北乃きいインタビュー 『真夏の夜の夢』 「未完成だからこその、いい緊張感を感じています」
――公式サイトのコメント動画では「毎日が完全燃焼の日々になりそう」とおっしゃっていましたが、実際の稽古場の雰囲気はいかがですか?
正直に言ってしまうと、まだ不完全燃焼です(笑)。なぜかと言うと、リモートだからという部分が大きいんですよね。プルカレーテさんも「実際、僕は現場に行って自分も動きながら演出を付けるタイプの人間だから、いつもなら1秒で伝えられることを、200文字、300文字にして伝えなきゃならない」と言っていて。その分だけ時間が割かれるので、動く時間がなくなっていくという。
さらに、前日まで演出が変わるかもしれないので、“自分の役の演出を決まり切った形でもらって、それを全うする”という感じじゃないんですよね。(プルカレーテさんは)役者が安心して落ち着いてしまったり、慣れてしまったりするのが好きではないみたいなんです。
――ルーティン化を避けていると。本当に先が読めない状況なんですね。
一度は決まっていたところも変わったりしますからね。先は読めないし、もう読まないでおこうと思って。そもそも私自身も、決め切ってやりたいっていうタイプでもないので、この状況はキツくはないんです。不完全燃焼ではありますけど、プルカレーテさんの決まり切ったものはイヤだっていう気持ちも分かりますし。
舞台って何度も同じことをやるから「別の芝居がやりたくなる」という言葉を聞いたりすることもあるんですが。もともと私は毎日ちがうって感じるタイプなので、飽きたりすることはあまりないんです。なので、未完成だからこそ、いい空気や、いい緊張感があるのはすごく分かりますね。
――決まった型を繰り返して磨きをかけるのとは、またちがった深みが出そうな感じがしますね。
作品にもよるとは思うんですけどね。ダンスや歌、特にミュージカルは、やっぱり完成させたものを披露するべきものだと思いますし。それに対して(ストレートプレイの)芝居は、未完成なものが逆に完成していたりするんじゃないかなって思ったりもするんです。そんな、語れるほどの経験があるわけではないですが(笑)、ミュージカルとストレートプレイの両方をやって感じたことがあって。
ミュージカルは、決め切っていかないとできないことが、けっこうあったりするんです。バックで流れている音に合わせて、この時にこの音でこれを言う、ということがあるので。そこを逃すと、次の曲に入れなかったりと、上手くいかなくなるんです。そうやってミュージカルを経験した後にストレートプレイをやっていると、やっぱりストレートプレイではあまり決めきらないほうが役者的にもいいのかなと思いますね。