした動きやロミオを翻弄し絡めとるような振り付けが随所に盛り込まれ、不気味さにさらに拍車をかけていた。
「世界の王」をはじめとするフレンチロックに乗って歌い踊る迫力ある群舞は本作でも特にキャッチーなシーンだが、募る思いを熱く歌い上げる恋する二人の初々しさにときめく「バルコニー」や、死の予感におびえるロミオが心情を吐露する「僕は怖い」、秘密の結婚式で二人の誓いを歌った「エメ」など、全編にわたって珠玉のナンバーのオンパレードとなっている本作。
400年前にウィリアム・シェイクスピアによって書かれた“愛と憎しみ”“生と死”という普遍のテーマが込められた美しくも哀しい物語を、音楽と共に心ゆくまで堪能してほしい。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2024年6月10日(月)まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演。その後は愛知・刈谷市文化総合センター、7 月には大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される。
また東京公演千秋楽の6月9日(日)18:00公演、6月10日(月)12:00公演はライブ配信が決定! チケット購入方法やチケット料金、アーカイブ配信の視聴期限など、詳細は公式サイトをチェックしてほしい。
文:近藤明子
© ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
公演概要
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
原作: ウィリアム・シェイクスピア
作: ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出: 小池修一郎(宝塚歌劇団)
出演:
ロミオ 小関裕太 / 岡宮来夢
ジュリエット 吉柳咲良 / 奥田いろは(乃木坂46)
ベンヴォーリオ 内海啓貴 / 石川凌雅
マーキューシオ 伊藤あさひ / 笹森裕貴
ティボルト 太田基裕 / 水田航生
死 栗山廉(K-BALLET TOKYO) / キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)
キャピュレット夫人 彩吹真央
乳母 吉沢梨絵
ロレンス神父 津田英佑
モンタギュー卿 田村雄一
モンタギュー夫人 ユン・フィス
パリス 雷太
ヴェローナ大公 渡辺大輔
キャピュレット卿 岡田浩暉
ほか
【東京公演】
公演期間:2024年5月16日(木)~6月10日(月)
会場:新国立劇場 中劇場
【愛知公演】
公演期間: 2024年6月22日(土)・6月23日(日)
会場: 刈谷市総合文化センター
【大阪公演】
公演期間: 2024年7月3日(水)~7月15日(月・祝)
会場: 梅田芸術劇場メインホール
公式サイト: https://www.rj-2024.com/
公式X (旧Twitter): @musical_RJ
東京公演千秋楽にライブ配信実施決定
【6 月 9 日(日)18:00 公演】 ※アーカイブ配信 6 月 12 日(水)23:59 まで
ロミオ:小関裕太/ジュリエット:吉柳咲良/ベンヴォーリオ:内海啓貴/マーキューシオ:伊藤あさひ/
ティボルト:太田基裕/死:栗山廉(K-BALLET TOKYO)
【6 月 10 日(月)12:00 公演】 ※アーカイブ配信 6 月 13 日(木)23:59 まで
ロミオ:岡宮来夢/ジュリエット:奥田いろは(乃木坂 46)/ベンヴォーリオ:石川凌雅/マーキューシオ:笹森裕貴/
ティボルト:水田航生/死:キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)
◉チケット発売日:2024 年 5 月 15 日(水)21:00 より発売開始
◉視聴チケット料金(税込)
・配信視聴券:各 5,000 円
・配信視聴券(公演プログラム -舞台写真版- 郵送サービス付き):各 7,500 円 ※送料別途必要