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北乃きいインタビュー 『真夏の夜の夢』 「未完成だからこその、いい緊張感を感じています」

INTERVIEW

東京芸術祭2020 東京芸術劇場30 周年記念公演・野田秀樹潤色、シルヴィウ・プルカレーテ演出による「真夏の夜の夢」が10月15日より上演されます。東京を皮切りに、全国6会場を巡るこの公演では、日本とルーマニア、両国の演劇界の一線で活躍を続ける鬼才による初タッグが実現。野田版シェイクスピアが、プルカレーテ氏の解釈によってどう息吹を吹き込まれるのか、期待が高まります。

実力派揃いのキャスト陣から、今回の取材ではときたまご(原作ではハーミア)役を演じる「北乃きい(きたの・きい)」さんにインタビュー。作品の見所はもちろん、北乃さんの飾らない素顔が垣間見えるお話がうかがえました。

ときたまご役は全力で挑んだからこそ掴み取れた

――ときたまご役での出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

まずは自分の名前があるのを、何回も確認しました(笑)。最初にオーディションを受けた時には、自分が何の役なのか知らなかったんです。オーディション中にも台本を読んでと言われるようなことはなかったですし、その当時やっていた舞台のダンスと歌をやっただけだったので、「どうして選んでくれたんだろう?」とも感じました。でも何となく、台本を読んでいて「この役かなぁ」と思ったのがときたまごでした(笑)。

台本については、野田(秀樹)さんの世界観は言葉遊びが面白いなという印象で。読みながら笑ってしまって、あっという間に読み終えちゃいましたね。こういうコメディタッチの作品をやるのは、今回が初めてなんです。

――北乃さんの新たな一面と出会える作品になりそうですね。オーディション時の印象的なエピソードがあったら聞かせてください。

演出のプルカレーテさんと30分くらいやり取りをしたんですけど、すごく物静かな方で。「じゃあとりあえず、今できるものを……『人形の家』をやったことがあるのなら、それをやってみて」と言われたんですけど、もう1年くらい前の作品だったので、正直セリフをあまり覚えていなくて。ただ、ストーリーや、どういう感情でどんなシーンをやっていたかは頭の中に入っていたので、いちばん印象的だったラストシーンを演じました。

――主人公・ノラが家を出ていくシーンですね。セリフはどのようにされたんですか?

あの時のノラの気持ちにもう一度入って、即興でやったんです。

――即興ですか!

あれだけ本番をやったので、もう私の中にノラが入っていて、アドリブでできたんですよ。「私はあなたの人形じゃない」って、大泣きしながら一連のシーンをやりました(笑)。

――かなり熱演されたんですね。

そのあとはダンス。「ダンスを踊って」と言われて、ちょっと変わったものが好きかもしれないなと思って、コンテンポラリー風のモダンバレエにしたんです。踊るって知らなかったから、スカートで行っちゃったんですけど、もう気にせず踊りました(笑)。

それから、歌のテストもありましたね。(鍵盤を叩いて)出された音に合わせて「あー♪」って声を出したり、ミュージカル「ハル」の歌を「これ、聞こえるのかな?」ってくらいの囁き声で歌ったり。そんな感じであれこれやっていたら、なぜだか受からせていただいて。

――(笑)。

私の前に受けていた(鈴木)杏ちゃんが受かったっていうのを聞いてましたし、そもそも杏ちゃんが受けてる時点で「私はもう無理だな」と思っていたのに、自分も受かったからびっくりしてしまって。「え、ウソ!?」「全力でやってよかった!」と思いました。

実のところ、杏ちゃんが先に入っているということがかなりのプレッシャーだったんです。でも、それで「もう勝ち目がないし、何をやってもいい。言われたことに全力で応えよう」という思いでやったからよかったんだろうなって。

――そこで「全力でやろう」と思えて、さらに実行できるのはすごいことだと思います。囁き声で歌うというのは、ユニークですね。

ですよね。それがいつ生かされるのか待ってるところです。この前、囁くシーンは出てきたんですけど、囁く歌はまだなんですよ。今回、歌がたくさんあるんですが、すごくダークで、これまで聴いたことのないような歌を、みなさんは今回耳にすることになるかもしれません。歌詞も聴いたことのないような歌詞で。多分、80年生きている人でも聴いたことがない人がいるかもしれない、そんな感じの曲です。

――どんな曲なのかとても気になります。

本当に新しい感じがしますよ。ダンスと歌があるけれど、でもミュージカルではない。しかも、アカペラですし。プルカレーテさんは、映像や歌など、生でできるものは可能な限り生でやるそうなので、そのこだわりが感じられる作品になると思います。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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