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ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』観劇レポート第一弾! 繊細な演技が光る小関裕太“ロミオ”と清らかな歌声の吉柳咲良“ジュリエット”に魅了

REPORT

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2001年にフランスで誕生。日本では、小池修一郎演出により2010年に宝塚歌劇団で初演され、2011年には日本オリジナルバージョンが生まれた。その後も上演のたびに大きな注目を集め、2017年には演出を一新。さらなる反響を得て、今回、2021年以来6度目の上演となった。

ロミオ役を務めるのは、小関裕太と岡宮来夢。ジュリエット役を吉柳咲良と奥田いろは(乃木坂46)が演じる。今回のレポートでお届けするのは、小関&吉柳によるバージョン。Wキャストとなるベンヴォーリオ役を内海啓貴、マーキューシオ役を伊藤あさひ、ティボルト役を太田基裕、死のダンサー役を栗山廉(K-BALLET TOKYO)が務めた。

※作品の内容に触れています。

幕が開くと、モンタギュー家とキャピュレット家の闘争シーンからスタート。激しいダンスや殺陣で憎しみ合う両家を表現。前者のイメージカラーが青、後者が赤とわかれていることにより視覚的にわかりやすく、対照的でありながら、互いのパフォーマンスを引き立て合っているようにも見える。また、本作のメインビジュアルにある十字架が、赤と青の中間色である紫なのは、両家の和解を意味しているのだろうかと勝手に想像を膨らませた。  

小関ロミオは、登場した瞬間から圧倒的にロミオだった。その容姿やシルエット……何より感じるのは、年相応の幼さだった。

そして、小関の歌唱力の高さ。ベンヴォーリオ、マーキューシオとともに「俺たちの王は俺たちなんだ」と歌う「世界の王」。ジュリエットと愛をたしかめ合う「バルコニー」や「エメ」。時には力強く、時には軽やかに、時には糖度高く歌を届ける。まるで、セリフを言っているかのごとく。

小関の芝居の繊細さには定評があるが、今回の舞台でもそれを遺憾なく発揮。ジュリエットをとろけそうな表情で見つめる視線には、ジュリエットでなくても恋に落ちてしまいそうになる。なかでも、悲しみに暮れる場面で見せた微笑むような表情は予想外で、胸がギュッとなった。

吉柳ジュリエットは、可憐でありながら、内に秘める強さも表現。少女性だけでなく、様々な悩みと向き合う姿には人間らしさも感じられ、複雑な家庭環境にあるジュリエットが、心から好きな人と結婚したいとひたむきに願う心情に、自然と寄り添いたくなる。歌唱力の安定感は言うまでもないが、ロミオとのデュエットの際、美しいハーモニーを奏でながらも、ロミオの声に包み込まれるような清らかな歌声に魅了された。キュートさ溢れるピンクの衣裳や清楚な白いドレスなど、ビジュアル的にも楽しませてくれた。

物語の鍵を握る人物ともいえるのが、ベンヴォーリオ。ジュリエットの死をロミオに伝えるという本作オリジナルの役割を担った彼が、結果的に二人の親友を亡くし、運命に翻弄される姿を、内海は緩急のある芝居で魅せた。悲嘆、使命、決意……様々な感情が入り乱れるなかで歌い上げる「どうやって伝えよう」は、バックに映し出される、かつてのロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオの笑顔、そして内海の歌唱力も相まって、激しく胸を打った。

マーキューシオを演じた伊藤は、歌やダンスがゼロからのスタートということが信じられないくらい、彼自身の持つ華を武器に、ダイナミックながらも端々に品の漂うパフォーマンスを見せた。美しい外見を含め、自由奔放で血の気の多いマーキューシオをすっかり自分のものにし、短刀ですら彼を輝かせる装飾品に見えた。

“従妹であるジュリエットへの密かな恋情”という本作オリジナル設定のあるティボルト。激情に駆られ舞台に短剣を突き刺したかと思えば、「復讐の手先になんかなりたくはなかったんだ」とせつなげに歌い、胸の内を吐露したり。純粋と狂気の紙一重的キャラクターを、太田は色気たっぷりに演じた。

そして、『ロミオとジュリエット』という戯曲の根幹となる愛と死を描くうえで、大きな役割と果たしているのが栗山廉(K-BALLET TOKYO)演じる死のダンサーだ。あくまでもひっそりと、しかし確実に人々の目に留まるオーラを放って舞台上に存在している。それは、命あるものはみな死と隣り合わせであることを思い知ることにもなる。なかでも、小関と絡みながら踊る「僕は怖い」では、自由に動いているように見えながら互いに作用し合っている振付に目が釘づけになり、しばし息をするのを忘れてしまった。

ベテランの俳優陣も、安定の演技力で本作をより盤石にしている。彩吹真央演じるキャピュレット夫人は、夫との愛のない生活に疲れ、ティボルトへ救いを求めるも、ティボルトが娘のジュリエットに恋していることを知り、嫉妬をするという役どころ。ともすれば観客から反感を買いそうなキャラクターだが、キャピュレット夫人の孤独感を、彩吹は押しつけがましさなく表現。いつの間にか観客を味方にしてしまっていた。

吉沢梨絵演じる乳母は、ジュリエットの第二の母として、ロミオとの恋を応援するという大事な役どころ。ロミオに恋をしたジュリエットが、もう自分を必要としていないことを寂しく感じながらも、「この愛を実らせるため力をください」と、どこまでもジュリエットの幸せを願う姿にホロッとなる。観客も、ツラいシーンも多い本作のなかで、お茶目な一面を持つ彼女の存在に救われていたのではないだろうか。

もう一人、ロミオとジュリエットが絶対的信頼を置いているのが、津田英佑演じるロレンス神父だ。薬の製法をインターネットで検索したり、アロマテラピーにハマっていたりと、現代的な要素も多い本作ならではの演出にクスッとしてしまう場面も、実にチャーミングに演じる津田。だからこそ、シリアスなシーンとの落差が効果的に働く。霊廟のシーンでのベンヴォーリオとのハグには、何ともいえぬ救いを感じて安堵した。

モンタギュー卿を演じているのは、田村雄一。キャピュレット家と対立するモンタギュー家の長で、ヴェローナでの権力者という立場と、ロミオの親としての立場における心情をわかりやすく表現。願わくは、ソロ曲でも田村の歌唱を浴びたかったと思うのはワガママだろうか。

同じくロミオの親という立場であるモンタギュー夫人を演じるのは、ユン・フィス。第1幕で、キャピュレット夫人と互いに抱く憎悪を表現したデュエット曲「憎しみ」からの、ラストで歌う「罪びと~エメ」への心情の変化を、歌唱。そのパワフルな歌声が印象的だった。

ジュリエットに求婚する資産家・パリスを演じるのは雷太。出番は多くないものの、確実に印象に残るちょっとズレたキャラクターを好演。大人目線では結婚相手に相応しい人物に思えるが、まだ少女のジュリエットにはハマらないという絶妙なラインを表現できるのは、雷太の演技力とビジュアルがあってこそ。

ヴェローナ大公役の渡辺大輔は、年齢的にはまだ若いが、強い意志を持つ威厳あるキャラクターを演じるのに十分な貫禄があり、まったく違和感がなかった。終始、よく響く美声と声量に酔いしれた。

キャピュレット卿を演じるのは岡田浩暉。娘であるジュリエットの出生の秘密を知りながら、不器用に愛する父の気持ちを切々と歌う「娘よ」は、父としての苦悩がダイレクトに伝わり沁み入った。

そして、本作の素晴らしさは、ダンサーたちの存在抜きには語れない。様々な楽曲に合わせたダンスによって、キャラクターの感情を視覚的に見せ、本作のテーマをより深く伝えることができる。ダイナミックで華やかなパフォーマンスは時に観客を巻き込み、大いに高揚させた。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、音楽という聴覚に訴えるツールで感情を揺さぶられるところに醍醐味があり、強く心に残る。決して色褪せることなく、再演されるたびに新鮮な感動が更新される『ロミオ&ジュリエット』。本作も、間違いなくロミジュリ史に残る名作となるだろう。そしてこれからも、シェイクスピアの原作の持つ普遍的なメッセージを多くの人に受け取ってほしい。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2024年6月10日(月)まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演。その後は愛知・刈谷市文化総合センター、7 月には大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される。

また東京公演千秋楽の6月9日(日)18:00公演、6月10日(月)12:00公演はライブ配信が決定! チケット購入方法やチケット料金、アーカイブ配信の視聴期限など、詳細は公式サイトをチェックしてほしい。

文:林桃
撮影:THEATER GIRL編集部

小関裕太さん×岡宮来夢さんのインタビューはこちら

岡宮来夢さん、奥田いろは(乃木坂46)さん出演回の観劇レポートはこちら

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』開幕コメントと舞台写真はこちら

公演概要

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

原作:  ウィリアム・シェイクスピア
作:  ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:  小池修一郎(宝塚歌劇団)

出演:
ロミオ        小関裕太 / 岡宮来夢
ジュリエット     吉柳咲良 / 奥田いろは(乃木坂46)
ベンヴォーリオ    内海啓貴 / 石川凌雅
マーキューシオ    伊藤あさひ / 笹森裕貴
ティボルト      太田基裕 / 水田航生
死 栗山廉(K-BALLET TOKYO) / キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)
キャピュレット夫人  彩吹真央
乳母         吉沢梨絵
ロレンス神父     津田英佑
モンタギュー卿    田村雄一
モンタギュー夫人   ユン・フィス
パリス        雷太
ヴェローナ大公    渡辺大輔
キャピュレット卿   岡田浩暉
ほか

【東京公演】
公演期間:2024年5月16日(木)~6月10日(月)
会場:新国立劇場 中劇場

【愛知公演】
公演期間: 2024年6月22日(土)・6月23日(日)
会場: 刈谷市総合文化センター

【大阪公演】
公演期間: 2024年7月3日(水)~7月15日(月・祝)
会場: 梅田芸術劇場メインホール

公式サイト: https://www.rj-2024.com/
公式X (旧Twitter): @musical_RJ

東京公演千秋楽にライブ配信実施決定

【6 月 9 日(日)18:00 公演】 ※アーカイブ配信 6 月 12 日(水)23:59 まで
ロミオ:小関裕太/ジュリエット:吉柳咲良/ベンヴォーリオ:内海啓貴/マーキューシオ:伊藤あさひ/
ティボルト:太田基裕/死:栗山廉(K-BALLET TOKYO)

【6 月 10 日(月)12:00 公演】 ※アーカイブ配信 6 月 13 日(木)23:59 まで
ロミオ:岡宮来夢/ジュリエット:奥田いろは(乃木坂 46)/ベンヴォーリオ:石川凌雅/マーキューシオ:笹森裕貴/
ティボルト:水田航生/死:キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)

◉チケット発売日:2024 年 5 月 15 日(水)21:00 より発売開始
◉視聴チケット料金(税込)
・配信視聴券:各 5,000 円
・配信視聴券(公演プログラム -舞台写真版- 郵送サービス付き):各 7,500 円 ※送料別途必要

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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