亀田佳明×saraインタビュー『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』「“言葉の雨が強烈な印象を残す”作品」(前編)
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2025年2月15日(土)より東京・シアタートラムにて、サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』が上演されます。イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンス氏の2作品『ポルノグラフィ』『レイジ』に、同じ出演者による同時上演のスタイルで、桐山知也氏の演出のもと挑みます。
サイモン氏は、20年間に約30本もの戯曲執筆や、リリック・シアターのアーティスティック・アソシエイト及びロイヤル・コートのアソシエイト・プレイライトを務めるなど、イギリス演劇界を担う劇作家の一人。小説『夜中に犬に起こった奇妙な事件』の舞台化ではローレンス・オリヴィエ賞とトニー賞を受賞するなど、その執筆力は高く評価されています。
『ポルノグラフィ』は、五輪開催決定に沸くロンドンを舞台に、2005年7月に発生した地下鉄・バス連続爆破テロ事件を題材に書かれた作品。被害者やその周辺の人々・実行犯など様々な人々の日常生活を、7つのオムニバス形式で描き出します。『レイジ』は2016年にハンブルグにて初演。2015年から16年へと移り変わるイギリスの都市の混沌とした大晦日の模様を捉えた、ジョエル・グッドマン撮影の写真から想を得た群像劇です。
THEATER GIRLは、亀田佳明さんとsaraさんにインタビュー。前編では、本作との向き合い方やお互いの印象などを語っていただきました。
本読みと稽古で感じた違いとは
――本作への出演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。
亀田:『ポルノグラフィ』については存じていたのですが、『レイジ』は今回初めて知りました。企画としても面白そうだと思ったし、プロデューサーの浅田(聡子)さんへの信頼もあって「やります」とお答えしました。
sara:私はどちらの作品も知らなかったのですが、サイモン・スティーヴンスの戯曲だということと初めての世田谷パブリックシアター主催の作品だったのですごく楽しみで。亀田(佳明)さんも出演されるということで「やります!」と即答しました。
――本を読んだ時と稽古に入ってからでは、作品の捉え方は変わりましたか?
亀田:だいぶ変わりましたね。最初に読んだ時、『ポルノグラフィ』は構造が分かりやすいのですが、『レイジ』は良い意味で読む度に捉え方が変わりました。最初は「何をどう捉えて、この作品に入り込めばいいのか」と、分からない部分があったのですが、稽古でみなさんの言葉を聞いていると「広い捉え方をしたら、全く違って見えるんだな」という気づきがありました。
今後も稽古を重ねる度に変わっていくと思うのですが、“言葉の雨が強烈な印象を残す”作品になる気がしています。観ている人のパーソナルな部分に入って、ふわっと花開くみたいな、不思議な演劇体験になるのではないかなと。
sara:自分一人で読んでいた時と、読み合わせで皆さんの声で聞くのとでは全く印象が違いました。さっき亀田さんがおっしゃっていたように「これはどういう意味なんだ?」と思っていた言葉でも、身体を使ってその状況で言葉にしてみたら、全く違う方に自分の気持ちが動いていくんです。そこからどんどん掴むことができて、意味を理解していく作業が面白かったです。
言葉が多く一見意味がよく分からなくても、俳優が体現すればお客さまも「この感覚分かるな」と思ってもらえるはずですし、そういうものがたくさん散りばめられています。うれしいや悲しいという感情をストレートに話すというよりは、情景描写や“忘れられない”と思えるシーンから作品に入り込める仕組みになっているので、さりげない会話が引っかかる作品だと思います。
そのようにサイモンさんの構成について、「どうしてそうなったんだろう」と考えることが、お客さまにとっても面白いのではと。登場人物が素直ではないので、最初は捉えづらいかもしれませんが、すごく巧みな本だと、やればやるほど思います。
お互いに感じる役者としての魅力
――稽古を重ねられてみてのカンパニーの雰囲気はいかがでしょうか。
亀田:いいんじゃないですかね。(演出の)桐山さんも含めて僕もですが、大きく巻き込んで先導していくというか。僕はリーダーシップがあるようなないような存在なので、そういう人たちが多いからこそ、いい感じに穏やかでゆるい空気が流れています。でも、お芝居に関してはみんな主張するので、そのバランスがいい気がしますね。
――亀田さんが引っ張っていくことが多いのでしょうか。
sara:そうですね。亀田さんを見ていると私たちは背筋が伸びるんです。同じシーンが多い(田中)亨さんともよく亀田さんのお話をしていて。亀田さんの役どころが他の登場人物にとっても作品の肝となるので、亀田さんのお芝居を受けて、私たちがどう変われるかで作品の色合いが変わってくると思います。
――お二人は同じ文学座に所属されていていますが、お互いに役者として魅力に思う部分を教えてください。
sara :初めて亀田さんのお芝居を拝見したのは、『弁明』という文学座のアトリエ公演でした。その時私はまだ地元にいて、テレビで放送されているのを観たのですが、とても衝撃を受けました。言葉で説明するのは難しいのですが、その時の亀田さんが私の中にずっと残っています。
東京に来てからもずっと亀田さんのお芝居は観ていて、まだ本科生だった時も同期と亀田さんのお芝居の話をするくらい。戯曲を読んだ時に自分なりにイメージしていたものではなく、人物のより深い心理を表現されていて心を掴まれました。うまく言葉で説明できないのですが、「もっと見たい」という思いでいっぱいになります。
亀田:僕が最初に彼女に出会ったのはリーディングの公演で、本人のエネルギーなのか熱量なのか、すごくキラキラしている印象でした。その時は、彼女が歌を歌えるとは知らずに研修科にいる子だと思っていて、「面白い子が入ってきたね」と話していて。そしたら、誰もが認めるすばらしい歌声で驚きました。
別の現場で会ってもずっとキラキラしていますし。あまり言うと稽古がやりづらくなるかもしれないのですが(笑)、今回も(田中)亨くんとのシーンを見ていて、生き生きとした感じがほとばしっています。2人のやり取りもすごく素敵ですし、歌とは別のシーンでも輝ける魅力を持った俳優さんは貴重だなと思うので、同じ劇団でいられることが誇らしいです。
sara:ありがとうございます……! 現場では緊張というより、亀田さんに直接聞くことができるのでとても安心感があります。文学座の先輩がいらっしゃることが本当に心強いです。
取材・文:THEATER GIRL編集部
公演概要
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サイモン・スティーヴンス ダブルビル
『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』
【日程】
2025年2月15日(土)~3月2日(日)
シアタートラム
【作】サイモン・スティーヴンス
【翻訳】小田島創志(『ポルノグラフィ』) 髙田曜子(『レイジ』)
【演出】桐山知也
【出演】
亀田佳明、土井ケイト、岡本玲、sara、田中亨、
古谷陸、加茂智里、森永友基、斉藤淳、吉見一豊、竹下景子
【スウィング】伊藤わこ 森永友基
【チケット料金(全席指定・税込)】
一般8,000円 高校生以下4,000円
※劇場友の会、アーツカード、U24割引あり ※託児サービスあり ※車椅子スペースあり
※未就学児はご入場いただけません
【チケット取扱い】
世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(電話・窓口10-19時)
世田谷パブリックシアターオンラインチケット https://setagaya-pt.jp/(要事前登録、24時間受付)
※チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、カンフェティでもチケット取扱いあり
【主催】公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】世田谷パブリックシアター
【後援】世田谷区
【企画協力】KAAT 神奈川芸術劇場(『ポルノグラフィ』)