マルシアインタビュー 丸美屋食品ミュージカル『アニー』「エンターテインメントを通していろんな時代や世界へ旅をする」(前編)
2022年4月23日(土)より、東京・新国立劇場 中劇場にてミュージカル『アニー』の幕が開きます。 夏には宮城・大阪・金沢・名古屋公演も予定しており、新型コロナウイルス感染症対応のため、内容や演出を変更して休憩なし約90分の特別バージョンでの上演となります。
『アニー』が誕生したのは1924年。「ザ・リトル・オーファン・アニー(小さな孤児アニー)」という漫画として、新聞「ニューヨーク・デイリー・ニューズ」に連載されたのが始まりです。 1986年の上演から、総上演回数は1,900回となり、今年は生オーケストラでの上演となります。
舞台は、1933年の世界大恐慌直後の街・ニューヨーク。誰もが希望を失うなか、11歳の女の子アニーだけは元気いっぱいです。11年前、孤児院の前に置き去りにされたというのに、いつか両親が迎えに来ると信じて、逆境にひるむことなく前向きに生きています。そんなある日、大富豪オリバー・ウォーバックスの秘書グレースに気に入られたアニーは、クリスマスの2週間をウォーバックスのもとで過ごすことに。ウォーバックスは、アニーを養女にしたいと思うようになりますが、アニーは本当の両親と暮らすという夢をあきらめません。その強い気持ちに打たれたウォーバックスは、懸賞金をかけて彼女の両親を捜します。ところが、それを知った孤児院の院長ハニガンと弟ルースター、その恋人のリリーは、懸賞金目当てに悪だくみを始め……。
37年目となる今年のアニー役は山崎 杏(やまざき あん)さん、山本花帆(やまざき かほ)さんが演じます。大人キャストは、大富豪ウォーバックス役の葛山信吾( ※葛山の葛は正しくは「ヒ」 )さん、ハニガンの弟ルースター役には財木琢磨さん、ルースターと組んでアニーたちをだますリリー役には島 ゆいかさんとフレッシュな顔ぶれに。また、孤児院の院長ハニガン役のマルシアさんは2017年から3回目の出演、大富豪ウォーバックスの秘書グレース役の笠松はるさんは昨年からの続投となります。
今回THEATER GIRLでは、ハニガン役のマルシアさんにお話を伺いました。前編では、役柄への思いやキャストへの印象を語っていただきました。
ハニガンの強さの理由もお見せしたい
――昨年は初日のみの公演となってしまいましたが、その時の心境を改めて聞かせていただけますでしょうか。
昨年は、悔しいの一言でした。私たち大人は状況を理解することができても、アニーという作品は子どもたちがメインのミュージカルなので。みんな1公演しかできなくて、心の置き場がなかったと思います。子どもたちの泣き声に耐えられなくて、心が痛むということはこういうことなんだなと思いました。冷静でいないと私も気持ちが引っ張られてしまうくらいでした。もちろん、私自身もたくさん稽古をしたにも関わらず、初日が千秋楽になるという経験は今までなかったので、悔しかったですね。今年は改めてキャストも変わるので、楽しみしかないです。
――マルシアさん演じるハニガンは、どのような女性だと思いますか。
すごく強くて、悪知恵のある女性だとよく言われます。たしかにその通りかもしれませんが、私はハニガンの強さを分析した上でお芝居をしています。
時代の背景から考えても、アニーもハニガンも、必死に生きているということだと思うんです。仕事をしなければいけないけど、不向きで慣れていない子どもに強くあたってしまう。周りには夫や子どもがいる人ばかりなのに、彼女には彼氏すらいない。ハニガンは親や育てられた環境が良くなかったのかもしれません。人それぞれですが、ハニガンの性格もやむを得ず変わってしまった。だけど、彼女も必死に生きているということを大事にしていきたいです。
――そんなハニガンを、どんな風に見せていきたいとお思いですか。
彼女の事情があっての振る舞いだということをお芝居でお見せしたいと努力してはいるのですが、難しいです。台詞からも強い女性に見えてしまいますが、根っこは普通の女性でありたいという気持ちが、彼女にもあると思っています。
去年とは一緒にお芝居をする相手が変わるので、相手がどんなボールを投げてくるかによって私も変わると思います。強弱をつけたハニガンを作っていきたいです。何度もやっていると慣れてくる部分もありますが、子どもたちと接する時間が多いので、子どもたちのその時の反応によると思います。
新しいチーム・メンバーですし、子どもたちの表現ってこんなにも違うんだなという楽しみがあります。私も、時には少し荒れたハニガンになるかもしれないです(笑)。