北乃きいインタビュー 『真夏の夜の夢』 「未完成だからこその、いい緊張感を感じています」
――鈴木杏さんが演じるそぼろと、ときたまごは、対照的とも言える役柄だと思うのですが、杏さんのそぼろの印象はいかがですか?
すごくチャーミングです。みんな、かわいいかわいいって言ってます。「どうしてこんな動きができるんだろう?」っていうチャーミングさなんですよ。
そぼろの役は人間のかなりダークな部分を見せたりもしているので、演じ方によっては嫌われてしまうかもしれない役なんですけど。主役なので、観ている人の目線に寄り添って動かないといけないから、どこかで観る側の共感を得なくてはいけないんです。そんな中で杏ちゃんはすごく上手く、みんなから嫌われないそぼろを生きている感じがします。見ていて、とても勉強になりますね。
頼りになる共演者のアドバイスに助けられて
――デミ役の加治さんや、ライ役の矢崎さんをはじめ、実力派揃いの共演者のみなさんですが、どんなところで刺激を受けていますか?
日々稽古を見ていても、みなさん、稽古場でもお金を払えるくらい完成度がすごくて。タダで見ていていいのかなってよく思います(笑)。今回私が最年少なんですが、何かに苦戦していると、こちらから聞きに行く前にアドバイスをくださるんですよ。
この前もプルカレーテさんに「演劇のウィスパーボイスというものがあるから、それをやってほしい」と言われて、練習していたんです。ウィスパーって喉が潰れやすいんですが、そのシーンがわりと長いので、どうやって切り抜けようかと考えていたら、壤(晴彦)さんが来てくださって。「喉でもなく、胸でもなく、その間のあたりから声を出す」「ここで出すと響くから、いいよ」と教えていただきました。杏ちゃんも、前に壤さんからウィスパーボイスの出し方を教えてもらったと、後から聞いたんです。
――なんて頼りになるみなさんなんでしょう!
野田さんの脚本が1992年に書かれたもので、時代背景がちょっと古いので、分からないことがあるとみなさんが教えてくださったりもします。「これは、この当時に流行っていた曲でね」みたいに。
――1992年となると、1991年生まれの北乃さんはまだ生まれたばかりですし、たしかに分からないことばかりになりますよね。
そうなんですよ。当時はまだスマホはありませんでしたけど、今回のプルカレーテさんの演出ではスマホが出てきます(笑)。そういうのも新しいですよね。92年に書かれた本を、今、プルカレーテさんが現代風に演出するっていうのが、すごく面白いなと思います。