松下優也インタビュー ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』「バドは物語にドラマ性を持たせられる役」
――バド役としての、今作の見所を聞かせてください。
とにかく鬱陶しいキャラクターなんで「とにかく鬱陶しがられたらええやん」って思ってます。もちろん、バドとして(笑)。ローズマリー(演/笹本玲奈さん)なんかにもすごく嫌われてるし、だからお客さんからも「鬱陶しい! 腹立つ!」って思ってもらえればいいかなって。でもどこか憎めない、って結果的に思ってもらえるくらいにしときたくもあります。「ムカつくやつだけど、コイツがいないと話が面白くない」みたいにできたらいいなと考えています。
――物語のいいスパイスになるポジションですね。
台本を読んで「バドがいないと、フィンチけっこう上手いこといくやん」って思ったんですよ。いや、バドがいたところで、バドなんて雑魚キャラなんですけどね!(一同笑)でもせめてバドがいないと、フィンチがトントン拍子に行き過ぎちゃうから、そうしたらドラマがないでしょ? だからこその重要な役回りだと思うので、すごくやりがいを感じてますね。
芝居に臨む時には「まだまだ知らないことばかり」という思いで
――音楽活動や俳優業など、さまざまな顔を持っていらっしゃる松下さんですが、ミュージカルに出演される時にはどんな気持ちで臨まれているんでしょうか?
基本的には、本当に謙虚でありたいと思ってます。それはミュージカルに限らず、芝居というもの自体に対してなんですが。再演作品であったり、自分が過去に演じた役をやるんだったらまた話は別ですけど、それまでに芝居をやっていようと、その役、その作品は初めてやるわけで。そういう意味では常に謙虚な姿勢で作品に取り組みたいなと、いつも意識するようにしています。
僕くらいのキャリアになってくると、それなりにやってきたからこそ「これはこうなんだ」みたいなものができてきちゃうんですよね。でもそれこそが、物事が見えなくなる一番の要因だったりするので。今まで得てきた知識やテクニックのいい部分はちゃんと演技に乗せながら、基本は謙虚にっていう。
――「知らないことがある」と思って臨むほうが、自分の得られるものも大きい気がしますね。
最近知った言葉でいいなと思ったものがあるんですよ。僕が宇宙のことなんかがすごく好きなんですけど、アイザック・ニュートンの言葉に「我々は一滴の水滴については知っているが、海については無知である」というものがあって。僕としてはそれがしっくりきたし、自分もそうありたいなと。「知らない」からこそ、作品に対して謙虚でいられるのかなと思うので。だからお芝居の現場ではどこでも「まだまだ自分には知らないことだらけだ」って意識を持つようにしています。