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荒木宏文主演舞台「モノノ怪~化猫~」が開幕! 「映像(デジタル)と生身の芝居(アナログ)の融合を楽しんでほしい」

REPORT

2023年2月3日(金)に飛行船シアターにて4日(土)より開幕する舞台「モノノ怪~化猫~」のゲネプロが行われ、薬売り役を演じる荒木宏文らキャスト陣と演出のヨリコ ジュン、アニメ監督の中村健治が取材会に登壇した。

「モノノ怪」は2007年7月にTVシリーズとして放送され、スタイリッシュなキャラクターデザインに、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像を生みだし話題となった作品。謎の“薬売り”がモノノ怪に立ち向かう冒険譚は、多くのファンを魅了し、2020年に行われた、ノイタミナ歴代70作品を対象とした投票企画「あなたが選ぶ思い出の 3作品」(2005~09年度制作部門)において堂々の第1位を獲得。放送から15周年を迎えた今もなお根強い人気を誇っている作品だ。

2022年5月13日にはアニメ「モノノ怪」十五周年記念企画の始動が発表され、劇場版「モノノ怪」の制作および舞台化が発表された。舞台では、アニメ「モノノ怪」がシリーズ化するきっかけとなった、2006年のTVアニメ「怪~ayakashi~」より「化猫」が上演される。

囲み会見には、薬売り役の荒木宏文、珠生役の岡田夢以、若い頃の坂井伊行役を演じる大平峻也、坂井家の下働き・加世役の水原ゆき、坂井家の若党・小田島役の白又 敦と、演出/映像を担当するヨリコ ジュン、アニメ監督の中村健治が登壇し、初日に向けての意気込みや本作の見どころを語った。

主演の荒木は「劇場に入って、いろんなテクニカルな部分を確認し、やっと完成が見えてきた状態です。千秋楽まで常に高みを目指して、改善できるところはどんどん改善しながら、模索しながら、最高傑作を目指して演じていきます」と自信をのぞかせる。

続いて岡田は「すばらしいキャストの皆さん、スタッフの皆さんのなかで重みのある役どころをいただき、ちょっとプレッシャーなどもありますが、ご観劇いただける皆さんに、すべての皆さんに、舞台『モノノ怪』も最高に面白かったと言っていただけるように精一杯演じさせていただけたらなと思います」と語っていた。

大平は「海外からも愛された『モノノ怪』の世界、キャラクターがお客様の心をとらえ、原作ファンの方にも、そして初めてこの作品に触れる方にも楽しんでいただけるように全身全霊で坂井伊行を演じたいと思います」と、直前にインタビューしたという同じ坂井伊行を演じる大重わたるのコメントを読み上げるが、横からメモをのぞき見していた荒木に「全身全霊にちゃんとフリガナ振ってえらいじゃん(笑)」とバラされ苦笑いしつつ「恨みを買われる役ですが、この役のポジションをまっとうしたいです。帰りの夜道に気を付けながら帰りたいと思います(苦笑)」とユーモアを交えながらコメント。

取材陣の笑いを取った大平に続いて「この後にコメントはしずらい」とぼやく水原だが、「漫画もアニメも幅広いファンの方がたくさんいらっしゃる作品。舞台版も薬売り役の荒木さんを筆頭に、皆さんのお芝居やパフォーマンスに映像と照明も入って空間ごと楽しんでもらえる作品になったんじゃないかなと感じています。私も加世をはつらつと元気に頑張って演じたいと思います!」と満面の笑顔。

白又も「アニメーションで幻想的に描かれた作品を舞台に落とし込むときにどう表現されるか、注目してみていただければと思っています。主演の荒木さんをはじめ、大先輩方と共演できることは僕にとってすごく貴重な機会なので。一公演一公演大事に誠心誠意努めたいと思います」と引き締まった表情を見せる。

演出のヨリコいわく、「最初に中村監督といろいろ話をして、荒木くんと共有しながら稽古を進めていったのですが、監督に「絶対にやってはダメなことは何ですか?」と聞いたら「食べることと寝ることの二点だけ」とおっしゃっていたんですね。それが僕らにはいいプレッシャーになったし、そのうえで「舞台版はこうだよね」っていうのを模索しながら一生懸命芝居を作っていきました」とのこと。

本日、衣装を身に着けたキャストを初めて見た中村監督は「やっべえ。立体になってるって感動しました(笑)。アニメはアニメ、舞台は舞台で、正解は重なりつつ、ちょっと違った部分もあると思いますが、逆に違いがないと面白くないと思うんですよね。そういうところを僕自身も楽しみに、この後のゲネプロを観劇したいと思っています。とにかく今はワクワクしています」と目を輝かせていたのが印象的だった。

また、ヨリコ氏といえば映像を効果的に使った演出で迫力ある舞台を作り上げることでも毎回注目を集める演出家。本作でも、極彩色に彩られたアニメの独特な世界観を舞台上でどのように表現するのかと質問が及ぶと「平面(アニメ)から立体(舞台)になった時に、違う方法を使わないといけないのかなとは思っています。舞台では実際に物体を出さないといけないとか……まあこの辺は詳しくは言えないですけど(苦笑)。でも和のテイストを表現するのに、単純にそういう絵を出せばいいのかと言えば必ずしもそうではない」とこだわりを語った。

その言葉を受けて荒木も「舞台ってすごくアナログなエンターテイメントだと僕は思っていて。だからこそ肉体表現で表現をして、そこに何が映っているのか、何が見えるのかを客席のお客様が想像しながら“色”を付けていってくれるのだと思っています。映像にすべて頼って「こういう答えです」って作ってしまうのではなく、映像も表現も幻想的なものにすることによってお客様が観てそれぞれに答えを合わせをしていくところに演劇の魅力がある。映像に頼りすぎない、でもうまく利用する……。この飛行船シアターは270度映像を映すことが出来る素敵な劇場なので、映像を使う際は豪華に使い、でも僕たちは映像にフォローされるのではなくデジタルとアナログが50%:50%でちゃんと対立できるように、板の上で精一杯表現しようというプレッシャーを持てたので、それがこの作品ではいい化学反応になっているんじゃないかと個人的には思っています」と言葉を続ける。

最後に、キャストそれぞれ「自身が演じる役の見どころ」を問われ、

荒木「薬売りは、こういった見た目ですが“人間”らしいです。人間なんですが、さきほど中村監督からいただいた二つの条件(「食べない、寝ない」)を聞いたときに、人間だということを大前提でキャラクターの説明があるのにも関わらず、食べる姿と寝ている姿が世に出ていない。ここに“何か”理由があるんじゃないかなと僕は思っているんですね。「そういった面もあるよ」ということを踏まえたうえで“人間”を演じるようにしました。アニメをすべて見ていてもまだ答えが見つかっていない部分ではあると思いますが、何かヒントになるような表現が板の上に立っているときやセリフを言っていないときのたたずまいにもあるんじゃないかなと思うので、そんな点にも注目して観ていただけたらと思います」

岡田「アニメを見た方、皆さん同じ気持ちだと思うんですけど、珠生さんは「こんな悲しい立場の人っているんだ」って思うくらい、切なくて悲しい運命の方。それと同時にとても優しくて、自分の命を削ってでも猫ちゃんにご飯をあげる「命を守る強さ」を持っている方です。優しいけど強さを兼ね備えた強い女性。それが珠生さんの魅力だと思います」

大平 「坂井伊行は本当に最低な男です。人として最低だし、彼の気持ちを分かりたくないけど、演じるうえではキャラクターとして一本筋を通さなくてはいけない。ある意味、彼は彼なりの自分の“想い”、自分の信じる“正義”を貫いたうえであのような行動をしたわけなので、僕もそれを役に落とし込んで筋を通すことがこの舞台での役割ですからね。人間は自分でも気づかずに体の暴力や言葉の暴力で相手を傷つけることってあると思うけど、坂井伊行はそんな反面教師的なポジションなので、この舞台のひとつのピースとしてしっかりまっとうしないといけないなと思っています。まぁそんな最低なところが魅力だなと思っております(苦笑)」

水原「「モノノ怪~化猫~」は、人間の業的なものがすごく詰まっている作品だからこそ珠生さんのはかなげな感じがすごいキラキラしていたりするんですけど……。登場人物の中でも加世や小田島さんは見ているお客さん側の目線だから素直に喜怒哀楽を表現できるキャラクターですし、それが魅力かなと思っています」

白又「小田島は一番わかりやすいシンプルなキャラクター。まっすぐないいヤツっていう認識を持って見ていただくと、すごく見やすいと思います。坂井家で起こる事件について何も知らないからこそ、突然やってきた薬売りさんにもいろんな意見を言うし、周りの人に対して一番気持ちが動いて一番多く会話をするキャラクターです。なのでお客さん目線で追ってもらえればストーリーがわかりやすくなるキャラクターだと思っていて……そこを加味して観ていただければと思います」

あらすじ

「人の世のある限りモノノ怪あり」。
古より人の情念や怨念にあやかしがとりついたとき、モノノ怪となり人に災いをもたらす。
このモノノ怪を斬ることができるのはこの世で唯一の退魔の剣。
それを使い諸国を巡りモノノ怪を斬る薬売りの男がいる。
人の心を救いながら薬売りは旅を続ける。

【真(まこと)と理(ことわり)、お聞かせ願いたく候。】

ゲネプロレポート

※公演内容に一部触れています。

会見の後、関係者に向けゲネプロが公開され、坂井家の下男・弥平の口上で物語は幕を開けた。

とある武家の屋敷、坂井家を訪れた謎の薬売り。

その日は当主の伊顕と水江の一人娘・真央が輿入れする日だったが、彼女は突然謎の死を遂げてしまう。

混乱する屋敷の中、厨(台所)で下働きの加世と話し込んでいた薬売りは、ただならぬ気配に奥の座敷へと駆け付けると結界を張り“化け物”を追い払うが、逆に侵入者として捕らえられてしまうのだった。

ステージの上には何枚もの白いパネルがシーンごとに移動し、屋敷の外観、厨房、人々が集う広間の中、隠し部屋など様々なシーンを映し出す。

また、舞台上だけにとどまらず、壁やステージの上部までフルに使って幻想的かつ迫力のある映像で会場全体を「モノノ怪」の世界へと染め上げていた。

そして物語のタイトルにもある“化猫”は、女性アクロバットダンスカンパニーG-Rocketsメンバーによるしなやかで躍動感あふれるパフォーマンスで表現。

憎しみの感情に満ち溢れたまがまがしさを爆発させる一方で、珠生とのシーンでは子猫の無邪気さや哀しみの感情がにじみ出る繊細な動きにギュッと胸が締め付けられる一幕も。

物語が進むにつれて明かされる登場人物たちの複雑な関係や、過去のストーリーが今にどう影響を与えているのか、時間軸が目まぐるしく入れ替わるため分かりにくい部分も多少あるかもしれないが、同じように過去に起こった事件を知らない「加世」や「小田島」の視点でストーリーに没頭することで、次々と解き明かされる事実に驚愕すると同時に、時として不快な感情が湧いてくることだろう。

人間の醜い部分、自分勝手な部分が詰め込まれた「業」の物語は、観る者の胸に何を刻むのか――。

舞台「モノノ怪」は、2月15日(水)まで上演。

また、2月4日(土)の12:00/16:30に定点カメラでの配信、2月12日(日)の12:0016:30公演は切り替えカメラによる配信も決定。(アーカイブ配信期間中は何度でも視聴可能)

詳細は、公式サイトをご確認ください。

©舞台「モノノ怪」製作委員会

文:近藤明子

公演概要

舞台「モノノ怪~化猫~」

原作 モノノ怪「怪~ayakashi~」化猫
演出/映像 ヨリコ・ジュン
舞台脚本  月森葵
原脚本   横手美智子

出演:荒木宏文
岡田夢以 大平峻也 大重わたる 水原ゆき 伊藤裕一 白又 敦 西 洋亮
遠藤拓海 伊藤わ 高山猛久 新原ミナミ 中村哲 波多野比奈
川村理沙/肥田野好美/大橋美優/鈴木彩海(G-Rockets)

公式サイト https://officeendless.com/sp/mononoke_stage/

公式Twitter @mononoke_stage

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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