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さとうほなみ×瀬戸さおりインタビュー 舞台『剥愛』「人間のどうしようもないところと向き合う。多くの人の心に刻まれる作品になったら」(前編)

INTERVIEW

2023年11月10日(金)から、東京・シアタートラムにて、舞台『剥愛』が開幕します。

本作は、脚本家・演出家の山田佳奈さんが主宰する劇団・□字ックによる新作公演。

物語の舞台は、とある片田舎の剥製工房。そこで、死んだ動物の皮を剥ぎ、内臓を取り除いて防腐処理を施し、その動物の生きていた姿に復元する剥製師をテーマに、人それぞれの正義の在り方、愛情のゆがみ、欲望、人が過ちを犯していくまでを丁寧に描きます。

キャストには、主演のさとうほなみさんをはじめ、瀬戸さおりさん、山中聡さん、岩男海史さん、柿丸美智恵さん、吉見一豊さんといった個性豊かな俳優陣が集まりました。

今回、THEAER GIRLでは、主人公である都会から片田舎へ出戻りしてくる長女・菜月を演じるさとうほなみさん、剥製工房がある実家に暮らす寡黙な次女・栞を演じる瀬戸さおりさんにインタビュー。

前編では、出演が決まったときの気持ち、ストーリーや役柄への印象、稽古で楽しみにしていることをうかがってきました。姉妹役ながら実は同い年のお二人。初共演ながら、すでにお互いが通じ合っているような信頼関係を見せてくださいました。

インタビュー後編はこちら

「もし、この役ができなかったら、私は次に進めない」という覚悟

――まずは、本作への出演が決まったときの心境から伺えますか?

さとう:『タイトル、拒絶』を見てから、山田佳奈さんが大好きだったので、ずっとご一緒したいと思っていました。

それから「こういう企画があるよ」というお話があり、本作のプロットを読ませていただいて。そのときに、この菜月という役は「私だ!」と思いました。なぜか自分と重なって見えたといいますか。 これはもうぜひやらせていただきたい。もし、この役ができなかったら、私は次に進めない。そこまで強く、菜月をやりたいと思いました。

瀬戸:私も以前、山田佳奈さんのワークショップを受けたとき、「いつかご一緒できたら」とお話しさせていただきました。それで今回、本当にお話をいただけたので、「もちろん参加させていただきます!」と、すぐにお返事しましたね。

「沈殿物というのは掻き回す人がいないと沈殿してしまう」

――私もプロットを事前に拝見しました。自分の心の奥底に菜月がいるし、それを見て見ぬふりしてきた栞もいるし、特に二人が言い合いしているシーンは胸がつかえてしまって……。お二人がプロットを読んだときは、どんなことを感じましたか?

さとう:全員が全員きっと思うところがあって、みんな内に秘めているもの、表に出さないものを抱えている。でも菜月だけは、それをブワーッと外に出しちゃう人ですよね。(山田)佳奈さんがおっしゃっていたことなのですが、沈殿物というのは掻き回す人がいないと沈殿してしまう。それが今回の『剥愛』では、菜月という存在です。言いたいことがぽっと表に出ちゃう菜月がいるからこそ、みんなの抱えていたものがぐちゃぐちゃになっていく。その混じり合いがとても面白いと思いました。

――菜月が出さないと、表面化してこないものがあるんですかね。

さとう:そうですね。菜月は思ったことも思っていないこともわりと言っちゃう人かな、と。栞にとっては、その姿が反面教師になっている。実際に私も妹とそういう関係性の時期があったので、「なんか見たことあるな」という感じがちょっとしました。

――最初におっしゃっていた、菜月は「私だ!」と思った部分、もう少し具体的にお伺いしてもいいですか?

さとう:そのまま似ているというわけではないのですが、境遇だったり、自由奔放さだったり、黒い部分を抱えているところであったり、もちろん誰にでもある部分だとは思いますけれど、菜月の行動や心境が自分と重なるんですよね。「ここが似ている」というよりは、私にとって共感性のある人物だと感じました。菜月として、今までの自分の経験値も出せていけたらいいなと思います。

今まで見て見ぬふりをしてきた部分と向き合うきっかけに

――瀬戸さんはプロットを読んでいかがでしたか?

瀬戸:率直に言うと、自分が向き合いたくない部分と向き合わなければいけない気がして。それがきつそうだなと思いました。いい人でありたい、嫌な部分を他人に見せたくない……。そういう見て見ぬふりをしてきた部分を、この作品で見つめ直さないといけないような感じがして、大変だろうな、と。

私も栞という人物に自分と重なる部分があって、自分を見ているようで苦しかったです。でも「ああ、だから見たくないんだろうな」と思ったんです。それってきっと認めなきゃいけない部分でもあるし、それを認めて前に進める部分でもあるのかな、と。

――栞という役柄に対しては、どういった印象をもちましたか?

瀬戸:菜月みたいに言葉に出せない、言葉に出せたら楽なのだろうけど、それをずっと溜め込んでしまう人。けれど、本心では自分も表に出したいと思っていて、おそらく菜月に対して憧れているところもあるんですよね。菜月のように自分はできないから。

だから菜月を嫌なやつだと思わないと、栞は生きていけないといいますか。そういう人物なのかなと思っています。私自身も、言いたいことがあっても、あまり口に出せるタイプではないので、そこは栞に共感できますね。

実は同い年のさとうさん、瀬戸さん。すでに信頼関係はバッチリ

――菜月に憧れている思いもありそうだというお話、たしかに今伺ってとても納得しました。お稽古はこれからだと思いますが、楽しみにしていることはありますか?(取材時)

(お二人で顔を見合わせてふふふと笑う)

瀬戸:この前、撮影でお会いしたときに「この皆さんとだったら、面白い作品になる」という予感がしました。それぞれのキャラクターを思い浮かべながらお話ししたんですが、本当に面白い方たちが集まりましたね。作品自体はきついと思うので、稽古場では明るくいられたらいいな、と。体力が持たないから(笑)。

――お二人は実際に会ってみてどうでしたか?

瀬戸:同い年だから心強いです。信頼もすでにあるので、衝突も気兼ねなくできる。遠慮なくいけそうだなと思っています。

さとう:もともと一方的にさおりちゃんのお芝居を拝見していて、とてもリスペクトする俳優さんの一人でした。同い年と知ったうえで会ってみて、「どういう人なんだろう?」と最初は思っていたのですが、撮影の日にぐっと距離が近づいた感じがしましたね。話した瞬間、初めて会った気がしなくて。でも「ああ、そうか。これ、仲悪い役なのか」とちょっと残念です(笑)。

(瀬戸さんも笑いながら、大きく頷いていました)

――菜月と栞の仲は縮まらずに終わってしまう、ということなんですかね?

さとう:それは……。お楽しみに、としか言いようがないです(笑)。

取材・文:矢内あや
Photo:MANAMI

インタビュー後編はこちら

公演概要

世田谷パブリックシアター提携
□字ック第十五回本公演『剥愛』

脚本・演出:山田佳奈

公演日程:
東京:11 月 10 日(金)〜19 日(日) シアタートラム
愛知:11 月 22 日(水)〜23 日(木) 穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース
大阪:11 月 25 日(土)〜26 日(日) 扇町ミュージアムキューブ

キャスト:
さとうほなみ 瀬戸さおり 山中聡 岩男海史 柿丸美智恵 吉見一豊

東京公演 提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
後援:世田谷区
愛知公演 主催:公益財団法人豊橋文化振興財団
企画・製作:□字ック/ナッポス・ユナイテッド

公式サイト: http://www.roji649.com/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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