岸本勇太インタビュー「スキルや感覚をフルに使った、鮮明な表現をしたい」(前編)
――原作ファンにとっても楽しみな舞台になりそうですね。カンパニーの雰囲気はいかがですか?
作品としては重い内容ですし、終始不穏な雰囲気なんですけど、現場は全然。鳥越(裕貴)さん(中島 敦役)を筆頭に、けっこう和気あいあいとした感じです。で、稽古が始まると、パキッとした緊張感のある空気になるんですよ。
中屋敷さんの演出も、シーンに必要な立ち位置の指示なんかはあるんですけど、わりと役者陣に任せてくださる印象です。その分、それぞれのスキルや感覚をフルに使って、鮮明に表現しなければと思いながらやってますね。締まった空気感の中、楽しむところは楽しみながら稽古してます。
――共演者の方々はほぼ初めましてだったかと思うんですが、もうかなり打ち解けられたのでしょうか。
そうですね。大先輩揃いの中でみなさん仲良く話しかけたりしてくださって。今はこの(コロナ禍の)状況なので、終わった後にご飯に行ったりっていうコミュニケーションは難しいですけど。稽古場では楽しく過ごせています。
それから、(文ステ演出家の)中屋敷さんが僕らキャスト陣にかけてくれたのが「この7人は本当に厳選された7人だから」という言葉で。「僕は7人のうちの誰がひとりで舞台に立っていても見せられるし、キャラクターとしての存在意義、存在感は(日本青年館ホールで上演しても)全く問題ない」と言ってくださったんです。それも、まだ稽古が始まってそんなに日が経っていない時だったので、そんな段階からこんなに評価してもらえるのはすごく嬉しいですし、それに驕ることなく、もっともっと突き詰めて残りの稽古にも臨みたいと感じました。
――そんな言葉をもらったら、期待に応えるどころか、上回りたくなってしまいますよね。
キャストのみなさんもそれぞれ本当にすごいので、これからどうなっちゃうのかなと思ってます。稽古2日目でみんなもう台本を覚えて手放していて、僕もそうではあったんですけど、みなさんの見えている世界がすごすぎて。で、3日目、4日目には、アクションこそまだ付いていませんでしたけど、アタマから全シーン通し稽古をしたんですよね。そうして全体像が見えていての中屋敷さんの言葉でした。もちろんまだまだできることはあるので、もっと追求していきたいと思います。