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浜中文一インタビュー『ブラック・コメディ』「応援してもらえるような愛されるクズを演じたい」(前編)

INTERVIEW

2024年8月17日(土)よりIMM THEATERにて『ブラック・コメディ』が上演されます。

本作は、英国の著名な劇作家で『アマデウス』や『フォロー・ミー』など映画化された作品も秀逸なピーター・シェーファーによって生み出された戯曲。ピーター・シェーファーは劇中、室内の電灯がついている設定のときは舞台上を暗く、停電の設定のときは舞台上を明るくするという、明暗が逆転したユニークな手法で表現することで、停電中のパニックを視覚的に際立たせるとともに、登場人物たちの隠された本音や嘘を表出させることに見事に成功しました。

この戯曲に上演台本・演出として挑むのはヨーロッパ企画の大歳倫弘さん。主人公の若手彫刻家ブリンズリーを演じるのは浜中文一さん。婚約者キャロルには市川美織さん、ブリンズリーの元彼女クレアには三倉佳奈さん。ブリンズリーの隣人で東洋古美術商人のハロルドには山口森広さん。アパートの上階に住む女性ミス・ファーニヴァルには朝海ひかるさん。キャロルの父親で厳格な性格のメルケット大佐には渡辺いっけいさんと、実力派キャストが揃い踏み。

THEATER GIRLは、主人公のブリンズリーを演じる浜中文一さんにインタビュー。前編では、演じるキャラクターについて、“明暗が逆転する”という独特な演出の見どころについてお話しいただきました。

インタビュー後編はこちら

ブラックジョークのような人生を歩んできた

――まずはオファーがきた時の思いを教えてください。

ちょうど車で移動中だったのを覚えています。僕はブラックジョークのような人生を歩んできたので、これはやるしかないなと思いました(笑)。めちゃめちゃハッピーな作品より、ちょっと暗い感じの方が僕の性格上合っているので。

――今回は主人公のブリンズリーを演じられますが、どのように役へアプローチしていこうと思っていますか?

なんとなく役柄のイメージを作ってはいますが、僕は稽古に入って本読みをしてから、本腰を入れていくタイプなんです。なので、具体的に「こういう風にやろう」「ああいう風にやろう」みたいなことは、そこまで考えていないですね。ある程度その人物のことを掘り下げて、あとは皆さんと一緒に作っていく感じです。

――台本を読み、ブリンズリーに共感できる部分はありましたか?

必要な時に前もって“その物”を用意していなかったりするところは似ていますね。いざという時に備えておけばいいんですけど、「これがあったらいいのに」と気付いて「くやしい!」となるタイプなので、そこは一緒だなと思いました。

海外作品ならではの難しさ

――海外作品の場合、演じ方が変わったりすることもありますか?

アプローチの仕方はそんなに変わらないですね。ただ、海外の人の感覚で作られているので「これはどういう感覚なんだろう」と思うことはあります。日本人の感覚だと、実際は違っていたりもするので。一方で海外の感覚をそのままやると、日本では受け入れ難いこともあるので、そこのバランスが難しいですね。

――以前出演したミュージカル「ダブル・トラブル」の際はいかがでしたか?

僕は「ダブル・トラブル」の初演には出ていなくて、再演からの参加だったんです。色々とアイデアが出て原作から変わっていた部分もあったそうですが、その現場にリアルタイムでいたわけではないので。初演のときは多少日本向けというか、日本人が見て笑える内容を入れていたみたいです。

演じている本人も気付けないこともあって。宗教的な話と絡んでいたり、その国の常識と繋がっていると日本人にとってはどうしてもわかりにくいですよね。どこまで残すかは難しい。僕も勉強はするんですけど、一瞬で忘れるので(笑)。今回も演出家の大歳さんに教えてもらいながらやりたいと思います。

――浜中さんを通して、より日本人にも分かりやすい作品に?

そうなると良いですね。向こうの方たちはきっと爆笑していたと思うので、日本でもそうなるように頑張りたいと思います。もし映像があれば観てみたいですね。実際の照明の感じも気になりますし、どんな舞台なのかわかると感覚も変わってくると思うので。

愛されるクズを演じたい

――まだお稽古に入っていないので想像するのが難しいと思うのですが(取材時)、本作の明暗が逆転するという設定にはどんな印象を持ちましたか?

今この明るい状態が舞台では真っ暗なわけですよね。逆に停電の設定の時は舞台が明るくなる。……ちょっと恥ずかしいかも(笑)。本来真っ暗な状態の姿って人に見られないけど、実際はお客さんに見られているというのが、普段見られない部分を見られているみたいな感覚で恥ずかしいですね。いつもよりそわそわするかもしれないです。

――台本を読んでいて、「ブリンズリーのこの部分をうまく表現したい」と感じることはありますか?

ブリンズリーは正直クズな人間で、でもどこか愛される部分があって頑張れと応援したくなる。なので、僕も応援してもらえるような愛されるクズを演じたいなと。観ている側もハラハラドキドキしてほしいので。実際だったらクズな人間を応援しないですから、台本を読んでいて1ミリでも頑張れと思ってもらえるように役作りできればと思います。

――浜中さんが演じるブリンズリー像が楽しみです。

結局ブリンズリーみたいな人が、世の中生き延びたりするんですよね。多分上手いことやるんですよ。だから物語の終わり方も、けっこう深く考えてしまいました。海外戯曲をやるときは、深く考えすぎてしまう部分があるのですが、お客さんも色々と想像しながら、楽しんでもらえたら嬉しいです。

トラブルも楽しみたい

――今回、渡辺いっけいさんとの共演も楽しみと語っていましたね。

舞台で共演するのは初めてなんです。舞台は役を作っていく過程が垣間見れるところがすごく楽しいので、いっけいさんの役を作っていく過程を見られるのが楽しみです。ビジュアル撮影の時に少しお会いできたのですが、「初めまして!」とご挨拶したら「初めましてじゃないでしょ」と、小ボケのジャブを打ってくるんです。稽古に入ってから、さらにいっけいさんとの距離を詰めていけたらと思います。

――改めて、本作の注目ポイントを教えてください。

やっぱり1番は明暗の逆転だと思います。その中で皆さんがどんな風に演じられるのか楽しみですね。まだイメージできない部分は多いんですけど、動きの面白さや会話の面白さを楽しんでもらえたらと思います。明暗の逆転を謳っていますから、良い意味で皆さんの期待を裏切れるように頑張りたいです。イメージ通りではなく、そのさらに上を感じてもらえるような中身にしていけたらと思います。

――浜中さんが舞台に立つ上でやりがいを感じるのは、どんな部分でしょうか?

それこそ舞台は色々なトラブルが起きるんですよね。その時が逆に楽しい。トラブル待ちをしている部分もあるというか(笑)。今回は物を動かすことも多いので、トラブルは楽しみつつ怪我だけはしないようにしたいなと。トラブルもお客さんと共有しながら楽しめたらと思っています。

取材・文・撮影:TATSUYA ITO
スタイリスト:渡辺奈央(Creative GUILD)

インタビュー後編はこちら

公演概要

『ブラック・コメディ』

原作: ピーター・シェーファー

上演台本・演出: 大歳倫弘(ヨーロッパ企画)

出演: 浜中文一 市川美織 三倉佳奈 山口森広/吉田ウーロン太 竹森千人/朝海ひかる 渡辺いっけい

【東京公演】
2024年8月17日(土)〜9月1日(日)
IMM THEATER

公式サイト: https://www.blackcomedy.jp/
X(旧Twitter): @blackcomedy2024

企画・製作: フジテレビジョン
主催: フジテレビジョン/サンライズプロモーション大阪

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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