ミュージカル『GIRLFRIEND』開幕記念会見・高橋健介＆萩谷慧悟ペアゲネプロレポート！

2024.06.14

REPORT

90年代のパワー・ポップシーンを牽引したマシュー・スウィートのCDアルバム『GIRLFRIEND』をベースに、90年代のアメリカで青春を過ごす2人の青年の淡い青春を描くミュージカル『GIRLFRIEND』。

キャストは、ウィル役に高橋健介、島太星、井澤巧麻（トリプルキャスト）、マイク役に萩谷慧悟、吉高志音、木原瑠生（トリプルキャスト）の6名。シアタークリエ作品初出演となるフレッシュなキャスト陣がトリプルキャストで2人ミュージカルに挑むとあって注目を集めている本作は、2024年6月14日（金）に東京・シアタークリエにて初日を迎える。

初日を前に、全ペアが登壇する開幕記念会見が実施された。本記事では、前半で会見の模様をレポートするとともに、記事後半では同日開催された高橋健介＆萩谷慧悟ペアのゲネプロの様子もお届けする。

開幕記念会見レポート

オーディエンスの温かな拍手に迎えられて登壇した6名。本番を控えての心境を色で訊ねられると、先陣を切った高橋が「真っ白」と回答。「稽古でここまでいろいろな色を足してきたけど、いい意味で真っ白な状態にして、お客様に色を足してもらって作品の色を一緒に作っていきたい」とコメント。お手本のような見事な回答に客席からは拍手が起こる。高橋自身も「いいこと言った！」とご満悦の笑顔を見せた。

続く島は緊張感から心臓を連想したそうで「きれいなピンク色。臓器の色」という斜め上の回答で、劇場をざわつかせる。島のマイペースで独特な回答はこの後の会見でも台風の目となっていくことに……。

井澤は「草色」とこれまたひねった回答。井澤・木原ペアはまだ初日まで日数があるということで「まだ落ち着いている状態と、やってやろうという雑草魂」からこの色を選んだと爽やかな笑顔を見せた。

対照的な回答だったのが萩谷。「ギラッギラに燃えている」気持ちと「やっとお客様に観てもらえる」というほっとした心境から「オレンジ」をチョイス。偶然にもオレンジ色の衣装を身につけていた萩谷が「それを表現してコーディネートしてきました」とお茶目に振る舞うと、左右から「違う違う」とツッコミが入り、会見は一気に賑やかに。

萩谷から続くマイクキャスト陣はなんと全員がオレンジを選択。吉高は「くすんだオレンジ」、木原は「淡いオレンジ」と、それぞれが感じる青春を色に落とし込んだ。この色の捉え方をみても、トリプルキャストならではの違いが芝居にも表れているのだろうと公演への期待が高まった。

見逃さないでほしいおすすめのシーンを問われると、最初の質問以上に島が会見に笑いを起こした。おすすめのシーンを脚本のページ数で回答したり、ツッコミを入れる面々に「静粛に」と発したり。彼の独特な間のおかげで、劇場はほのぼのとした空気に包まれ、全員にリラックスした笑顔が浮かんだ。

終始キレのあるツッコミで会見を盛り上げる高橋は「僕（ウィル）から物語が始まるので、そこが見どころ」、萩谷は「2人の距離がよりぐっと縮まる星空のシーン。繊細に作ってきたし、全チームとも雰囲気が違うので気に入っている」、吉高は「楽しいシーンはもちろん、学生ならではの会話のスピード感や初々しさ、緊張感も楽しんでほしい」とコメント。井澤は「2人が並んでいるシーン」を挙げ「目線ひとつまで細かく作っている」とアピール。木原は「2人がある場所に何度か行くんですが、その空間で起きる出来事」を注目シーンとしてピックアップした。本作は終始2人きりで物語が進む。ファンにとっては全編が注目シーンになるだろうが、観劇の際にはぜひそれぞれのおすすめシーンにも注目してもらいたい。

稽古場エピソードでは、高橋が休日も気にかけてメッセージをくれた演出の小山への感謝を述べると、島も2週間治らなかったものもらいが、小山からのカレーとお味噌汁の差し入れで翌日には治ったエピソードを披露。「お医者様かと思った。もう顔が上がらないです！」と感謝の気持ちを爆発させると、すかさずペアの吉高から「それを言うなら頭！」とツッコミが入り、息ぴったりのペア感を見せてくれた。

木原は稽古終盤で「木原くんのマイクは狂気的なところがある」と指摘されて驚いたという。一方でペアとなる井澤は「役を作らなきゃというより、もっと自然体に自分を使ってお芝居したらいいよ」とアドバイスされたことが大きな発見に繋がったそう。

萩谷も「ハッとした」エピソードとして、小山からの「90年代という時代背景、同性愛という中で、未成熟な2人が相手の顔を見る瞬間にいろんな意味が出てくるから、そこを計算して繊細にやってほしい」という言葉を挙げ、役作りの上で目線が1つの鍵となったことを語った。

最後に、木原はトリプルキャストならではの違いに触れ「可能であればいろんな回に来ていただけたら嬉しい」、井澤は生バンドの表現力に言及し「ハッとするような演出がたくさんあって見ごたえのある舞台」と自信を覗かせる。

島&吉高ペアは「愛」について語ったのが印象的。吉高が「改めて音楽と愛の力の偉大さに驚いています」とコメントすると、島もいろんな恋の形がある中で同性愛をテーマに描く本作について「作品の中の2人の緊張感や距離感を見て、みなさんにもいろいろ考えてほしいし、僕たちも伝わるようにお届けしたい」と、ひと足先に初日を迎える高橋&萩谷ペアに思いを託した。

萩谷は90年代を舞台とした本作でキーアイテムとなるカセットテープなどのアナログなアイテムに触れ、「僕らも最初はピンとこなかったけど、アナログなものの重みにすごく感銘を受けた」とし、U25チケットを活用してぜひ若い人たちに観て味わってもらいたいと意気込みをコメント。最後に高橋は、本作へ掛ける意気込みの証として、「生まれてから30年近く守ってきたこのヴァージンヘアにパーマをかけたんです、人生で初めて」と熱弁。「作品に掛けている思いが伝われば」と、和気あいあいとした会見にふさわしいウィットに富んだコメントで会見を締めくくった。

高橋健介＆萩谷慧悟ペアゲネプロレポート

陽気なラジオDJ風の影アナに誘われて、劇場は90年代のアメリカ・ネブラスカ州へとタイムスリップ。高校からの卒業というひとつの終わりを迎えて、「ハッピーニューイヤー！」と喜びを高らかに叫ぶウィル（演：高橋健介）の独白から物語は動き出す。

ウィルは学校の人気者のマイク（演：萩谷慧悟）から、1本のミックステープをもらう。テープに吹き込まれた音楽をきっかけに、高校では交わらなかった2人の時間が交わり始めることに。

本作は2人ミュージカル。舞台中央に設置された時計の針にも見える回転式セットも、キャストの2人が動かしていく。まさに“2人だけの世界”だ。

とはいえ時代背景的には、性的嗜好をまだまだオープンにできない90年代。2人のぎこちなく縮まっていく甘酸っぱい恋のもどかしさを感じると同時に、恋を恋だと言えない切なさや苦しさといったやりきれない思いも胸に募っていく。感情がないまぜになるこの感覚こそが、青春なのだろう。

大人の世界に足を踏み入れる前のマイクとウィルは、決して雄弁ではない。ときに空回り、言葉にしきれない感情を抱いては沈黙する。これは誰もが青春の過程で味わったことのある感覚ではないだろうか。そんな2人を繋いでいくのが、大胆にアレンジされたマシューの楽曲たちだ。

音楽に思いを託し、言葉よりも視線で感情を吐露するシーンは、思わず2人の目力に引き込まれた。2人の間で少しずつ色づいていく空気を感じ取れるのも、2人ミュージカルという2人の芝居だけに集中できる空間のおかげといえる。

今回トップバッターを務める高橋＆萩谷ペアは、稽古場取材で周りから2人きりの世界ができあがっていると評されていた。言葉を交わすときも歌うときも、まさにその言葉通り。2人のあまりに完成された空間に、それを覗いているのが申し訳なく感じたほどだ。そこまで思えたのも、高橋の繊細な芝居と萩谷の爆発力ある芝居がウィルとマイクとして相性が抜群だからだろう。

2人だけの芝居も歌もたっぷり堪能できる1時間50分。本編の余韻に浸ったまま楽しめるラストのミニライブや、カーテンコール後のフォトタイムも、きっとペアによって大きく色が異なるのだろう。どこにでもありふれていて、けれどウィルとマイクにとっては一生忘れられないささやかな恋の行く末を、ぜひシアタークリエで見届けてみてほしい。ミュージカル『GIRLFRIEND』はシアタークリエにて7月3日（水）まで上演。