後藤 大×笹森裕貴インタビュー 特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-呪いの解法-「気合を入れてやると決めたからには、前作を超えたい」（後編）
神永 学氏による大人気小説『心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数』（講談社刊）を原作とした、特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-呪いの解法-が、2024年2月より上演されます。
今作は2023年3月に上演された特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」シリーズの第2弾。神永氏による「心霊探偵八雲」の主人公、赤い左眼で死者の魂を見ることができる斉藤八雲と、同氏の「確率捜査官 御子柴岳人」シリーズの主人公、イケメンだが毒舌で自由奔放な数学者で大学准教授の御子柴岳人が、霊視×数学の最強バディを組み、新たな事件解決に挑みます。
今回、THEATER GIRLが取材を行ったのは、前作より続投される後藤 大さん（斉藤八雲役）と、笹森裕貴さん（御子柴岳人役）。後編では、自身が演じる役のイメージや自分との共通点、共演を経てのリアルタイムなお互いの印象など、盛りだくさんの内容となりました。お二人の空気感も合わせてお楽しみください。
“変わり者”たちによる“変わり者”役「演じる上では、あまり気負いがなかった」
――ご自身の役柄のイメージについて、もう少し伺わせてください。八雲も御子柴も一般的に見てかなりの変わり者だと思われますが、後藤さんにとっての八雲像、笹森さんにとっての御子柴像はどのようなものでしょうか？
後藤：八雲は、母親とのことがあったり、これまで経験してきたことで心に傷があったりして、他人と距離をとっているんですけど。人間っていろんな人がいるし、いろいろあるじゃないですか。でも結局は人間として生きていかないといけないし、だったら楽しんだほうがいいよなって、自分もいろいろ考えたりして。八雲って、それこそ御子柴のことはうっとうしいなと思ってるけど、それと同じくらい面白いとも感じていると思うんです。そう思えるのはすごく人間らしいし、魅力的だし。八雲の人との関わり方を、彼を演じることを通して知って、内側ではすごく愛を求めている人なのかなって思いました。
――八雲は一見すると人嫌いのようにも思えますけど、人間への興味がかなり強いですもんね。
後藤：そうなんですよね。
笹森：自分の場合は、“変わり者”っていうのがやっぱりキーワードだなと思っていて。（劇中歌の）歌詞にも入っていたくらい、二人とも“変わり者”の部類に入るんですけど。僕は自分の演じていた御子柴のことを、とりわけ変な人だなぁと思ってるんですよね。（観る人からも）変な人だと受け止められたほうが、作品も面白くなるし、役の魅力もぐっと深まるなっていう確信があったので。でも、そのまま単純に“変な人”を演じようとすると、すごくサムくなっちゃうなという思いもあって。でもそういう僕も多分、変なんですよ。
後藤：ははは！ 変ですよ、いい意味でね（笑）。
笹森：アナタも変なんですよ！（笑）
後藤：いい”変”なんです。
笹森：そうそう。いい”変”を持っているからこそ、そこまで演じようとしなくてもいいかなと、正直思っていて。そんなにオーバーにやらなくても、楽しくなったことを体現するだけでいいんじゃないかって。どういう歩き方をして、どういう仕草、どういう目線の動かし方をするのか。話す時には、相手のどこを見てしゃべるのか。そういうのを、実のところ役としてそんなに作り込んだわけではないんですよね。っていうのを思い返した時に「あぁそうか、俺も変なんだろうな」と思って。
後藤：しかもそれをすごく楽しそうに演じてるから。なんかラクそうだなって、見ていて感じました。
笹森：身体が軽かったです。
後藤：僕も同じですね。本当に。
笹森：そんなに気張ってなかったもんね。もちろんやらないといけないことは多かったけど、役を演じる上では、あまり気負いはなかった。
後藤：そうそう。
笹森：稽古の途中から、二人ともそれを掴んできた感じがあったんですよね。八雲も御子柴も、クールキャラっぽいじゃないですか。八雲はその通りだと思うんですけど、本読みくらいの段階で、自分はそのクールさを出そうとしすぎていて。香さんに「もっと（感情を）出していいよ」「御子柴はそんなにクールじゃない」って言われたんです。確かにそうかもしれないって、もう一度読み直してみたら「本当じゃん、この人おかしいわ」と思って。そこからは何も出し惜しみすることなく、全部出しました（笑）。
――笹森さんの御子柴を見ていて、いい意味で「こいつヤバイな」と感じました（笑）。
笹森：嬉しいですね。それが一番の褒め言葉です。
後藤：笑いを堪えるの、本当に大変なんですよ。八雲、笑えないから！（笑） 後半になってくると、いろいろなシーンで遊びを入れてきていたんですけど、「ふふっ」ってなってしまうとそこでスイッチが入っちゃうので、堪えるのに苦労しました。御子柴だけじゃなくて、刑事まで揃ってみんなで笑わせてくるし……。
笹森：本当に面白かったなぁ。大くん、よく笑わなかったなって思いました（笑）。
後藤：すごく頑張ってましたもん。八雲に入り込んで。
――それで言うと、永田さん演じる矢口もハイレベルな面白さでした。
後藤・笹森：（異口同音で）いやマジであいつが一番変わってます！
笹森：永田聖一朗、よく分かんない！（笑）
後藤：分かんないよね、マジで（笑）。
笹森：「そこでそんなに声張り上げる？」って思ったりしたけど、矢口って御子柴に憧れているわけだから、それもアリなんだろうなって。香さんもゲラゲラ笑ってたし。みんなちゃんと、いろいろトライしてたよね。
後藤：トライしてましたねぇ。
役との共通点は「人に興味があるところ」「ひとつのものを信じられるところ」
――役とご自分の共通点についてもお伺いしようかと思っていたんですが、先ほど仰っていたように“変わっているところ”になるのでしょうか？
笹森：そうですね。そこじゃないですか？
後藤：うーん。でも本人たち、自分が変わってるって思ってないからなぁ。もう、これが自分だし。それこそ逆に、僕は周りがおかしいんじゃないかなって思うようなことが多かったりするし（笑）。
笹森：あぁ、そうかもしれない（笑）。
後藤：もちろん、ネガティブな意味じゃないですけど。人の感性って面白いなぁって思いますね。そういう、人に興味があるところは多分、八雲と同じかなって。
――笹森さんはいかがでしょう？
笹森：僕も結構、あるひとつのものを信じたい人で。御子柴も確率というか、数字に当てはめて全て計算しますよね。そうやってひとつのものを信じられる人って強いと思うし、自分自身もそうなりたいと思って生きてきたので。どこかで何かひとつ、自分を信用できる部分を持っている。僕の場合は自分の中にそれはありましたけど、そういうところじゃないかなと思います。
似た者同士の二人が語る、お互いの印象とは
――前作での共演を経てのお互いの印象を、改めて聞かせてください。
後藤：なんというか、僕は（裕貴くんに）選ばれた人なんだなぁっていうのをしみじみ思いますね。というのも、人間って思考だったり、見た目だったり、友達だったりと、ひとつひとつの選択を重ねた上でここに辿り着いてるわけじゃないですか。だからきっとこの作品をやるっていう選択も、周りからの影響もあるとは思うけど、結局は自分で選んでここにいるんですよね。その選択にまつわる意志みたいなものが、裕貴くんはすごく強いなって思います。強く“ここにいる”。
笹森：深っ！ そして嬉しい。
後藤：そういう意志が強いところや、負けず嫌いなところが自分と似てるなって思うし。なんか……僕もどちらかというと線が細くて、首が長かったりと女性っぽい部分も持っているんですけど、多分裕貴くんもそうだと思っていて。それでもやっぱり、より男らしくいたいっていう気持ちが僕は強くて、裕貴くんもとても男らしいので……。うーん、うまく表現できないな……。アートです。
――アート！
笹森：あははは！ 深いです！
後藤：アートですね、うん。彼はここにいるんだ、っていう（笑）。
笹森：大くんは、今の言葉選びもそうだけど、普通の人じゃ思い浮かばないようなことを言うじゃないですか。“ここにいる”とか。それがマジで意味分かんなくて。
後藤：あははは！
笹森：なんか、めっちゃ面白いんですよね。前作からずっと思ってたことなんですけど。僕としても、ちょっと自分に似てるんだろうなと思っているところもあるし。その反面で、自分が全く持ってないものをたくさん持っていて。だから、最初からすごく興味が湧いたし。
後藤：うん、お互いさまですねぇ。
笹森：人の言動の理由って、わざわざ本人に「なんで？」って聞かなくても、少し考えてみたら何となく分かることってあると思うんですけど。大くんに関しては、掘っても掘ってもどんどん出てくるから、分からなすぎるし、それもまた面白いし。大くんの思考や感覚が彼のアートにも表れているんでしょうけど、本当に唯一無二で。人間として、役者として、アーティストとして、最高なものを持ってるなと思います。でもそれは神様から授かったものじゃなく、さっき大くん自身も言っていたように、選択を重ねて掴み取ったものだから。この人はすごい、って思いますね（笑）。これからもどんどん、まだ知らない部分を知っていきたいです。何しろ引き出しが多い！
後藤：それはこっちのセリフですよ。でもたまに、自分で自分がよく分からなくなることがあって。
笹森：それも才能ですよ！ そんなこと普通は思わないもん（笑）。
後藤：そうかなぁ。だから、それこそ御子柴みたいな、芯がひとつある人を僕はすごいなぁって思うし、魅力的だなと感じますね。きっと八雲もそうなんじゃないかな。過去のできごとから、八雲は母親を信じられなくなっているんですけど、人生において親という軸はすごく強いじゃないですか。そこがブレるっていうのは、きっと生きる上で大変なことだと思うから。それで八雲も、芯がある人の強さや魅力に惹かれてるのかなって。
笹森：すごいな。自分自身に役を投影して考えられるって一番いいと思う。
後藤：うーん。でも楽しいっすよねぇ、この作品の役作り。大変だけど（笑）。
笹森：確かに。暗記パン欲しい。
（一同：大笑）
笹森：とりあえず、暗記はもう先に全部しちゃいたいよね。だから早く台本が欲しい（笑）。
後藤：本当に！ さっさと入れたい！（笑）
不思議体験は妄想力の賜物？ 後藤式イマジネーションの保ち方
――では作品にちなんだ質問も伺わせてください。八雲の赤い目には幽霊の姿が見えるという特殊能力がありますが、これまでに不思議な体験をしたことがあったら聞かせていただきたいです。
後藤：不思議な体験はたくさんしてきたんです。でも僕、子どもの頃から妄想力が激しいんですよ。
――なるほど？
後藤：大人になってくると、当たり前の常識やお金についての知識だったりもきちんと知らないといけないから、そうなるにつれて発想力が右肩下がりになるわけで。それを今はもう、（常識や思考のしがらみを）くわーっと剥がしながら社会に中指を立てて、抗っているところです。
あはは。あとは瞑想なんかをして、自分の発想力を膨らませたりというのはよくしてます。裕貴くんは何かありますか？
笹森：僕は、UFO見たいなぁって。
――“見たい”と仰いますと、それは願望ですか？（笑）
笹森：はい（笑）。まだ見たことはないんですけど、宇宙人に会いたいなって思ってます。
役作りや創作物には「こだわれるだけこだわりたい」
――お次は、先ほどもあった通り、八雲も御子柴もかなりこだわりの強い人物ですが、お二人が「どうしてもここはこだわりたい」というものごとはありますか？
後藤：役作りや、自分の作っているものに対しては、時間というものを言い訳にせずに、頭のてっぺんから爪先まで、こだわれるだけこだわりたいというのは常に思っています。
笹森：全くそれに尽きます。役者をやると決めた時から、自分の何かをどんなに犠牲にしても作品を作り上げないといけないと決意していましたし、そうするのが僕は好きなので。時間をかけてでも、誰にも負けないくらいのクオリティにして世に出す。それが僕のプライドです。
――最後になりますが、本作を楽しみにしている読者の方へメッセージをお願いします。
後藤：いろいろな舞台作品がありますし、見たことがないものを見せたいというのもいいと思うんですが。この作品を通して「あぁ！ 舞台っていいなぁ！」っていうナマの圧みたいな感動を、一番後ろの席のお客さんまでちゃんと届けられたらなと思っています。こだわるところはしっかりこだわって、みんなで手を繋いで無事に千秋楽まで駆け抜けることができたら、それに尽きます。ぜひ楽しみにしていてください！
笹森：第二弾ということで、前作を観てくださった方も今作が初めての方も、演出家、共演キャスト、そして僕らと、面白くなる条件が揃いに揃っていますから絶対面白いです！あと何かあるとすれば、僕ら二人がどれぐらいやれるかっていう部分だと思いますが、やりますんで！
後藤：やりますんで！
笹森：観に来てください！ そして肌で感じて欲しいです。
取材・文：古原孝子
Photo：野田涼
公演概要
特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-呪いの解法-
【期間・劇場】2024年2月21日（水）～3月3日（日） 品川プリンスホテル クラブeX
【原作】神永 学 「心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数」（講談社刊）
【脚本・演出】三浦 香
【作詞】堤 泰之 三浦 香
【音楽】KYOHEI
【振付】IYO-P
【CAST】
斉藤八雲 役 後藤 大
御子柴岳人 役 笹森裕貴
矢口 役 永田聖一朗
水川 役 齋藤かなこ
白井 解 役 土屋直武
松永弦太 役 前田隆太朗
川端上也 役 広井雄士
前山田アンカ役 髙橋美海
横澤健一 役 小黒直樹
矢口更紗 役 髙橋果鈴
塩谷冨美香 役 橘 二葉
縦川雅巳 役 福島海太
右手川雷人 役 吉澤 翼
左近字宗介 役 長塚拓海
七目 役 鎌苅健太
前山田⼀歩 役 田中涼星
御子柴岳彦 役 佐野大樹（友情出演）
【一般発売日】2024年1月中旬予定
【チケット料金】全席（１階席・２階席）：10,800円（全席指定／税込）
【協賛】ローチケ
【協力】一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
【主催】歌劇「心霊探偵八雲」製作委員会
【公演に関するお問合せ】
ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/about/contact1.php
【公式サイト】https://yakumo-stage.jp
【公式X（旧Twitter）】@stage_yakumo
Ⓒ神永 学・講談社／歌劇「心霊探偵八雲」製作委員会
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