珠城りょうインタビュー ミュージカル『20世紀号に乗って』「リリー役に選んでいただいた理由を、自分でも見出していけたら」（後編）
2024年3月12日(火)から、東京・東急シアターオーブにて、ミュージカル『20世紀号に乗って』が開幕します。
本作は、ブロードウェイ・ミュージカルの金字塔ともいえるコメディ作品。演出・振付を務めるのは、ダンサーとしてキャリアをスタートさせ、現在は振付家・演出家として舞台・TV・ファッション・映画の各分野で活躍するクリス・ベイリー氏。主演でオスカー・ジャフィを演じるのは、NEWSとしての音楽活動をはじめ、舞台・ドラマ・バラエティ番組への出演と幅広く活躍する増田貴久さんです。2020年、2021年に大好評を博したミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』で確かな信頼関係を築いた二人が、新たに本作にどう挑んでいくのか期待が高まります。
共演は、リリー・ガーランド役に珠城りょうさん、オリバー・ウェッブ役に小野田龍之介さん、オーエン・オマリー役に上川一哉さん、ブルース・グラニット役に渡辺大輔さん、レティシア・プリムローズ役に戸田恵子さんなど、実力派キャストが大集結しました。
今回THEATER GIRLは、ヒロインを演じる珠城りょうさんにインタビュー。後編では、楽曲へのアプローチや現場でのあり方を中心に、珠城さん自身が人と接するときに大事にしていることについてもうかがってきました。
初めてトライする音域、寝ても覚めても楽曲のことをずっと考えていた
――前編で歌の苦労についてお話しいただきましたが、現時点で感じる楽曲に対しての難しさや大事にしたいポイントはどんなところでしょうか？
今回初めてヒロインという立ち位置で出演することもあって、今まで使ってきた音域よりかなり高いんです。発声練習で使ったことはあっても、これまで歌として披露してきたことが一切ないので、歌へのアプローチのし方から大改造しなくてはいけない感覚でした。
もちろんこの約2年半ボイストレーニングで喉を鍛えて準備はしていたのですが、実際に歌うとなるとやっぱり難しくて。朝起きて音取りして歌って、稽古に行って帰ってきて復習して、お風呂に浸かりながら歌って、寝るときもメロディーが頭に流れているぐらい……。本当に寝ても覚めてもずっと楽曲のことを考えていた気がします。
いろんな方に教えていただいたことを、これはどういうことなのか。一つ一つ自分の中に落とし込むのに時間を使いました。やっと今その成果が少しずつ出始めてきて、「自分ってこんな声が出るんだ」「こういう表現の仕方があるんだ」とか、今まで知らなかったことにたくさん気づけるのが嬉しくて。
まだやらなければいけないことはたくさんありますが、今の段階でも得るものが多く、この作品に挑戦してよかったなと心から思います。
会話のキャッチボールを大事に、ドタバタコメディ感を出せたら
――今回ヒロインを務められるということで、舞台に対して取り組み方が変わったところはありますか？
周りの方とのコミュニケーションの取り方は、特に変化していないです。ただ、今回主演の方がいらして、自分が相手役を務めることもあって、やっぱり主演の方が気持ちよく稽古に臨めるようにしたいなと思っています。
私は本当に不器用なので途中まで自分のことでいっぱいいっぱいでしたが、カンパニーのみなさんがプロフェッショナルな方たちばかりなので、周りにいる皆さんに助けていただきながら楽しく現場にいさせてもらっている感覚です。
――ドタバタコメディということもあって、カンパニーの皆さんのわちゃわちゃした雰囲気も大事になってきますよね。
そうですね。みなさん一回一回の空気感を楽しみながら表現なさる方たちなので、稽古していて本当に楽しいです。
会話のボールをどんなものでもみなさん受け取ってくださるので、そのわちゃわちゃ感といいますか、ファミリー感みたいな雰囲気はすでに出ているのではないかなと思います。
思わず「怖っ！」となってしまうほど……。珠城さんの“偶然”とは？
――ここからは作品にちなんだ質問をさせてください。偶然を装ってリリーに出会うため、オスカーは『特急20世紀号』に乗り込みます。今までにあった「偶然」の出来事として、珠城さんが思い当たることはありますか？
わぁ、この質問意外と難しいです……！ 実は今まであまり偶然を感じたことがなくて。
でも仲の良い友人と話をしているときに、自分が言おうと思っていたワードがその友人から出てくることはけっこうあるかも。たとえば「今日◯◯を食べたよ」という話をしようと思ったら、その友人が「最近◯◯を食べたいと思っていて」と先に話し始めることがあって。
――それは特定のご友人の方ですか？
そうです。ただ偶然ばったりどこかで誰かと出会うとか、そういうのは意外とないんです。あ、でも……いや、それもその友人だった（笑）。ホームで見かけて私が声をかけたことあります、その友人に。
――ご縁がある方なのかもしれませんね。考えているテーマや興味があることも似ていたり……？
好きなものは似ていますね。韓国ドラマやK-POPの話でよく盛り上がります（笑）。
――最近、共通のトピックは何かありましたか？
あ、オムライスです！ たとえば「今日ご飯食べに行こう！ 何食べたい？」と聞いたときに、なんとなく「オムライスって言いそうだな」と思っていたら、その友人が本当に「オムライス！」と言ってきたり（笑）。
私が「前日の夜にオムライスを作って食べたよ」と言ったら、その友人も「今日お昼オムライス食べたよ」とか……。
――まるでシンパシーのような。すごいですね。
「私もこないだそれ食べた！」「それこの前見た！」と言われると、思わず「怖い！」ってなります（笑）。先にその友人が話したことが、「え！ 今その話しようと思っていたのに、なんで知ってるの？」みたいなことが本当によくあって。その友人とは、そういう偶然がありますね。
「誰に対しても真摯に向き合う」そこに見返りを求めないのも“珠城さんらしさ”
――珠城さんに対して、何事も真摯に取り組まれている印象をもつ読者の方も多いと思います。まさに今回の取材の様子からも、一人一人ときちんと向き合いながら、全ての所作を丁寧にされる方だなと個人的に感じました。珠城さん自身は「こういう人でありたい」と心がけている信念などあるのでしょうか？
いや、そんなそんな……。でも誰に対しても真摯に向き合いたいという気持ちは常にあります。初めて会う人に対して、人から聞いたことや噂ではなく、自分の目と心で判断したいといいますか。人と関わるとき、それは意識しているかもしれません。
もちろん誠実に向き合っているからといって、それが100%返ってくるとは限らないじゃないですか。けれど見返りを求めなくても、少しでも歩み寄れてそれで仕事が楽しくできたり人間関係がスムーズに進んでいったりするのであれば、それに越したことはないと思うんです。自分のことも知ってもらえたらより嬉しいですけどね。
今回、戸田恵子さんとご一緒していて、本当にキラキラして素敵な方だなと感じて。明るくて前向きなエネルギーを常に持ってきてくださるので、自分もそんなふうにいつまでもエネルギッシュでパワフルに歩んでいけたらいいなと思います。
――思わずこちらが元気になっちゃう、そんなオーラがあるんですね。
そうなんですよ。パワフルで、チャーミング。戸田さんを見ていると自然と元気になれちゃうんです。
――ちなみに、珠城さんが今おっしゃっていた「自分の目で見たことを大事にしたい」という考えは、具体的にいつ頃からあったのでしょうか？
はっきりといつ頃か意識したことはないのですが、絶えずいろんな人と関わる仕事をしてきた中で、やっぱり人によって価値観は違うことに気づいて。今まで35年間生きてきて、人それぞれ見方や評価、言葉の受け取り方が違うのは、普通にあることだなと実感してきました。
それなら噂は話半分で聞いておく。その人と会ったときにどう思うか、その後どういうふうに関係性を深めていくかは、私自身が決めていけばいいことだと思ったんです。
自分も器用に生きれる人間ではないですけれど、世の中っていろんな人がいて、器用そうに見えて実は心配性だったり……そういう人もいるじゃないですか。人間観察していると、よくわかるんですよ。だったら私も自分の心に嘘はつきたくないなと思っていて。
特に舞台の稽古や一緒にお芝居をするとよくわかるので、「この人はどういう人なんだろう？」と、ついつい観察してしまいます。
でも、後輩からはちょっと不評だったんです。何か感じた時につい私が「最近何かあった？ 大丈夫？」と聞いちゃうので、「なんでわかるんですか！ 全部見透かされている気がする！」と嫌がられていましたね（笑）。
けれど、それで品定めしているわけではなくて、初めて出会った人もその人がそこに至った背景や経緯をつい知りたくなっちゃうというか、人に興味があるだけなんですよ。いつもそんなふうにして過ごしています。
取材・文：矢内あや
Photo：野田涼
ヘアメイク／河上智美(Rouxda.)
スタイリスト／長谷川めぐみ
【衣装】
ワンピース￥271,700（ファビアナフィリッピ／アオイ℡03-3239-0341）
イヤリング￥9,000
ネックレス￥38,500（ともにジェンマ アルス℡03-6438-0178）
パンプス￥23,100（リミット ティル トゥエンティスリー フィフティナイン／TOKEN℡03-3840-2505）
その他＜スタイリスト私物＞
公演概要
ミュージカル『20世紀号に乗って』
【東京公演】
公演期間：2024年3月12日(火)～31日(日)
会場：東急シアターオーブ
【大阪公演】
公演期間：2024年4月5日(金)～10日(水)
会場：オリックス劇場
脚本・作詞：アドルフ・グリーン／ベティ・カムデン
作曲：サイ・コールマン
原作：ベン・ヘクト／チャールズ・マッカーサー／ブルース・ミルホランド
演出・振付：クリス・ベイリー
演出補・共同振付：ベス・クランドール
出演：
増田貴久 珠城りょう 小野田龍之介 上川一哉 渡辺大輔 戸田恵子
可知寛子 斎藤准一郎 武藤寛 横沢健司
植村理乃 小島亜莉沙 坂元宏旬 咲良 篠本りの 田川景一 田口恵那 東間一貴 長澤仙明
MAOTO 増山航平 吉田萌美 米島史子 玲実くれあ
製作：東京グローブ座 フジテレビジョン シーエイティプロデュース
公式サイト ：https://musical-onthe20th.jp
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