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加藤和樹インタビュー ミュージカル『ファントム』 「ダークな中にも温かな愛があふれる物語をお届けします」(後編)

INTERVIEW

フランスの小説家ガストン・ルルーのベストセラー小説『オペラ座の怪人』を原作とするミュージカル『ファントム』が、2023 年 7 月・8 月に大阪・東京で上演されます。

2019 年に主演のファントム役を演じると共に演出も手掛けるという『ファントム』史上初の挑戦を成し遂げた城田優さんが、再演となる今回は演出・主演に加え、さらにダブルキャストでシャンドン伯爵も演じるという三刀流に挑みます。

THEATER GIRLは、初演に続き城田優さんとダブルキャストでファントム(エリック)役を演じる加藤和樹さんにインタビュー。後編では、“演出家:城田優”の印象、エリック役への思いなど、たっぷりと語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

前作の自分を少しでも越えていきたい

――改めて“演出家:城田優”について伺いたいのですが?

優は話が長い(笑)。

――いきなりそれですか(爆笑)!

まぁ、いい意味でなんですけどね(笑)。彼自身、多くの演出家の方と仕事をしてきた中で、描きたいもの・作りたいもののイメージが明確に頭の中にあるのだと思います。とにかく彼は芝居に一番重きを置いているので、「ミュージカルなんだけど、芝居としてちゃんと見せたい」というところがある。

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で共演した頃から「たとえ歌がぐちゃぐちゃになっても、気持ちを最優先にしたい」「感情を呼び起こして、それをお客さんに伝えたい」ってずっと言ってますし、僕も本来、芝居とはそうあるべきだと思いますが、ミュージカルは「とにかく上手く歌わなきゃ」というように歌の方に重きが置かれがちなんですね。だけど大前提は“芝居”であって、優自身が役者をやっているからこそ分かる気持ちだったり、彼が今まで培ってきた経験から出来る演出を我々に提示してくれる。だからこそ芝居にも細かい注文をつけるし、それがさっきの“話が長い”っていう言い方になってしまったんだけど(笑)、役者目線に立てるからこそできる彼らしい演出だと思います。

――前回はエリックのキャラクターについて二人でいろいろ考察したというお話も伺ったのですが、今回はどうでしょう?

「今回は今回で、いろいろやっていく中で新たに作り上げていきたいから話し合いたい」っていうのを、ついさっき言われました(笑)。僕も再演だからと言って前回演じた役をそのままなぞるつもりはないです。再演って、体が覚えているからどうしてもなぞってしまうところはあるし、その難しさは理解しているつもりなので、前回の自分をちょっとでも超えられたらと思っています。

――4年もの長い時間を、自分の中で温めて来たエリックという役ですが、今回新たに向き合って気づいたことはありますか?

それは実際に板の上に立ってみないと分からない部分なので、本格的な稽古が始まる前の現時点で「こうしよう」っていうのはあまり考えてないですね。まぁ曲はコンサートでも歌っているので、自分の中にエリックはちゃんと居るし、いつでもその感情に戻れるという自信はあります。

――初演(2019年)時の制作発表で「これまでとは違う加藤和樹を見せる自信がある」と城田さんがおっしゃっていましたが、今回もまた違う一面を引き出してくれるのかなという期待もありますか?

「違い」というか、さらに「磨き」がかかったものになればいいなというふうに僕は思っています。彼がどういう演出プランを考えていて、どのようにそこに導いてくれるのか楽しみでもありますし、逆に自分が優にどれだけの刺激を与えられるのか試されている部分もあると思うので、そこはお互いに刺激し合ってやっていきたいですね。

――今回、お二人が同じステージに立つということで、バチバチした姿が見られるのではないかと楽しみにしている方も多いと思います。

シーン的には短いですが、エリックとシャンドンが対峙する胸アツなシーンですし、そこはちょっと期待していただきたいですね。優とはミュージカル『テニスの王子様』からの付き合いで、いろんなことにチャレンジし続ける彼の姿に刺激を受けているし、引っ張っていってもらっている感覚があります。前回「主演と演出に挑戦」と聞いて「あぁ、彼なら出来るだろう」と納得する部分があったけど、今回「シャンドンもやる」と聞いた時は正直驚きもあったし、ちょっと心配もしました。

――心配とは?

前回の優は「演出のことを考えて、同時に自分の芝居の稽古もやらなくてはいけない」と、とにかくやることが多すぎて、食事の時間もままならない状態だったんです。とりあえずご飯だけでもとらないと体がもたないですから、自分のお弁当を作るついでに彼の分も作って稽古場の彼の机の上にそっと置いたりしてました。

それが今回は、もう1役増える……再演とはいえほとんど新メンバーですし、キャストひとりひとりと向き合いながらその人のことを理解して演出を付けていかなければいけないという状況は、彼にかかる負担が大きすぎるだろうと心配だったんですよね。僕も支えられるところは支えていきたいし、彼の負担を少しでも軽くできるようにサポートしたいなと思っています。

――そのサポートのひとつがお弁当の差し入れ?

お弁当もそうだし、ただ話を聞くだけでもいいし。演出家の隣には常に演出助手がいてサポートしてくれますけど、それ以外の部分で“はけ口”を作っておかないとね(笑)。彼のことを一番分かっているからこそ隣で静かに支える存在でありたいと思っています。

――ちなみに手作りのお弁当で、城田さんに好評だったメニューはありますか?

ん~、何だろう? 単純にオムライスを作ってポンと詰めたものだったり、時間がない時はおにぎりだったり本当に簡単なものだったけど、ハンバーグや手作りのチャーシューは喜んでくれましたね。まだまだコロナに注意して感染予防を徹底しないといけない状況ではありますが、プロデューサーが「差し入れOK」とおっしゃっていたので、様子を見ながらお弁当を差し入れたいですね(笑)。

――ぜひ元気が出そうなメニューを作ってあげてください(笑)。では最後に、公演を楽しみにしている皆様にメッセージをお願いします。

『ファントム』という作品は、ちょっとダークな悲しい物語ではありますが、決してバッドエンドではない、家族の愛がテーマの物語です。もちろんそこには憎しみの感情もありますが、それを乗り越えた愛……クリスティーヌの持つ母性など、心がホッと温かくなるシーンもたくさんあります。芝居にグッと寄ったミュージカル『ファントム』というものを、初演ともまた違う新鮮さで観ていただけると思うので、期待して劇場にお越しください。

取材・文:近藤明子
Photo:梁瀬玉実
ヘアメイク:江夏智也
スタイリスト:立山功

ジャケット¥ 74,800、パンツ¥35,200-(ANEI / JOYEUX tel 03-4361-4464)、ベスト¥49,500-、シャツ¥47,300-(The Viridi-anne /The Viridi-anne tel 03-5447-2100)、その他スタイリスト私物

インタビュー前編はこちら

公演概要

ミュージカル『ファントム』

【大阪公演】
2023年7月22日(土)〜8月6日(日)/梅田芸術劇場メインホール

【東京公演】
2023年8月14日(月)〜9月10日(日)/東京国際フォーラム ホール C

脚本:アーサー・コピット
作詞・作曲:モーリー・イェストン
原作:ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」より
演出:城田 優

出演:
ファントム(エリック):加藤和樹/城田 優(Wキャスト)
クリスティーヌ・ダーエ:真彩希帆/sara(Wキャスト)
フィリップ・シャンドン伯爵:大野拓朗/城田 優(Wキャスト)
カルロッタ:石田ニコル/皆本麻帆(Wキャスト)
アラン・ショレ:加治将樹
ジャン・クロード:中村 翼
文化大臣:加藤 将
ルドゥ警部:西郷 豊
ゲラール・キャリエール:岡田浩暉

荒田至法 池谷祐子 伊宮理恵 岡 施孜 上條 駿 川口大地 川島大典 木村朱李 木村つかさ 關さや香 玉山珠里 照井裕隆 遠山さやか 轟 晃遙 蛭薙ありさ 増山航平 松島 蘭 幹てつや 横関咲栄(五十音順)
少年エリック:井伊 巧/野林万稔/星 駿成(トリプルキャスト)

公式サイト https://www.umegei.com/phantom2023/
公式Twitter https://twitter.com/Phantom_JP2023

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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