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井上小百合インタビュー 舞台「奇蹟 miracle one-way ticket」「それが人生だと、お客さまに受け取っていただけたら」(後編)

INTERVIEW

――本作では、マリモの過去に触れていくような場面もありますが、井上さん自身の封印したい過去がありましたら教えていただけますでしょうか。

役者のお仕事で言うと、一度だけ舞台上で台詞がパッと飛んでしまったことがあって……。本当に恐怖だったのですが、台詞が飛んでしまった瞬間に「あれ、どこいった?」と一生懸命頭の中で「出てこい! 出てこい!」とやるものの、全然出てこなくて。もうとにかく近い言葉をひたすら喋って、周りの役者さんにパスを回したんです。でもお客さまは全く気付かなかったそうで、なんとか芝居が上手くつながって良かったなと思いましたが、すごく怖かったですね。

その時に演出家さんが「台本を文字で読んでいたらダメだよ。小百合ちゃんがその場を上手く立ち回れたのは、感情で記憶していたからだと思う。だから、台詞が違っていてもニュアンスは合っていて、別物にはならなかった。とてもいいことだと思うよ」と言ってくださいました。

それ以降、いろんな覚え方はありますけど、自分は文字で覚えないようにしています。この人にこう言われたからこういう発言をした、こういう気持ちになったからこういう言動をしてしまったと、まず感情で入れていくようにしたら、もっとスムーズに覚えられるようになっていたので、一回あそこで失敗しておいてよかったなと、今は思っています。

――それでは最後に、本作を楽しみにしてくださっているお客様へメッセージをお願いします。

ミステリーと言っても、エンタテイメントとして本当に多くの要素・仕掛けがある作品です。でも、ただ楽しいだけではなくて、観た後にふと我に返って心が動く感覚もあって。実は今世間で注目されている社会的な問題も含まれていて、それをファンタジーのように表現している北村 想さんの世界観が面白く、奥が深いです。きっと考えさせられることも多いと思うので、観に来た方がいろんな見方・感じ方をしていただけたらと思います。

すごく難しい題材を取り扱っていたりもするのですが、最後には「これでいっか!」と思ってしまうエンドロールが待っています。今こういう時代になって、いろんな思いで観に来てくださる方が多いと思うのですが、そういう方々が「なんかいろいろあるけれど、まあいっか! それが人生か」と思ってしまうような、パワーと楽しさを持った作品なのでぜひ観に来て、元気をもらって帰っていただけたらなと思っています。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:加藤孝
ヘアメイク 奥山信次(barrel)
スタイリング 中川原有(CaNN)

インタビュー前編はこちら

公演概要

シス・カンパニー公演
「奇蹟 miracle one-way ticket」

作:北村 想

演出:寺十 吾

出演:
井上芳雄 鈴木浩介 井上小百合 岩男海史 瀧内公美 大谷亮介

【東京公演】
3/12(土)~4/10(日)
(※3月12日~17日は公演中止)
世田谷パブリックシアター

【大阪公演】
4/13(水)~4/17(日)
森ノ宮ピロティホール

公式サイト:https://www.siscompany.com/kiseki/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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