ウエンツ瑛士インタビュー 『てなもんや三文オペラ』「舞台はひとりじゃないことをいちばん感じられる場所」(後編)
――稽古中の息抜きにはどんなことをされていますか?
稽古中だと、行き帰りは歩いたりします。よほど家から遠くなければ、稽古が終わった後にその日の稽古の内容をずーっと脳内再生しながら、1時間とか2時間とか歩きますね。
――かなり歩きますね!?
もう病気に近い感じですね(笑)。でもなんか、それがラクなんですよ。で、家に帰ったら風呂に入って、みたいな。それが一番多いかもしれないですね。
――地方公演でも散歩をするのが好きとおっしゃってましたし、何か自分を整えるような時間になっているのでしょうか?
なんとなくですけど、動きながらものを考えるほうが、わりとポジティブに進んでいく感じがして。止まって考えると、悪い方向に走っちゃう感覚が自分にはあるので。そうなると、動いていることが重要なのかもしれないですね。
「実家に心を盗まれた」20年弱ぶりの実家暮らしで感じたこと
――次は舞台のストーリーにちなんだ質問です。盗賊団の親分に恋心を盗まれてしまったのがポールですが、恋以外でもこれまでに「これは心を盗まれた!」と感じたエピソードがあったら聞かせてください。
イギリスから帰ってきて2年弱くらい、実家に住んで母と二人暮らしをしていたんですよ。それまでもちょこちょこ帰省はしていましたけど、僕が実家を出て以来なので、だいたい18年ぶりくらいの実家暮らしで。それからまたひとり暮らしを始めたんですが「今日、実家に行こうかな」と思う頻度が増えたのは、実家に心を盗まれたんだと思います。親のありがたみや大切さ、いっしょに飼っているペットにも、その2年で心をだいぶ盗まれて、近くに行くことがあると「あ、実家に寄ろう」っていう感覚が生まれましたね。
――大人になると、親との距離感が少し変化したりしますよね。それもあったりしますか?
あると思います。それまでだったら、誕生日に会ってしゃべるとか、舞台を観に来てくれるとか、僕の家に母がちょっと遊びに来るとかだったんですけど。そういう時にするおしゃべりと、24時間、365日いっしょに過ごしてやっと出てくる話題っていうのは、全く違ったんですよね。それはもう昔の僕からすると、何歩も親子関係が先に進んだなっていう感覚がすごくしましたね。
――では最後に、公演を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。
どんな作品になるんでしょうね。僕もまだ全然想像がついていません(笑)。この一年、二年でいろいろとフラストレーションがたまったり、きっと生活リズムも変わったりしている中、目の前で起こるナマのお芝居のやりとりはどう映るんでしょう。でも、素敵だなと思ってもらえるようにしていけたらと思います。人と対面で会ったりするのが難しくなっている状況で、舞台上ではいいことも悪いことも含めて人同士が接していく……そういうある種のぶつかり合いや愛情の交感を間近で見ることで、何か持って帰っていただけるものがあるんじゃないかなと思うので。そこをぜひ期待していただけたらと思います。
取材・文:古原孝子
Photo:野村雄治
インタビュー前編はこちら
公演概要
パルコ・プロデュース2022 『てなもんや三文オペラ』
作・演出:鄭義信
原作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:クルト・ヴァイル
音楽監督:久米大作
出演:
生田斗真 ウエンツ瑛士 福田転球 福井晶一 平田敦子
荒谷清水 上瀧昇一郎 駒木根隆介
妹尾正文 五味良介 岸本啓孝 羽鳥翔太 大澤信児 中西良介 近藤貴郁 神野幹暁
根岸季衣 渡辺いっけい
演奏=朴勝哲
スタッフ:美術:池田ともゆき 照明:増田隆芳 音響:井上正弘 衣裳:半田悦子 ヘアメイク:宮内宏明 振付:広崎うらん 歌唱指導:西野誠 稽古ピアノ:國井雅美 擬闘:栗原直樹 方言指導:山本篤 演出進行:松倉良子 舞台監督:藤本典江
宣伝美術:榎本太郎 宣伝写真:森崎恵美子 宣伝衣裳:森保夫 宣伝ヘアメイク:大宝みゆき
<東京公演>
2022年6月8日(水)~30日(木)
PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)
https://stage.parco.jp/
<宮城公演>
2022年7月4日(月)~5日(火)
東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
<福岡公演>
2022年7月9日(土)~11日(月)
久留米シティプラザ ザ・グランドホール
<大阪公演>
2022年7月16日(土)~24日(日)
森ノ宮ピロティホール
<新潟公演>
2022年7月30日(土)~31日(日)
新潟テルサ
<長野公演>
2022年8月6日(土)~7日(日)
サントミューゼ 上田市交流文化芸術センター 大ホール
企画・製作:株式会社パルコ
公式サイト:https://stage.parco.jp/